サイモン・テイラーが、シーズンテーマ「THE PRINTER」を語る|WORK NOT WORK
WORK NOT WORK|ワーク ノット ワーク
英国の伝統や職人のものづくりに対する尊敬
サイモン・テイラーが、テーマ「THE PRINTER」を語る(1)
2013年3月に、ブランド第一号店を東京のKITTE丸の内の1階にオープンし、話題を集めたブランド「WORK NOT WORK(ワーク ノット ワーク)」。ロンドンのクリエイティブ集団TOMATOの創立メンバーとしても有名な、デザイナー兼クリエイティブ・ディレクターのサイモン・テイラーに、2014-15年秋冬コレクションについて話をうかがった。
Photographs by SUZUKI ShimpeiText by KAJII Makoto (OPENERS)
「じつは僕の祖父が印刷工なんだ」
インタビュー終わりに「好きなフットボールチームは?」とたずねると、すかさず「アーセナル!」と答えてくれたサイモン・テイラー氏。ワーク ノット ワークの6シーズン目となる2014-15年秋冬コレクションを気さくに語ってくれた。
――今シーズンのテーマは「THE PRINTER」とうかがいましたが、ビジュアルの撮影もこだわったようですね。
活版印刷に使う活字を作っている工場で撮影しました。とても洗練された空間で、内容の濃い撮影になりました。じつは大学のときに活版印刷を少し勉強したことがあって、今回は全部の工程を見ることができて興味深かったです。
――「THE PRINTER」というテーマは、どこから発想を得たのでしょうか?
じつは自分の祖父が印刷工で、祖父の仕事を見て育った記憶があります。ワーク ノット ワークは、デザインとクラシックをミックスして融合させることがコンセプトのブランドなので、とても必然的なテーマにたどり着いたと思っています。
――お祖父さんはどんな方だったんですか?
祖父はロンドンの北の方に住んでいて、いろんな仕事をしていました。とても頭の良いひとで、オックスフォード大学などの名門に行けたそうですが、当時、お金がなくて進学を諦めたと聞いています。祖父はどの写真を見ても中央に写っていて、みんなに慕われていたことを偲ばせます。
――カタログの構成もユニークですね。
工場で撮った写真と、祖父が写っている私物の写真を組み合わせてタブロイドペーパーを作成しました。祖先のことを取り上げるのはなかなかできないことなので、とてもうれしいです。
――「THE PRINTER」は、服にどう表現されていますか?
今回は、当時の印刷工が着ていた服の縫製方法などを勉強しましたが、ワーク ノット ワークは、昔の服のレプリカを作るわけではありません。エッセンスを取り入れるブランドです。2014-15年秋冬コレクションは、大きく3つに分かれています。ひとつは、日曜に着る、いわゆる一張羅(いっちょうら)の服。そして、もっとカジュアルな日常的に着る服。それとポップな服。そんなイメージでつくりあげました。
WORK NOT WORK|ワーク ノット ワーク
英国の伝統や職人のものづくりに対する尊敬
サイモン・テイラーが、テーマ「THE PRINTER」を語る(2)
日本には何度も来日しているというサイモン・テイラー氏。東京のファッションシーンの印象を聞くと、「ヨーロッパの国よりダイナミックで面白い」という。
個が反映されるコンテンポラリーなコレクション
――東京のどんなところが面白いと感じますか?
私自身が流行を追っているわけではありませんが、とくにウィメンズはトレンドをキャッチするのが早いし、日本人は男女問わず「どう見られるか」を気にしているような印象を受けます。でもそれはとてもいいことで、ファッションマーケットがわかりやすい。
――そういう街でワーク ノット ワークは何を提案しますか?
ワーク ノット ワークでは、前にも言いましたがレプリカをつくることに興味はありません。着て楽しいもの、洗練されているもの、そして個が反映されるものを提案しています。今シーズンは、祖父の時代から存在しているものと、カウンターカルチャーの融合によって、コンテンポラリーなコレクションをつくっています。
ショップは、私たちをもっと深く表現するとてもいい場所
――メンズの服をつくる面白さは?
毎回、テーマを決めて、そこからチームで興味をもって一緒につくるのがとても楽しい。丸の内のショップ「WORK NOT WORK URBAN RESEARCH」を見てもらうとわかりますが、服以外の雑貨も合わせてブランドの世界観を表現しています。ショップスタッフがその世界観を理解して、非常に良い雰囲気をつくっています。私たちをもっと深く表現するとてもいい場所です。
――サイモンさんの本拠地のロンドンの魅力を教えてください。
ロンドンは1890年代からヤングカルチャー、ユースカルチャーの強い街で、それは1950年代から60年代までつづき、若いひとの力でカルチャーが生み出されてきました。イギリスはいろんなものをミックスしてあたらしいものを生み出す力をもっていますが、ロンドンは今も昔ほどのダイナミックさはありませんが、小さなコミュニティからあたらしいことがつねに発信されています。
――ロンドンは、サイモンさんにどんな影響を与えていますか?
私はトレンドを追っているわけではありませんが、いろんなことに興味をもって、吸収して自分なりに解釈し、表現しています。ワーク ノット ワークでも自分の旅のアイデアなどをミックスしていますね。
――では最後に、これからのブランドの展開を教えて下さい?
今回、6シーズン目を迎えて、やっと自分たちがこのブランドをわかってきました。ワーク ノット ワークの服作りのベースには英国の伝統や、古来からつづく職人のものづくりに対する尊敬があり、そこに私たちの好きなものやあたらしいものを出していければいい。これからは服以外に、フットウェアをリリースしたり、アイテムを広げていければいいなと思っています。
WORK NOT WORK URBAN RESEARCH
東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー
KITTE丸の内 1階
Tel. 03-6269-9170
営業時間|11:00~21:00(月曜〜土曜)、
11:00~20:00(日曜〜祝日、祝日の前日は21:00まで)
WORK NOT WORK
http://worknotwork.net/