シャネル オートクチュール 2009春夏
CHANEL HAUTE COUTURE|シャネル オートクチュール 2009春夏
白い紙から広がる無限の造形美オウプナーズでは初となるオートクチュールのニュース。その栄えある第1回目はカール・ラガーフェルドによるシャネルである。コレクションができあがるまでのふだんは目にすることのない貴重なビジュアルを、ギャラリーのかたちでご覧いただこう。
“無垢なコレクション”
先日発表されたシャネルの2009春夏オートクチュール コレクションは、シャネルのみならず、オートクチュール界全体にとってもエポックとなるコレクションだった。
「現在のような苦難の時代において、このような真白いページに、わたしはますます、新しいなにかをかき立てられるのです」。カール・ラガーフェルドは今シーズンを“無垢なコレクション”と称している。それは、過去の溢れんばかりの“けばけばしさ”の終焉を告げるものでもあった。
だからといって味気ないスタイルに終始することなどシャネルではありえない。
ツイードやタフタ、オーガンザ、シルクサテンなどの伝統的な素材がもつ高潔さと、薄い紙の繊細な美しさを結合させること──カール・ラガーフェルドはこのコンセプトを自分への挑戦として課した。「紙は地球上でなによりも好きな素材。紙はドローイングの出発点であり、写真の最終地点。紙には、言葉にはできないけれどフィジカルななにかがあるのです」。
そして、クチュリエたちの仕事は、一見するとただピュアにみえる仕上がりのなかに、どれだけの贅を尽くすかに費やされることになった。
オートクチュールを支える、刺しゅうや金銀細工、羽根飾りといった、フランスの伝統的な“手”の仕事。それらクチュリエたちの貴重な伝統やノウハウを継承し、またその発展を支援するため、“Metier D'art(メティエダール)”の名のもと、シャネルは7社のアトリエを傘下に置いた。その英断は多くが称賛するところである。
今回のコレクションでは繊細なツイードやブレードを、紙のような質感で極めてシンプルに仕上げる必要があったため、彼らにとってはつねにもましてチャレンジングな作業となったが、もちろんそれらは高い次元で結実している。
オウプナーズではこの類稀なコレクションを、カール・ラガーフェルド自身のことばをひも解きながら、貴重なフィッティングシーンやモデルたちが笑いさざめくバックステージ、繊細な白いペーパーが滝のように会場を飾るランウェイのドレスたち、そしてそれらを支えるクチュリエの仕事というさまざまな側面から紹介する。