眼鏡デザイナー、アンヌ・バレンタインインタビュー(2)
「メガネの色、質感のすべてがメッセージです」
眼鏡デザイナー、アンヌ・バレンタインインタビュー(2)
1980年に南フランスの古都トゥールーズに眼鏡店を開き、84年には自店のコレクションをつくり始めたアンヌ・バレンタインさん。「自分たちが楽しむためには自分でつくるしかない」とはじめたコレクションは、つねに新しいメッセージを発している。彼女が語る、ブランドのフィロソフィーとは?
photo by Jamandfix
服や靴、バッグとおなじように、憧れるメガネにしたい
──1984年にコレクションをスタートさせて変わった部分はありますか
しあわせなことに、変わった点はあります。デザインは変わって、私自身も変わっています。でもフィロソフィーは変わってはいけないもの。フィロソフィーは変わっていませんから、もしメガネじゃなくて、時計やオブジェづくりと出会っていたらそれをしていたでしょう。でも私の興味はメガネと出会った。仕事にするなら徹底して考えます。
──アンヌさんにとっての「フィロソフィー」とは?
それは、メガネを身につけたらしあわせになって、楽しくなって、その人自身がよりよく見えるということ。
私のメガネをかけて、人生を謳歌することです。
つまり、その人らしさが表れる手伝いになることですね。
選ぶときに楽しい、身につけて生活して楽しい。
残念なことにほとんどの人はそうやってメガネを選んでいません。
憧れるメガネにしたいですね。
流行色が毎シーズン発表されることが不思議です
──アン・バレンタインといえば色ですが、インスピレーションはどこから得ますか
コレクションなどでファッションのトレンドカラーが発表されますが、ああいう流行色には耳をかしません。
人にはそれぞれにふさわしい色があって、毎年コレクションをつくり続ければ、「今度はこんなことをやってみようかしら」と思うものです。それが私のデザイナーとしてのアイデンティティです。私たちが求めているのは変えていく、進んでいくということだけですね。
──では、アンヌさんご自身の色の変化というのは……
世の中のごく自然な流れから生まれてきた色でさえも、カルチャーに影響されています。
色が変わっていくというのはとても素晴らしいこと。
私の場合なら、ふたつの色を組み合わせることで何か新しいインスピレーションが生まれることがとても新鮮です。
──独特のコンビネーションはかけてみたくなります
服がそうですよね。
素材を考えて組み合わせて、色も重ねて、その人らしさをつくっていきます。
メガネも色味や質感などのすべてがメッセージとなります。
色はバイブレーション、つまり心に響くものです。
自分自身が新しくあるために、自分でイメージを変えてみる
──では、アンヌさんからOPENERS読者へメッセージをお願いします
そうですね、メガネを選ぶレシピはありません。
もしあるとすれば、それは自分が絶対に試さないと思うものに興味をもって試すこと。
ほかの人がどう思うかではなく、自分のために自分のイメージを変えてみましょう。
アン・バレンタインのショップに「こういうメガネが欲しいんです」と来店して、最初に思ったものを買って店を出た人はいないと思いますよ(笑)。
自分自身をちがう目で見ることのできるチャンスがあります。
──ありがとうございました
Anne et Valentin(アンヌ・バレンタイン)
1992年にアラン氏と類いまれなデザイン力とカラーリング力を発するアンヌ夫人によってスタートしたブランド。
スタート当初からのデザインコンセプトは、かける人の個性と魅力を引出すこと。
そのため、アンヌ・バレンタインのデザインは、力強いフォルムとビビットなカラーリング、そして各素材の特性を活かした独特のコンビネーションと技術力が、人を笑顔にするほどに創造性を発揮し、いまでは世界じゅうにファンをもつ代表的な眼鏡ブランドとなっている。