萩原輝美 連載 vol.135|ヴァレンティノの大実験
ヴァレンティノの大実験
こんなアフリカ見たことない!
ローマからアフリカにひとっ飛び。2016年春夏のヴァレンティノコレクションは“未開のアフリカ“をパリに移して、繊細で洗練されたドレスを並べました。
Text by Terumi Hagiwara
アフリカのイメージをクチュールの技で表現
7月、ヴァレンティノのオートクチュールコレクションはパリではなくローマでおこなわれました。ブランドのルーツであるローマの歴史、ブランドのインスピレーションのすべてを、ショーで見せようというわけです。つづく2016年のプレタポルテ春夏コレクションは、ローマを後にしてアフリカに向かいました。アフリカの野生的で民族的なイメージがクチュールの技で表現されています。
ブラウン、カーキ、ブラック、エボニーなど土色のトーンでまとめたシルクのパッチワークドレスは力強い直線でデザインされます。ネックレスやオーナメントモチーフが刺繍され、アクセサリーとしてドレスの首もとを飾ります。シンプルなドレスにモザイク柄の刺繍、ラフィアのフリンジなどプリミティブなディテールがほどこされています。マスクモチーフがさまざまなアイテムで登場。レザーとレースでマスクを描きスタッズでアクセントをつけたミニドレスは大胆でかつ繊細です。チョーカーやサンダルの甲のアクセントに、ブレスレットやバッグにもマスクモチーフが使われています。レザーを編み上げたドレスやスエードのフリンジを重ねたドレスなどボディに寄り添いながら繊細なカッティングで作られます。
アフリカをこんなにエレガントに表現したコレクションはあったでしょうか。
フィナーレのボディペインティングを思わせるヌードカラーに白の刺繍をほどこしたドレスは、その透明感と奥行きに圧倒されます。アーティスト、アレッサンドロ・ガッジオとコラボーレートしたホワイトテラコッタのハイジュエリーがアクセントです。アフリカの未開的魅力にアーティスティックな洗練がくわわったコレクションです。ハンドメイドな手法は、すべてがデジタル化され個性を失ってしまった現代人への危機感が込められているようです。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/