萩原輝美 連載 vol.144|安定と野心の2016年秋冬パリコレクション
KOCHÉ/VALENTINO
安定と野心の2016年秋冬パリコレクション
ラグジュアリーブランドのデザイナー降板が続く中、ヴァレンティノが安定した力をみせつけてコレクションをリードしています。一方で80〜90年代のゲリラショーを思わせるコーシェの野心作も話題を呼びました。
Text by Terumi Hagiwara
リアルクチュール!80年代を思わせる若手パワー コーシェ
2016年秋冬パリコレクションです。ラグジュアリーブランドのデザイナー降板が続き、ディオール、ランバンはデザイナー不在、デザインチームでの発表となりました。そんな中、注目される新人デザイナーが登場して話題をさらいました。
コーシェは新人、クリステル・コーヘルがデザインするブランドです。先シーズン、レアール(若者の街)広場でスタンディングのコレクションを発表、今シーズンはサンドニ門に近いアーケードでショーを行いました。80年代にベルギーファッションが登場したときのゲリラショーのようですが、クチュールテクニックをふんだんに使ったこだわり服です。ベルベットのジャケットにはビーズやレース、ビニールも一つ一つ手でチクチクと縫いつけてあります。カラフルな羽根付コートの裏地はジャージーです。「着られるクチュール服」を目指すクリステルは「閉ざされていたコレクションを解放します。それがリアルクチュールです」と話します。
ラグジュアリーの王道をゆく ヴァレンティノ
ラグジュアリーブランドとして安定した力をみせつけているのがヴァレンティノ。今シーズンはバレリーナがイメージ。ピアノのライブにのせてモデルが静かに行き交います。レオタードの上にはシンプルなバイアスドレスを重ね、ミリタリーのロングコートに下から除くチュチュが繊細に揺れます。太いベルトのバッグを斜め掛けにし、マウンテンブーツをコーディネイト。静けさの中に躍動感を与えています。ニットに重ねるスパンコールドレス、チュチュドレスの上に重ねるファーボレロ、どれもリアルでラグジュアリーな作品です。ピンクベージュを重ねたドレスは吸い込まれそうな温かみのある女性の肌色です。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/