MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエルのスーツ──磨かれて軽くなったフラノの魅力
FASHION / MEN
2015年3月6日

MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエルのスーツ──磨かれて軽くなったフラノの魅力

Margaret Howell|マーガレット・ハウエル
MARGARET HOWELL Set Up Collection Autumn Winter 2010

マーガレット・ハウエルのスーツ──磨かれて軽くなったフラノの魅力

私たち日本人が長く手本としてきた英国人のスーツの着こなし。年々ドレスコードはカジュアルになっているが、男が着こなすスーツに勝るドレスアイテムはない。マーガレット・ハウエルはインタビューのなかで「スーツに大切なものはふたつ。それは、いい素材といい製法です。私たちは有名なFOX BROTHERS 社のベストなフラノ生地を使い、カッティングに気を配っています。やわらかくて着てリラックスできるスーツを楽しんでください」と語る。リラックス・軽さという時代のムードのなかで磨かれて軽くなった素材の魅力を存分に満喫したい。

文=オウプナーズ写真=JAMANDFIX展示会写真=原恵美子

NEW ATTITUDE×NEW SET UP PART-1

森岡 弘が着て語る、マーガレット・ハウエルのスーツ

大人で、理知的で、ユーモアのあるバランスのいい男性たちのための服

東京で開催されたマーガレット・ハウエル秋冬コレクションの展示会場で、ファッションディレクターでスタイリストの森岡 弘氏に、自身が着るスーツのコーディネートを組んでいただいた。マーガレット・ハウエルの服について「着丈やシルエットなどすべて計算されたバランスがあり、その良さは着てみないとわからない」と語る森岡氏。まずは今シーズンのトレンドの話から聞いた。

ファッションには変化する楽しみがある

まず今シーズンのメンズ全体の傾向ですが、ここ最近は大きなトレンドの変化はありません。そのようななかでブリティッシュトラッドは、さらなる注目のトレンドとなっています。もちろん、現代的な“リラックス感”や“あたたかみ”という解釈がくわえられて、あたらしいブリティッシュの方向性が提案されています。また一方では、モードのリーダー的なデザイナーズブランドでは、テクニカルな手仕事などを駆使してブランドの原点に真摯に回帰する傾向も見受けられます。もう一度、自分たちのアイデンティティを見つめなおそうという動きですね。

そういったなかでマーガレット・ハウエルの服を見て思うことは、どんな時代をむかえても自分たちの軸(原点)をぶらさず、同時に、いまの時代に必要なことと必要でないことに対して実直に向き合いつづけていることです。

今シーズンは「HERITAGE OF EARLY MARGARET HOWELL」というテーマで展開しています。まさに原点回帰であり、ブランドのこだわりを核として「今シーズンはこうでしょ?」というしっかりとした提案が見受けられます。

展示会場にて

真摯に向き合った服には、ポジティブな強さ、変わらないことの正しさ、着ることへの安心感がデザインされ、まさにいまの時代の気分にフィットしています。トレンドを牽引する男性像は時代とともに変化しますが、いまの時代はマッチョやワイルドでなく、知性や繊細さやユーモア感がキーとなるファクターです。そのようななか、マーガレット・ハウエルの提案する服がそんなセンシティブな男性像と重なっています。さまざまな経験を積み、さまざまな服に袖を通してきたことでわかるひとと服との正しい関係。肩の力が抜けた洒脱感を理解する大人は、着こなしの強弱やニュアンスのつけかたも上手。マーガレット・ハウエルの服には、頑固なテイストと巧妙なディテールがデザインされています。相反する要素を共存させた服は、着こなし方によって真面目にもやんちゃにもなれる懐の深さをもっています。ベーシックでアバンギャルド。着るひとのセンスによって印象を変える服は、服を知る大人を虜にする手ごわい一面ももっています。

TPOとドレスコードを理解すれば、ハウエルの服はもっと楽しくなる

今回は、スーツの上下を組み替えて、「ビジネスにも使えるスーツでどう遊べるか?」をテーマにコーディネートしてみました。いま、ドレスの着こなしでも遊び心は必要で、実際に着るときに“いかにハズし上手”になれるかが重要なポイントです。

僕たちの世代とちがって、いま服に興味をもっている若い世代は、生まれたときからさまざまな服に袖を通してきていて、ニュアンスのあるハズし具合は本当に上手くなっています。しかし一方で、服を着るうえでのTPO をもっと理解すれば、さらに服が楽しめるのにと残念にも思っています。アイテムを足したり引いたり、コーディネートを決めたり崩したりすることによって、ひととはちがう自分らしさや洒落っ気が生まれます。マーガレット・ハウエルのスタイリングを参考にすると、そんな絶妙な着こなしがわかってくると思います。

この服には、英国で磨かれてきた血統の良さを感じます。でも単純に血統が良いだけでなく、どこかに節度をともなったアバンギャルドさや遊び心が見え隠れし、スタイリングに新鮮な感覚が生まれています。トラッドをどう遊ぶか、基本を組み替えればどう楽しめるかを教えてくれるブランドです。

森岡 弘|MORIOKA Hiroshi
ファッションディレクター/スタイリスト。早稲田大学卒業後、婦人画報社(現アシェット婦人画報社)入社。『メンズクラブ』編集部にて、ファッションエディターとして従事。同社を退社後、1996年にクリエイティブオフィス「グローブ」を設立。俳優やアーティスト、アスリート、文化人などのスタイリングをおこなう。企業のユニフォームのデザイン・制作、アパレルブランドやライフスタイルブランドのプロデュース、広告や雑誌でのファッションディレクションやスタイリングを手がけるなど、ファッションを中心に幅広い分野で活躍している。

アングローバル
Tel. 03-5467-7874
www.margarethowell.jp

Margaret Howell|マーガレット・ハウエルのスーツ──磨かれて軽くなったフラノの魅力
NEW ATTITUDE×NEW SET UP PART-2

洗練のスーツの先にあるもの

“計算してハズすことの個性”。特別な職業でもないかぎり、現代のスーツは、仕事を楽しむためのアイテムのひとつになっている。ノータイでスーツを着たり、ジーンズにジャケットを合わせたり、ジージャンにタイドアップしてトラウザーズを合わせたり、スーツはさまざまな顔をもってビジネスシーンに登場する。そんな着こなしをより魅力的にするのが卓越した生地。マーガレット・ハウエルのスーツが採用するFOX BROTHERS 社のフラノは、英国製ならではのしっかりとつまった目つけと上品なツヤ感が特徴で、しなやかで温もりのある着心地は、秋冬の季節の到来を教えてくれる。まずタイドアップして、スーツの基本を楽しむ。そのベーシックスタイルは、あたらしい着こなしの発想の原点となる。

MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエルのスーツ──磨かれて軽くなったフラノの魅力 05
MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエルのスーツ──磨かれて軽くなったフラノの魅力 06

FOX BROTHERS
FOX BROTHERS社は、1772年に英国サマセットで創業。元来フランネルの生産開発を大規模におこなっていた伝統的なファブリックメーカーで、歴史がありながらも研究と開発をつづける姿勢により、230年以上経った今日でも発展しつづけている。その功績が評価され英国の栄誉賞“queens award to industry” (英国女王賞) を3度も受賞。ほかのメーカーでは決して成しえない偉業を達成している。

アングローバル
Tel. 03-5467-7874
www.margarethowell.jp

           
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