OVER THE TWELVE|2011年春夏コレクションリリース!
OVER THE TWELVE|オーバー ザ トゥエルブ
大人の遊び心をかたちにする、シニカルポップなアンダーウェア
「オーバー ザ トゥエルブ」2011年春夏コレクションリリース
デザインコンシャスなアンダーウェアを提案するブランドが急増するなか、7年も前からシーンに注目し、展開をつづけてきた「OVER THE TWELVE(オーバー ザ トゥエルブ)」。ユーモアのあるポップなデザインとは裏腹に、肌触りや履き心地にこだわったクオリティの高さから大人の男性を中心に確固たる支持を確立してきた本ブランドから、2011年春夏アイテムが届いた。そこでデザイナーである松永国人氏に新作について、そしてアンダーウェアシーンの変遷について聞いた。
Text by OPENERS
よく“見せパン”と言われるけど、これはあくまで自己満足なんです
──デザインコンセプトは?
もともとアメリカの古着やポップカルチャーが好きで、それが軸になっています。シニカルといいますか、下世話なんだけど下品になりすぎない、笑いとユーモア感を大事にしている、そんなアメリカンポップカルチャー特有のセンスが好きなんですよね。僕としてはベーシックなデザインにも“よく見ると……”というユーモアは入れていきたいと思っています。“OVER THE TWELVE”というのも、当時日本人の平均サイズが12cmだったことから、“それを超えていこうぜ!”という意味を込めてユーモアたっぷりにつけた名前です(笑)。こうしてOVER THE “TWELVE”というブランド名にならい、12型でブランドはスタートしました。型数はいまでも変わりません。レギンスなどがくわわってちょっと増えたりすることもありますが、基本的に毎シーズン12型リリースしています。
──2011年春夏シーズンコンセプトは?
今回は「ベーシックプラス」をテーマに、やわらかい印象に仕上げました。ボーダー、アニマル、チェックなど、ベーシックとされるパターンにデザインをプラスすることで遊びのある、新鮮な表情へと進化させています。こうしたベーシックパターンの見せ方って意外とありそうでないんですよね。
基本的にすべてシーズンアイテムになりますので、おなじデザインをつぎのシーズンも継続することはありません。そういった意味でも毎回絵のテイストは変えていくようにしています。ハンドタッチが多いシーズンのつぎはエアブラシを使ったり、メタリックなものにしてみたり。ずっとおなじだと飽きちゃうでしょう? 形にかんしてはなるべくベーシックで、履き心地のよいものを。試作品段階で必ず履いてみて、履き心地をチェックしています。季節によって素材も変えます。
たとえば細かい柄であれば写真みたいにパキっと写るつるつるとした素材を選ぶこともできますが、夏場はムレてしまうので秋冬シーズンに出す。夏はやはり綿がいいですね。プリントの定着率はポリエステルのほうが発色がいいし、洗濯を繰り返してもプリントをきれいに保てるけど、やはり履き心地のほうが重要です。今回パイル地のアイテムを作ったのですが、普通のパイル地は縦伸びはしますが横伸びはしない。だからわざわざ生地を別注で作っているんですよ。肌触りにもこだわっているので、ぜひ試してみてほしいですね。
OVER THE TWELVE|オーバー ザ トゥエルブ
大人の遊び心をかたちにする、シニカルポップなアンダーウェア
「オーバー ザ トゥエルブ」2011年春夏コレクションリリース
なかなか広がりのあるフィールドなんじゃないかなって
──人気の型は?
人気はバックポケットのついたタイプ。ここまで本格的にポケットがついているものはあまりないと思います。ポケットの形によっては特許もとりました。僕は夏場はパンツ一丁で家の中をうろうろしているのですが(笑)、うろうろしているとタバコとかちょっとしたものを入れられるポケットがほしくなった、というのがきっかけ。でもルームウェアとして考えたら当たり前のことなんですよね。普通はポケットはポケット布という別布をあてて作りますが、そうなるとゴワついてしまう。いまの形にいたるまでけっこう苦労しました。
また、いまはボクサータイプが主流ですが、個人的にはトランクスが好きでしつこく出しつづけています(笑)。僕もトランクス派ではありませんが、やわらかいベア天素材のトランクスというのが好きなんですよね。夏場とか、あたたかい季節には本当に気持ちがいい。カップがついているので履き心地はボクサーに近いです。これは裾からポロリをしないようにするシステムなので、トランクスに抵抗感のある方も安心して履けますよ。
レギンス自体ここ2年くらいで定着してきましたが、じつは最初のシーズンから出していたんですよ。まわりに売れないと言われつづけてきましたけど、絶対に流行ると信じて頑固にやりつづけてきました。ただ、僕としては今回のものはレギンスとはちょっと別物だと思っていて、これは下着の長いやつという解釈であって、アンダーウェアの上にでなく、アンダーウェアとして履くために作っています。本当のレギンスは編み立てた継ぎ目のないニットだと思っています。だからレギンスは冬場しか出しません。でもニットはチクチクするので、直接履くわけにはいかないから下にアンダーウェアをはく。そんなふうに勝手に仕分けしています。なので今回のものはパンツの裾から見せるのもありですが、そういうつもりで作っているわけではないんです。
──なぜアンダーウェアだったのですか?
Tシャツの感覚でできるんじゃないかなと思ったんです。アンダーウェアなら面積も小さいし、普段は隠れているものですから、“洋服だとどうかな?”という大胆な柄もありになる。とはいえ、ウェストゴムにもインクジェットのインクがのせられたり、ジャカード素材を使ったり、刺繍も使える。表現する場所ってじつは多くて、洋服よりも遊べる。なかなか広がりのあるフィールドなんじゃないかなって思ったんです。
OVER THE TWELVE|オーバー ザ トゥエルブ
大人の遊び心をかたちにする、シニカルポップなアンダーウェア
「オーバー ザ トゥエルブ」2011年春夏コレクションリリース
“高いだけのことはある”というこだわりをしっかり守っていかないと
今年で8年目になりますが、ブランドを立ち上げた当時のアンダーウェアシーンといえば、ぽっかり空いた市場だったんです。ちょうどインポートの無地物の流行が去ったあとで、セレクトショップからアンダーウェアが消えたころでした。僕はブランドを立ち上げる前からセレクトショップさんと仕事をさせてもらっていたので、そうした現状を肌で感じていたんです。ここまでアンダーウェアだけにフォーカスしたブランドって本当になかった。「オーバー ザ トゥエルブ」がスタートしたちょっとあとにシンクロして登場したブランドはいくつかありましたが、うちほどポップなアイテムを展開するブランドはなかったですね。
──いまはファッションコンシャスなアンダーウェアを出すブランドが増えているように感じます。
ピークは3年くらい前でしょうか。ブランドがスタートして3、4年したころが一番増えた気がしますね。アンダーウェアだけのブランドも増えましたし、ファッションブランドがアンダーウェアを出すことも増えました。それもこれも消費者の意識が変わったというのが理由のひとつでしょうね。こうしたシーンの動向は世界中でシンクロして起きていたんですよ。
ファッションとおなじようにアンダーウェアにも波があると思うんです。いまは完全な無地ではなく、ワンポイントやシンプルなデザインなものが主流で、あとは機能的なもの。うちはファッション性を優先しているのでそれ以外のこだわりの部分はイメージの邪魔をするから言わないようにしているんですけど、たとえばシェイプアップ効果のあるものや、生地に銀が混ざっている消臭効果のあるものが一時話題になりましたよね。いまはファッション性より機能性が重視されている──ようは謳い文句がないと売れない世の中なんだと思います。
あと、ビジュアルコンシャスなデザインで安いものもけっこう出てきています。ではなぜうちは高いのかというと、素人目にはわからない、似ているように見えるけど全然ちがうんだってことが僕らにはわかってしまうから。長いスパンで考えたらどっちのほうが得なんだろう、ってね。でも、ファストファッションブームが落ち着きはじめたいまのファッションシーンとおなじで、うちの半額くらいの値段でデザイン性の高いものはありますが、一回履いてちょっとちがうなって感じたひとはもどってくると思うんです。だから僕らは僕らで“高いだけのことはある”というこだわりをしっかり守っていかないと。
──ありがとうございました。