萩原輝美 連載 vol.134|ディオール 2016年春夏コレクション
ディオール 2016年春夏コレクション
カットワークで作る夢のドレス
細やかなディテールワークを重ねた揺れるドレス。ラフ・シモンズ(ディオール)が際立つ技を披露しました。ビスティエにキュロット、透けるドレスを合わせた変幻自在のコーディネイトが圧巻です。
Text by Terumi Hagiwara
過去から遠い未来を見渡す自由自在な女性像
2016年春夏パリコレクションです。ディオールはルーブル美術館の中庭に巨大な丘を設えました。入口には紫のデルフィニウムが色を変え、姿を変えて咲き乱れています。いつもの会場のようにきれいに形造られた庭園ではなく、自然に育つ花の山を舞台にしたのです。
ファーストルックは繊細なカットワークのヴィクトリアン調下着、白いコットンのビスチュエとキュロットです。ラフ・シモンズが追い続けているイノセントな世界に引き込まれていきます。その上にバージャケットを合わせる。胸元と裾からはカットワークのラインがシルエットを際立たせ、ペプラムがプリーツになってジャケットの裾にスウィングします。さらにボーダーのシルクパーカーを羽織る。内側にはプリーツ加工が施され、揺れる裾から優しい表情がのぞきます。シルクのカットワークドレスを重ねると、上下の透けるラインが複雑なグラフィックを描きます。
ローゲージシェットランドのミドリフニットはぽっくりした袖が強調され、繊細なドレスにボリュームを加えます。カットワークというミニマムな技法がエレガントなラインを作り出しています。それらのコーディネイトが変幻自在のコントラストを生み出しています。凄い!一番のお気に入りは、ビスチュエとキュロットにストライプのシルクオーガンジーのドレスを合わせたルックです。
テーマは「水平線」。過去から未来へ行き来する女性をイメージして、「極限まで簡略化し、たった一本の線に集結させたコレクション」とアーティスティック・ディレクターのラフ・シモンズさん。無限の時間と空間をさまよう異次元に遊んだ30分でした。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/