「起業したての頃はクライアントに言われるままウェブサイトやサービス開発などに携わっていましたが、自分たちが先に社会に対してビジョンを示すようなコンテンツを作りたくなって、会社を設立しました。国産カメラの性能を生かし、日本人の暮らし、風景、日本の文化を被写体にすれば、自然に海外との差別化も図れます。それらをネットのインフラに乗せれば、日本のことを広く知らせることができる、と」

井野英隆さんが代表を務める「augment5 Inc.」（オーギュメントファイブ株式会社）は、日本を拠点として海外へ活動を広げるデジタル・コンテンツ・プロダクションだ。アフリカの国々の仕事をきっかけにケニアの自然と人々を捉えた映像をリリース、さらに今年はカンヌ映画祭で日本の原風景を追ったドキュメンタリー映画を発表。世界を駆け巡るなか、先日岡山・倉敷で、ふと呉服店に立ち寄り、着物を誂えたという。

「映画祭に出席したり、アフリカに行ったり……。そんな時『日本人って何だろう』と思うわけです。着物に限らず、例えば普段の住まいに畳のスペースがあるだけで、いろんなことが変わるはず。いいお茶を淹れてみようとか、照明を変えてみようとか」

海外に出るからこそ、日本の美しい原風景を描き、残したいという思いが強くなる。井野さんの映像が心を打つのは、その純粋な思いが伝わるからに違いない。

ジャケット7万200円、ニット3万7800円、パンツ3万5640円（すべてトッド スナイダー）、腕時計1万800円（トッド スナイダー × タイメックス）

長身でブルーグレーの瞳を持つジェームス・オリバーさん。見た目はまさに外国人だが、流暢な日本語を操るから、初めて会った人は驚くかもしれない。

「日本に7年も暮らしているからね。故郷のニュージーランドにはこの間、4年ぶりに帰ったよ」

オリバーさんの職業は編集者。代官山蔦屋書店を始めとした感度の高い書店で取扱われている「THE NEW ORDER MAGAZINE」の発行人を務めている。東京、そして世界中のコアなファッションとカルチャーを伝えるスタイリッシュな誌面が話題を呼び、ワールドワイドな支持を集めている雑誌だ。

「フォトグラファーにしてもライターにしても、世界中にいろんな知り合いがいるからね。彼らがクールな写真や企画を作ってくれるというわけ。でも僕は、もともとはプロのサッカー選手だったんだけどね」

オーストラリアのプロリーグに在籍した後、故郷ニュージーランドに戻りサッカースクールのコーチを務めた。そして、東京に渡ることになった。

「ニューヨークやロンドンに住むことも考えたけど、東京が一番刺激的だった。ファッション、アート、デザイン、そして音楽。僕にとって東京から生まれるものこそエッジであり、最も洗練されているように感じるんだ。日本人は、もっと言えば東京人は『何がクールか』を直感的に捉える能力があるんだと思うよ」

ジャケット6万6960円、カーディガン3万240円、シャツ2万1600円、ジーンズ2万8080円（すべてトッド スナイダー）、ニットキャップ8640円（トッド スナイダー × インバーアラン）、靴6万3720円（トッド スナイダー × サンダース）

Todd Snyder｜トッド・スナイダー
米アイオワ州生まれ。ポロ ラルフローレンのデザイナー、ギャップのディレクター、J. クルーのシニア・バイスプレジデントなど、メンズファッションにおける要職を歴任。2011年に自身のブランドをスタート。2014 年3 月、世界初の旗艦店を東京にオープンした。