BRIEFING|ブリーフィング×ルモアズの人気別注 新作トートバッグは“斜め掛けOK”
BRIEFING|ブリーフィング
トートバッグか? メッセンジャーか?
ブリーフィング×ルモアズの人気別注、新作トートは「斜め掛けOK」(1)
1年ぶりに実現した、ブリーフィング×ルモアズによる別注企画。前回好評だった「メッセンジャーブリーフ」に続く、自転車などのアクティブシーンを想定したトートバッグが出来上がった。既存のバッグにはない斬新なアイデアは、いったいどこから生まれたのか……。ブリーフィングのクリエイティブディレクターである小雀新秀氏と、ルモアズのディレクター、松本博幸が語ってくれた。
Photographs by JAMANDFIXText by INOUE Shun
トートバッグを斜め掛けするという、大胆な発想
ミルスペックに準拠したクオリティを保持しつつ、いわゆる「軍もの」とは一線を画すデザインと、機能性に優れたバッグ類を展開しているブリーフィング。1998年のデビュー以来、変わらぬポリシーを貫くこのブランドに、ルモアズは早くから共感し、数々の別注品を生み出してきた。そして今回誕生したのが、斜め掛けが可能となったトートバッグ「MATSU-MO-TOTE」。その革新のアイデアやプロセスについて明らかにしていこう。
――そもそも、ブリーフィングとルモアズの関係は、いつから始まったんでしょうか?
松本 ルモアズに改名する前からの付き合いで、別注はこれが5モデル目。単純に僕とブリーフィングの関係だけで言えば、『モノ・マガジン』に勤めていた頃からで、ブランドの設立当時から仲良くさせてもらっていました。
小雀 『モノ・マガジン』にはよく取り上げてもらいましたよ。もう15年近い付き合いになりますね。だから別注の話を頂いたときも、快諾しました。
松本 その最初の別注を提案したのが、2007年のこと。傑作「アーマートート」に、当時は使われていなかったコヨーテブラウンを色別注しました。その絶妙なカラーリングから、雑誌『Begin』にも大きく取り上げられ、即完売。最近まで読者から問い合わせがあったというほど、話題となった別注でした。
小雀 その時から、コヨーテブラウンは通常の商品にも使うようになったんです。そのあと、「スライダー」「ジムワイヤー」「メッセンジャーブリーフ」、そして今回の商品と、さまざまな型のバッグを別注を受けてきました。
――では今回のバッグは、どういった視点からスタートしたのでしょうか?
松本 前回おこなった「メッセンジャーブリーフ」は、わりとビジネスシーンを意識したものでした。そのため、今回はもっとカジュアルなものが作りたいなと。また、トートバッグの需要が昔に比べ強くなった背景もあります。そこで、自転車などのアクティブシーンでも使えるトートバッグがあると便利だなと思ったんです。普通のトートバッグで自転車に乗ると肩からずり落ちてしまい、カッコ悪くて不便。それを解消するものを考えてみました。
――バッグの底からコードが出てくる仕組みは新しいですね。
松本 バッグの底から出したコードを持ち手に装着することで、斜め掛けが可能になったんです。メッセンジャーというよりボディバッグに近い感覚で使え、両手が空くため自転車などに不自由なく乗れます。僕がなんとなく頭の中に描いた画を紙にメモして、それを小雀さんがお洒落に具現化してくれました(笑)。
小雀 発想自体はすごく新しかったので、僕はそれを上手く形にすることに終始しました。ベースとなったのは元々軽量なトートバッグ、「フライトライトバケット」。さらに軽さを追求するため、素材をバリスティックナイロンからコーデュラナイロンに変更しました。自転車などのシーンを考えると、できるだけ軽量な方が何かと便利なので。また、口部分がボタンの留め具しかなかったので、ジッパーを取りつけました。斜め掛けした際、中身が出るのを防いでくれます。
松本 しかもこのジッパー部分は、使わないときは内側にストンと収まる仕組みになっているので、ボタンと併用して使い分けができる優れものなんです。
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――製作するうえで大変だった点は?
小雀 やはり、この斜め掛けするためのコードの処理ですね。ミニマムな世界観で収めたかったので、コンパクトにすることを心掛けました。仰々しくするのは簡単なんですが、それでは見た目が美しくない。コードをバッグの底に入れた時、膨らんでしまうとカッコ悪いので、収納部分は広めに作りました。小さな折り畳み傘を入れることができるくらいの容積を取ることで、悪目立ちしないようにしたんです。またマジックテープを使うことで、コードを出している時も収納している時も、邪魔にならない仕組みを作りました。
松本 小雀さんの経験値があるからこそなせる技ですよね。このコードの取り付け方でこのバッグの命運が分かれるけど、見事に美しい出来映えにしてくれた。しかもこれ、右でも左でも好きな方で使えるので、かなり便利。特許取れちゃうくらい斬新なアイデアだと思うな(笑)。
小雀 また前面のジップポケットにも少しマチをとっています。そうすることで、斜め掛けしてボディが引っ張られた際にも、中身が圧迫されないんです。それはコードの部分も同様で、持ち手の装着部を固定せずゆとりを持たせ、力が分散するようにしました。
――斜め掛けを除けば、基本のスペックを変えていないので、ブリーフィングの良さを生かした別注品になっていますね。
松本 ブリーフィングの商品はどれも完成された作りなんですよ。だから、僕らが手を加えるべきなのは、その良さを生かしてどう遊ぶかに尽きます。ミルスペックに準拠した製品を手掛ける工場にこだわっていて、9・11の時も、その姿勢を崩さなかった。
小雀 9・11の時は、テロ対策で軍ものの生産量が増えて、一般向け製品のラインは縮小されていたんです。だから2年近く、供給が追いつかなかった。それでも工場に対するこだわりは、崩したくはなかったんです。
松本 そういうミリタリー専門の工場で、デイリーなバッグを作り続けることは、少々大げさですが「地球平和を表現している」とも言えます。ミリタリーの工場が、戦争に関する製品以外のものを作ることって、素晴らしいことだし、ブリーフィングはその架け橋にもなっている。その姿勢も応援していきたいですね。
――6作目の別注もすでに考えているんですか?
松本 まだ頭の中だけですが、なんとなく思い描いているものはあります。また紙に描いて、小雀さんパワーでうまく具現化してもらいますよ(笑)
小雀 頑張ります(笑)
――ありがとうございました。
小雀新秀|KOSUZUME Shinshu
1966年、東京都生まれ。大手バッグメーカーにてデザイナーとして勤務後、99年に「セルツリミテッド」に入社。「BRIEFING(ブリーフィング)」や「WRAPS(ラップス)」といった自社ブランドのデザインや、セレクトショップで企画デザインのOEMを手掛けるなど、デザインに関するすべてを統括する。現在、同社取締役クリエイティブディレクター。
松本博幸|MATSUMOTO Hiroyuki
1969年生まれ。学生時代にクルマ専門誌の編集と営業を経験後、株式会社ワールドフォトプレス入社、広告営業部に配属。『世界の腕時計』『モノ・マガジン』をはじめ、数多くの雑誌に携わる。2005年に退社し、「SHIBUYA-FM」の制作プロデューサーや、アパレルブランドのコンサルティングおよび商品開発を手掛ける。06年、七洋株式会社設立に参画し、「オウプナーズ」「ルモアズ」を立ち上げる。ファッション業界のみならずさまざまな業界に幅広い人脈を持つ。現在同社常務取締役であり、ルモアズのMDも務めている。