“UN-GRANGE”をテーマにした最新コレクション|doublet
FASHION / MEN
2015年8月27日

“UN-GRANGE”をテーマにした最新コレクション|doublet

TOKYOメンズブランド特集|doublet

「ダブレット」2015-16年 秋冬コレクション

“UN-GRANGE”というテーマから生まれた最新コレクション

デザイナーの井野将之氏が、「今シーズンは、“汚れた”“薄汚い”という意味のグランジに、相反する“美しい”“上品”という要素を合わせた、ダーティかつ、きれいなアイデアのコレクションになっています」と語るブランド「doublet(ダブレット)」の秋冬コレクションに注目したい。

Text by KAJII Makoto (OPENERS)

ひとつのアイテムにきれいとダーティをあわせて表現

──2015-16年 秋冬コレクションのテーマ/コンセプトは?

テーマは「UN-GRANGE」。グランジに否定の“UN”を付けた“グランジではない”というテーマです。
たとえば、華美するための装飾技術の刺繍でダメージ感のある破れ柄の刺繍をしたり、キラキラするスパンコール刺繍で表現した「BEAUTIFUL」という文字が汚く崩れ落ちていたり、ベルベットという光沢のある美しい生地を、光沢を出さずに毛羽立ったまま作成したり、1枚ずつ異なるラフな形状の鹿革の端を上品なウールにボンディングしたライダースなど、ひとつのアイテムにきれいと汚いをあわせて表現しました。

──今シーズンのルック撮影でこだわったポイントと、注目してほしいところは?

UN-GRANGEというテーマに合わせて、カート・コバーン(ニルバーナ)のような長髪の髪型ながら清潔感があるモデルをキャスティングしました。グランジ=ロックなイメージになりやすいですが、そうならないように出来るだけニュートラルな日常のなかに自然にとけ込めそうな雰囲気を出しています。しかし、1着ずつよく見てみると、普通に見えてなにか普通じゃないことが隠れていたりするのをルックの全体的な雰囲気から注目してもらえるとうれしいです。
たとえば織られていない不織布のフエルトのハットが、織物のデニムのように破れている(刺繍で表現)とか、デニムパンツから使い込んだニットのような毛羽が吹き出している(ヨコ糸をウールの糸を使い特殊な加工によりピリングを出している)など、なぜ? と思うようなアイデアをちりばめました。

──スタイリング、シルエット、カラーなど、昨年の秋冬コレクションとのちがいは?

去年も掲載していただきましたが、昨秋冬と大きく違う部分は大人っぽく仕上げていったところです。昨秋冬シーズンはロゴものやベースボールキャップ、動物モチーフなどキャッチーではあるけれど若く感じる要素を散りばめてモードな雰囲気にストリート感を入れていました。
今季はスパンコールで表現した“BEAUTIFUL”はあるものの、柄といえば自然な生地柄(ニットに見えるようにジャガード織をした生地)だったり、パッと見たときの主張を弱くして、コーディネートの幅が広がり、より大人な方にも着やすくなるようなイメージで作成しています。
その分、クオリティはより上がるように努力し、現に去年の自分と比べても、おなじ値段でより上質なものがつくれていると思っています。

──今シーズンのキールック(コーディネート)は?

キールックは下中写真の、鹿革の端をウールにボンディングしたライダースに、内側にアランニットのケーブル柄のケーブルが飛び出してくるニット、ウールループヤーンで編んだスエットパンツのコーディネートです。モノトーンカラーで合わせて、ハードめな黒のライダースをアイボリーのアランニットとスエットパンツのゆるさで解消して、全体的に硬さをなくし柔らかくイメージに仕上げています。
そしてそれぞれのアイテムに表情があり、ライダースは黒でも光沢の違いでウールとレザーの切り替わっている部分がわかったり、ニットのケーブルが飛び出していて、飛び出した分ニット自体のケーブルの本数も減っていったりと、細かくみてもおもしろいです。

doublet|2015-16年秋冬コレクション

doublet|2015-16年秋冬コレクション

doublet|2015-16年秋冬コレクション

ムートンで作ったMA-1でコーディネート

──キーアイテムとキーカラーは?

キーアイテムは、ムートンでつくったMA-1(写真上段右)です。通常MA-1はカーキの表地、オレンジの裏地の二重仕立てでつくられます。その表地、裏地の配色は誰がみてもMA-1だという固定概念があると思います。それを生かして作成したアイテムです。
ムートンという素材はくるくるとカールした毛の付いている面と、ナッパ面というツルンとした面の2種類があります。普通だと、ナッパ面は黒で毛はアイボリーなどが主流ですが、今回作成したMA-1ははじめにオレンジに革を染めます。そうすると毛の面がきれいなオレンジになります(ナッパ面もオレンジになっていますが)。その後、ナッパ面にカーキの染料を吹き付けていきます。オレンジよりもカーキの方が色が濃いのでカーキに染めることが可能です。こうして一重なのに表裏がMA−1の配色になり、なおかつムートンの毛皮面を生かせたアイテムが出来ました。

キーカラーは、その裏面のオレンジです。全体的に、アイボリー、キャメル、ネイビー、グレー、黒とベーシックカラーで展開しているなかにオレンジがピンポイントで入ってきます。オレンジのトーンはリアルなMA-1のオレンジの発色(ミリタリーカラーのオレンジ)にしているので、メンズの服に馴染みやすいです。ルックでは、ムートン裏側のオレンジにソックスもオレンジを合わせたりとアクセントをつけています。

──今シーズンこだわった「素材」は?

タテ糸をインディゴ染めのコットン、ヨコ糸をウールで作成したデニム生地です。広島のデニム生地工場と一緒に作った生地で、はじめは防縮加工という縮みづらい加工をした糸で織ったのですが、加工しても表情が普通の綿デニムとそこまで大差がない感じでした。もっとウールを使っているという表情に仕上げたいと思い、ヨコ糸のウールを探し、防縮加工を軽くしかしていない半防縮のウールの糸を見つけました。半防縮ならば加工して縮むのでおもしろい表情になるのではと思い、再度生地を織りました。
その出来上がった生地を岡山の加工場に持ち込み、とにかくウールの表情を出したいと話し合い、ウールでも漂白出来るブリーチ剤を混ぜ合わせたり(普通の漂白だとウールが溶けてしまうので)して加工しました。
そうして出来上がったのが、ウールがヨコに詰まり、綾の織目の間から毛羽が吹き出してくるウールデニムです。裏面はLEEのストームライダーの裏のようにまるでボアがついているように毛がボア化しています。ウールが入っているので柔らかく軽く、暖かい、見たことない表情のピリングデニムです。
そして、加工していないノンウォッシュの段階だと、ウールがまるでスーツ生地のような仕上がりになり、上質感があり光沢もあるデニムになります。おなじ素材の加工あり、なしの両バージョンで商品を展開します。

──「今シーズンの気分」を一言で表現してください。

ニュートラル

──ブランド(デザイナー)のクリエイティビティを刺激するモノは何ですか?

生地工場、加工場、縫製工場との対話

<主な取り扱い店>
東京・MIDWEST Tel. 03-5428-3171、WISM Tel. 03-6418-5034、LOVELESS Tel. 03-3401-2301、西武渋谷店 Tel. 03-3462-3248、DECOdeBONAIR Tel. 03-6427-5710 etc.
海外・10 corso como SOEUL、Excelsior MILANO、Onefifteen TAIPEI、Shine HONG KONG

問い合わせ先

STUDIO FABWORK

Tel. 03-6438-9575

http://doublet-jp.com/

           
Photo Gallery