三原康裕│日本モノづくり「第4回 和田メリヤス×新内外綿のスウェットパーカ」(4・最終回)
Fashion
2015年3月13日

三原康裕│日本モノづくり「第4回 和田メリヤス×新内外綿のスウェットパーカ」(4・最終回)

MIHARAYASUHIRO × Wada Meriyasu × Shinnaigai Textile

第4回 和田メリヤス×新内外綿のスウェットパーカ(4・最終回)

ファッションデザイナー三原康裕さんが、日本の誇る工場や職人を訪ね、日本でしかつくれない新しいモノを生み出す画期的な連載企画「MEANING MADE IN JAPAN MIHARAYASUHIRO(MMM)」。独自の開発力により激動の歴史を歩んできたナイガイテキスタイル。その技術力を目の当たりにした三原さんは、まさに世界で唯一といえるジャパンクオリティのスウェットパーカをつくりあげた。

構成・文=竹石安宏(シティライツ)写真=jamandfix

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一本の糸に込めた世界屈指のクオリティ

紡績とは繊維の状態から糸に紡ぐことだが、その工程は混打綿、カーディング(梳綿)、コーミング(精梳綿)、錬篠(れんじょう)、粗紡、精紡、巻糸といったさまざまな工程が必要となる。たった一本の糸を紡ぐにも、数多くの設備と膨大な時間が不可欠なのだ。ナイガイテキスタイルの工場内にはそれらすべての工程を行える設備が整えられているが、とくに充実しているのが混紡糸をつくるために繊維を混ぜる調合設備である。

2種類以上の繊維を混ぜてつくる混紡糸は、混ぜる繊維によって混状変化(異なる原料)、形状変化(異なる形状)、色状変化(異なる色)の3種類に大きく分けられる。これらの混紡糸をすべて製造できるメーカーは少ないが、ナイガイテキスタイルはそのなかのひとつなのだ。そうした紡績の全工程を見学した三原さんは、ナイガイテキスタイルの高い技術力を目の当たりにした。

三原 紡績の工場を見るのは今回が初めてなのですが、糸をつくるのにこれだけの労力が必要とは考えてもいませんでした。高いクオリティの糸ができるのは、ここまで手間をかけているからこそでしょう。それぞれの工程を見るとさまざまな可能性を感じるし、糸一本の見方が変わりました。

小川(ナイガイテキスタイル工場長) ひとつの混紡糸ができあがるまでに、各工程だけで約一週間は時間がかかりますからね。以前まではこうした紡績の工程は外部に公開していなかったのです。いずれにしろ、デザイナー自身がここまで見学にくることはいままでなかったですね。

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日本でしかつくれない唯一無二のスウェットパーカ

三原 僕の知る限り、海外のデザイナーの間でも日本の糸は評価が高く、日本に探しにきているようです。とくにコットンは洗うと馴染みがよく、耐久性も高いという評判を聞きますね。

小川 服地用の糸のクオリティは、編み立て性や織り立て性がもっとも問われます。服地にしたとき、いかにスムースになるかによって糸の良し悪しは決まるのです。そういった面では日本の糸は基準が厳しく、優れていると思います。

三原 糸も含め、日本には「海外製ならなんでもいい」という舶来主義のような風潮がまだありますが、国内でもこうした日本のモノづくりを見直すべきです。現在はブランドも安価なものから海外の高額なものまで数多く展開されていますが、同じようなクオリティのものでもブランドによって価格に大きな差があります。これは「ブランド」を乱用している結果であり、消費者からの信用や信頼も失っているように思うんです。だからこそ、僕は自分のブランドの目的を見失わず、消費者を裏切らないモノづくりをしていこうと思っています。そういった面でも、今回はとても勉強になりました。

このようにナイガイテキスタイルの見学を終えた三原さんは、同社がもっとも得意とするコットンの“杢糸”を今回のスウェット用に選択した。グレーとネイビーに染めたコットン繊維をそれぞれ12%ずつ均等に混ぜてつくられた杢糸だ。そんなナイガイテキスタイル製の杢糸を和歌山の和田メリヤスに送り、吊り編み機によってゆっくりと両面パイルに編み立てる。

出来上がったスウェット生地は、美しい霜降りの表情と驚くほど柔らかい両面パイルの優しい肌ざわりがマッチした唯一無二の生地となった。こうして日本が誇るニット工場と紡績工場の技術を最大限に活かした、日本でしかつくれないスウェットパーカはついに完成したのだ。

           
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