デザイナー、マーク・ニューソンが語る「NIKE ZVEZDOCHKA」誕生秘話|NIKE SPORTSWEAR
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10年の時を経て時代を先取りするデザインが、限定版としてふたたび登場
マーク・ニューソンが語る「NIKE ZVEZDOCHKA」誕生秘話
これまでになかった美を追求し、宇宙から着想を得てデザインされた「Nike ZVEZDOCHKA(シュベドッカ)」がセンセーショナルに登場したのが2004年。シューズとしての機能とアートの両面を兼ね備えたNike ZVEZDOCHKAは、インダストリアルデザイナーとして著名なマーク・ニューソンが手がけたものとしても広く注目された。Nike ZVEZDOCHKA 10周年を記念して、12月29日(月)より、nike.com/nikelabとNikeLab DSM GNZ(ナイキラボ ドーバーストリートマーケット ギンザ)で、復刻版の5色が限定販売される。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)
まったくあたらしい美的感覚を纏った型破りなデザイン
外側のケージ、取り付け可能なアウトソール、インナースリーブ、インソールという組み合わせ可能なパーツで構成されているNike ZVEZDOCHKA。
コンピューター上でデザインされたシューズは、「機能性という観点では、宇宙飛行士を意識して複数の用途をもたせたシューズづくりをしようとアイデア」を膨らませたもので、Nike ZVEZDOCHKAという名前は、1961年に人口衛星スプートニク10号に乗船したロシアの犬の名前にちなんでつけられている。
Nike ZVEZDOCHKAは、素足に限りなく近い履き心地で、インナースリーブには柔軟性と耐久性に優れた素材を採用。足全体を覆いかぶせることで悪天候から足を保護し、内側の中敷きのかかと部分にはNike Zoom Airを搭載。さらに、アウトソールに通気孔をほどこしたバスケットにはめ込むことで、シューズとして使用できるという革新的な構造をもつ。
マーク・ニューソンが語る「Nike ZVEZDOCHKA」
――ZVEZDOCHKA(シュベドッカ)のアイデアはどのようにして得ましたか?
何年間もかけて、ナイキと共同デザインをしようという考えが深まってきました。2000年にさかのぼりますが、共同デザインをしないかとマーク・パーカー(ナイキインク社長兼CEO)から個人的に話をもちかけられていました。このシューズに決めるにあたって、サングラス、バッグ、その他のフットウェアなど、何を共同デザインするかを検討しました。同時期に、ロシア連邦宇宙局から、スペースシャトルの立ち上げがおこなわれるロシアにあるバイコヌール(星の都市)に来ないかと声をかけられていました。その当時は、国際宇宙ステーションに関連する活動が盛んにおこなわれていましたので、国際宇宙ステーションに従事する宇宙飛行士とも仕事をしましたし、無重力のなかで作業をおこなうことがどういうことかを学びました。
その際に、宇宙で仕事をする宇宙飛行士の目的にすべて適ったシューズをつくりたいと思いました。宇宙で仕事をする、余暇を楽しむ、さらに激しい運動をするといったさまざまな用途にあったシューズです。つまり、人間工学的にも、これまでとは大きく異なる方法で機能するシューズをつくる必要がありました。組み合わせ可能で、足全体を覆い、激しい動きや乗組員室中を浮いて作業するのに適したシューズが必要でした。その当時ナイキに存在していなかったあたらしいシューズをつくりたいという情熱になったきっかけでした。シューズとブーツのあいだを取ったものが、まさに「ZVEZDOCHKA」でした。
――Nike ZVEZDOCHKAはまったくあたらしいシューズ製法を採用しています。これまでの発想を覆すものですが、デザインにおいて現状を180度変える重要性とは何でしょうか?
デザイナーとして、私が思うことは、限界に挑戦することが重要だということです。未来を見据えて、将来がどうなっていくかに思いを馳せることが必要になります。それができなければ、デザイン自体は意味がなくなってしまいます。私にとってデザインとは、つねにあたらしいテクノロジー、過程、素材を使って、あらたな可能性を追求することです。つまり、さまざまな業界の方としっかり意見交換をしていくことが重要になります。
――デザインは問題解決への取り組みとおっしゃっていましたが、10年前のZVEZDOCHKAでどのような問題を解決されましたか?
宇宙環境にあったシューズをデザインするという、ナイキにとってはまったくあたらしい課題に挑むということがそうです。無重力の宇宙で運動していないと、身体が退化してしまいます。ナイキにとって宇宙にあったシューズづくりほど要求の高いものはなかったはずです。これが、ナイキとのプロダクトづくりをはじめるきっかけになりました。もちろん地上での使用を目的としたシューズづくりですが。組み合わせが可能な、ブーツのような着脱が簡単なシューズづくりです。その当時、業界でもこのプロダクト以外に、ブーツをシューズに変化させたものはなかったのではないでしょうか。
――過去10年間を振り返って、ZVEZDOCHKAはマークさんのデザイン史に足跡を残したといえますか?
はい、間違いなくそうです。ZVEZDOCHKAをデザインした前後も、自らのデザインに影響を与えたと思います。ガゴシアン・ギャラリーで表現した「Random Pak」と「Voronoi Shelf」といった作品を含めて、作品全体の中にあるパズルのピースのようなものと捉えています。
――自ら購入したいものをデザインされるとおっしゃっていました。どのようなものを購入したくて、ZVEZDOCHKA をデザインされたのでしょうか?
Nike ZVEZDOCHKAはデザイン上の問題を革新的な方法で解決してくれました。独創的でクールな素晴らしい作品に仕上がりました。
――ナイキと共同作業をされる魅力はどのようなものでしたか?
とくに、マーク・パーカーと仕事ができることが魅力でした。すごく気も合いましたし、会社のトップとクールなプロダクトをつくるために、関心のあることを共有し、顔を合わせ情熱をそそぐことは、そうできることではありません。我われは、それを目指していました。マークはしっかりとした個性をもっているので、自然にコラボレーションを進めることができました。つねにリラックスして、プレッシャーを感じることはなく、いいアイデアが出ても、出なくても、楽に仕事ができました。
――デザイナーとして、関心のあるナイキの最新イノベーションはありますか?
フットウェアメーカーがこれほど大きく進化を遂げていることは稀有なことです。ナイキのプロダクトは、たんなるファッションアイテムではなく、知識を駆使したインダストリアルデザインが詰まったプロダクトといえます。スニーカーが人間の自己表現の象徴になってきていることは、社会人類学的に見て非常に興味深いことです。
――Nike ZVEZDOCHKAは今後、マークさんのデザインにどのような影響を与えていくと思いますか?
大まかに言いますと、Nike ZVEZDOCHKAがもたらす影響は、これまでもそうでしたが、デザイン上の課題に発想を変えて取り組んでいく重要性をもたらしたことだと思います。人びとが今回のシューズをプロダクトとして実際に、そして気持ちの面でも受け入れてくれることが重要です。
――カスタマイズはデザインにおいてどのような可能性がありますか?
カスタマイズの度合いにもよると思います。カスタマイズができればできるに越したことはありません。既存のデザインと概念的なデザインをつなぐ意味では、カスタマイズは非常に興味深い方法になります。
マーク・パーカー(ナイキインク社長兼CEO)が語るNike ZVEZDOCHKA
――マーク・ニューソン氏との共同作業はどのようなものでしたか? どのように相乗効果を発揮することができたと思いますか?
ZVEZDOCHKAのプロジェクトを手がける前から、マークのことは知っていましたので、彼の考え方も把握していました。彼のデザインにおける問題解決方法は、ナイキの考え方と共通点があり、作業を進めることに違和感はありませんでした。プロジェクトについて話をはじめるなかで、誰も考えなかった、従来型のシューズ製法の過程に着目しました。そうすることで、あたらしい可能性を追求し、このプロジェクトをあたらしいシューズ作りのみに終らせてはいけないと意識できました。
――ZVEZDOCHKAを手がけたことで、ナイキのコラボレーション方法は変わったと思いますか?
ナイキでは、これまで650人以上のデザイナーと手を取り合って、誰にでもすぐに共感してもらえるクリエイティブな文化を育んできました。とはいえ、外部からの影響を受け入れることは大きな効果があり、これまで以上のスピードで未来に手が届くことにつながると信じています。
このような考え方を採用するなかで、アート界、映画界、音楽界の多数のクリエイターの方と何年間もともに作業をしてきました。このようにさまざまな方とつながりをもてたことは、我われを優位に立たせてくれる大きな原動力となっています。 ナイキには絶え間ない発明の精神が根づいています。つまり、これまで存在しなかったものを生み出す努力をいとわないということです。あたらしいプロダクトをたんに生み出すだけではなく、それをより良くしていく必要があります。
質問の答えは「Yes」です。マークのように活躍しているデザイナーと手を組むことは大きな励みになりました。この共同作業を通じて、あらたな美への追求心が掻き立てられました。それにも増して、これまで想像もしなかった可能性の扉を開くことができたことは重要な意味がありました。
――NIKE ZVEZDOCHKAはまったくあたらしいシューズ製法を採用しています。これまでの発想を覆すものですが、デザインにおいて現状を180度変える重要性とは何でしょうか?
従来型の発想を覆し、あたらしいモデルを作ることが必要になることがあります。これは、意味のある変化をもたらすためです。これまでのシューズ製法である裁断・縫製加工では、「NIKE ZVEZDOCHKA」を誕生させることは不可能でした。とはいえ、最初に思いついたアイデアから、ここまでのデザインまで発展させることができるとは想像もしていませんでした。適切な方法で、タイムリーに、正しい質問を投げかけることに尽きると思います。
どんなことでも、つねにバランスが重要だと考えています。自分がデザインしたプロダクトに感情的に働きかけるためには、最初からやり直す必要はありません。突破口を開くことは重要ですが、これまで以上に優れたものをつくるろうとする、真のアートを追求することも重要です。
――過去10年間でZVEZDOCHKAは、ナイキのデザインに直接または間接的にどのような影響を与えましたか?
ZVEZDOCHKAをデザインしてきた道のりのなかで、我われのデザインおよびイノベーションチーム、とくにプロダクト作りに大きな影響を与えてくれました。
長い目でみますと、ZVEZDOCHKAは、我われが製造革命と呼ぶ取り組みを進める上で、重要な一歩となったと思います。ZVEZDOCHKAのようなプロジェクトにより、「NIKE FLYKNIT」のような画期的なプロダクトを生み出す道を開いてくれました。また3Dプリンターのようなあたらしいツールにたいする感じ方が変わりました。
重要なことは、デザインにおいて、いまもっとも意義深いとされる環境への配慮にたいする考え方にまで、ZVEZDOCHKAが影響を与えたということです。ビジネスにおける制約を取り除くと同時に、地球への影響を限りなく抑えることが、我われのデザイン過程の一部として採用されました。
――NIKE ZVEZDOCHKAは今後、ナイキのデザインにどのような影響を与えていくと思いますか?
NIKE ZVEZDOCHKAには、カスタマイズ、組み合わせ可能なパーツ、環境への配慮さらに製造にいたる可能性の扉を開いていこうという考えがあり、将来が楽しみになります。
デザインは繰り返しの作業から生み出されるものです。ひとつのアイデアにより別のアイデアが生まれます。今後の話になりますが、カスタマイズと組み合わせ、可能なパーツによってもたらされる将来的な可能性を想像するだけでワクワクします。もちろん、持続可能なデザインにかんしては、NIKE ZVEZDOCHKAの影響力はこれからもつづいていくものです。環境に優しい将来に立ちはだかる制約をNIKE ZVEZDOCHKAが取り除いてくれました。こういった制約をなくしていくことが、我われが目指すゴールです。
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