MARGARET HOWELL|スタイリスト二村 毅氏が着る最新コレクション
MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエル
スタイリスト二村 毅氏が着る、マーガレット・ハウエル
「着てみて伝わってくるものがたくさんある」
ニューヨークコレクションや雑誌の撮影などで、8月末から3週間近くニューヨークに滞在していたスタイリストの二村 毅氏。帰国後、「マーガレット・ハウエル神南」でメンズコレクションのなかから気になるアイテムを実際に着てもらった。店頭で試着するなかで二村氏が感じたこととは。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by HARA Emiko
伝統を重んじながら進化させることの素晴らしさ
「マーガレット・ハウエルのメンズは、見るほど、着ていくほど、ぶれない魅力が伝わってきます。時代背景が変わろうとも、デザイナーのマーガレットさんの頑丈なる精神というか、彼女が感じた時代の空気感をしっかり洋服作りに反映させているのが素晴らしい。男の服の伝統を重んじながら、それを損なわず進化させるというのは難しいことだと思います」
「たとえば、さまざまなブランドで、ブランド同士、生地メーカーと、他業種となど、ダブルネームの商品を展開していますが、それらのなかには本当にそれが必要なのか? と疑問に思うものもあります。でも、こうして神南のお店でフォックスブラザーズのジャケットとトラウザーズを見ると、マーガレットさんの“フォックスブラザーズならではの厚い生地感を損なわずに、少し軽く商品にできないか”という思いや工夫がしっかり伝わってくる。それがデザインではボックスシルエットやテーパードの効いたトラウザーズにあらわれて、着ると男性の色気が出るスーツになる。うまいなと思いますね。安心感と安定感があって、ブランドとしての年輪を感じます」
服から感じるマーガレットのファッション哲学
「今回気に入ったルックは、まず黒×茶の配色が新鮮なコーディネイト。なにより、僕も試着しましたがマッキントッシュのカーコート(PROOFED COTTON –MACKINTOSH)が素晴らしい。それと、マーガレット・ハウエルのジャケットスタイルとしてはやや地味なトーンですが、ベレー帽やボーダーを上手にミックスしてユニフォーム的にこなした、今の感じを良く出している着こなしも好きです。ハリスツイードのジャケットをメインに、ちょっとした変化でいろんなひとが着こなせますね」
「マーガレット・ハウエルの服は、ぱっと見を狙っていないので、ビジュアルでは伝わりにくいところも多いと思いますが、そういうところが素敵。お店に来て、実物を見て、試着して、“ああこういうことか”と理解できるものがある。圧倒的なわかりやすい豊かさとはちがいますが、彼女の哲学が入っている豊かさを服から感じます」
「フォックスブラザーズ、ジョン・スメドレー、マッキントッシュ、インバーアラン……、自分がトラッドが好きだから惹かれるんでしょうね。僕も、トラッドは好きだけど、オヤジ臭くならないよう現代的なスタイリングに苦心しますが、マーガレットの服には見習うところが多いです」
ARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエル
スタイリスト二村 毅氏が着る、マーガレット・ハウエル
「ジョン・スメドレーのボーダーニットが気分」
スタイリストの二村 毅氏がOPENERSの取材で登場するのはほぼ2年ぶり。前回の登場時にはデニムに凝っていると話していたが、最近はちょっと飽きましたと笑う。
白ソールから黒ソールへと変わった!
「今年の8月末から3週間近くニューヨークに滞在して、半年に1回のコレクションのスタイリングとキャスティングのお仕事、雑誌の撮影をしてきました。ニューヨークに着くとすぐモデルのストリートハントに出かけます。近年開発がめざましいアートの街、チェルシーには出店できないような小さなギャラリーが、NYファッションウィークに合わせて、ダウンタウンのローワーイーストサイドのオーチャードストリートに40店ほどが一斉にオープンしたり、マンハッタンブリッジの下に2年前くらいに巨大なスケートパークができたんです。その影響で街にスケートショップが増えたり、半年ぶりのニューヨークでしたが変化を感じました」
「ファッション的にはいわゆる“アメトラ”やブルックリンの“ヒゲ+オーセンティック”はすごく減っていて、スケートや音楽カルチャーを反映した、ぴたぴたすぎないほどよく細身のブラックのパンツにウエスタンシャツやTシャツ、キャップにヴァンズのスニーカーというひとが目立ちましたね。とくに気になったのが、スニーカーのソールが、去年は白ソールが多かったのですが、今年は黒ソールが多くなっていました。また、女子はサボが人気で、MHL.でレディスのみを扱っているラバーソールの「SANITA」がよく履かれていました」
「モデルハントでNYU(ニューヨーク大学)にも行きましたが、コンサバというより、古着やトラッドの服を上手に着こなしている不良風の学生が多くて、足もとはやはりヴァンズスニーカー。西海岸のスケーターは白人がルーツですが、東海岸のスケーターのルーツはニューヨークの黒人なので、爽やかすぎないアンダーグラウンド感のある、ヒップでかっこいいファッションには黒ソールの方がフィットするんでしょうね」
「マーガレット・ハウエルのメインラインに、ジョン・スメドレーの茶系に黒をアクセントにしたボーダーニットがありましたが、とてもモダンに感じました。ニューヨークはちょうどああいう配色が気分でしたね」
二村 毅|NIMURA Tsuyoshi
1970年、愛知県出身。1992年、神奈川大学卒業。大学在学中からエディトリアルを中心にスタイリストとして活動を開始。東京コレクション、ニューヨークコレクションの「N.HOOLYWOOD」、東京コレクションの「LAD MUSICIAN」などコレクションにもかかわる。littlefriends management所属(http://www.littlefriends-management.com/)。