F. CLIO|ヒストリー&コンセプト
F. CLIO|F. クリオ
イタリアントレジャー「F. CLIO」が誕生するまで
イタリアのバッグブランド、それもいわゆるファクトリーブランドともなれば、型どおりの先入観が頭をよぎる。だが、この「F. CLIO」は違う。クオリティの高さはそのままに、イタリアの太陽のような、なんとも言えない“あたたかみ”に溢れているのだ。
Text by HOSOMURA GotaroPhoto by Jamandfix
あらたな伝統が今産声をあげる
世界的に革製品で著名なブランドの源をたどると、馬具製造工房に行き着くところは少なくない。用途によって革や縫製を変えなければならず、また堅牢性や緻密さなどを求められる馬具の知識や技術は、鞄をはじめとする革製品に応用してあまりあるからだ。
ここに紹介するイタリアのバッグブランド「F. CLIO」も、嚆矢はひとりの馬具職人にある。その人物こそ「F. CLIO」の母体PELLETTERIA CLIO社の創業者 ボイスキィオ・ガルビアーティ氏。15歳のときに老舗馬具工房でアルティジャーノ(職人)として修行をはじめ、確たる技術と品質に対する頑固なプライドを叩き込まれたという。その後、革製品職人へと転身。馬具製造で培った革の選別、縫製などの技術や知識を継承しつつ応用し、旅行鞄やバニティケース、ジュエリーケースなどを製作するように。その美しく高品質な製品により、イタリアで腕の良い革職人として瞬時に頭角をあらわした。レディスバッグ製作販売会社を経て1983年、鞄製作や洋服のデザインをしていた職人仲間、そして息子であるフルヴィオとトータルバッグメーカーPELLETTERIA CLIO社を創設する。
つねづね、ボイスキィオ・ガルビアーティ氏はこう言っていたという。「世代を超えて愛される鞄をつくりたい」。その熱い思いは、革の裁断から縫製までの全行程を手作業でおこなうということに発露した。イタリアのアルティジャーノらしい、品質や美のあくなき追求、そして熟練の手業から創出される“美しき鞄”は、おのずと衆目を集めることとなり、イタリア国内で評判の鞄メーカーとなった。
溢れ出るイタリアのエッセンス
現在、同社のオーナーを務めるのは、父から引き継いだ息子のフルヴィオ・ガルビアーティ氏。そしてこの度、氏がクリエイティブディレクターとして立ち上げたブランドが、「F. CLIO」なのである。父から継承した伝統の技術を用いつつも、独自のあたらしい感性を配剤したクリエイティブワークを展開し、ここにしかない鞄を生み出している。熟練した職人技から生み出されるその鞄は、高い品質とイタリアらしい美に満ちている。日本初上陸の新進ブランドとなるが、イタリア国内では長い間信頼を得ており、今回やっとその恩恵を享受できることとなった。イタリアの鞄づくりの神髄を堪能できる、最後にして最新の実力派バッグブランドといえるだろう。
基本コンセプトは「イタリアントレジャー(=イタリアの宝物)」。鞄としての魅力を表現したもので、言い換えれば“五感で感じる鞄”とでも言えようか。たとえばフレグランスのような革の薫り、イタリアンレザーを用いたハンドルの触感、視覚に訴えかける美しい発色のナイロン生地、レザーとのコンビネーションなどに見てとれる。確かに既存のバッグブランドにはない、独特の温かみやナチュラルさを湛えている。ハンドルなどに部分使いされるレザーは、ワルピエール社のベジタブルタンニン鞣しによるもので、絶妙かつ確かな持ち味を楽しめる。
またナイロン地バッグの素材は、サンティ社へ特注したエクスクルーシブで、発色が実に美麗だ。それらの素材を用い、フルヴィオ氏自ら家族と呼ぶ工房の8人の職人仲間とともに、丁寧に手作業でつくられている。当然、量産はできず希少性が高い。特有の温かみやクラフト感をもつ理由がここにある。2010年2月にミラノ、3月には日本の銀座、大阪にショップをオープンする。数多あるイタリアンバッグブランドのなかで、ミラノにオンリーショップをもつ唯一のファクトリーブランドとなる。全国の主要な百貨店でも展開予定だ。
イタリアの太陽のような温かみを感じさせるデザインワーク、そして手作業にこだわる巧緻な縫製技術……。“イタリアの宝物”と自ら呼ぶ矜持が、ひしひしと伝わるブランドだ。