「Velnica」デザイナー・小林加奈、小林ゆかり、八月朔日けい子インタビュー(前編)
Fashion
2015年3月5日

「Velnica」デザイナー・小林加奈、小林ゆかり、八月朔日けい子インタビュー(前編)

2009-10秋冬 注目のファッションデザイナー特集
「Velnica」デザイナー・小林加奈、小林ゆかり、八月朔日けい子インタビュー(前編)

女らしさを取りもどせる、エレガントなルームウェア

いまや、毎月どこかの女性誌で特集が組まれるほどの人気になったルームウェア。そのブームの発信源となったのが、小林加奈さん、小林ゆかりさん、八月朔日(ほずみ)けい子さんの3人が手による「Velnica(ヴェルニカ)」だ。なぜ、ルームウェアを手がけようと思ったのか、デザイナー3人にお話をうかがった。

取材・文=津島千佳写真=原恵美子

私たち3人は、高校の同級生なんです

──みなさんは、もともとお友だちだったそうですね。

加奈 そう、高校の同級生だったんです。大学や就職はそれぞれちがう道に進んだんですが、食事や旅行を一緒にしたり、帰省したときに会ったり、交流はあったんですよ。それで30歳のときに、それぞれが積んだキャリアを生かそうとブランドを立ち上げたんです。

──ブランドを立ち上げようと言い出したのは誰ですか?

ゆかり 誰からともなく、ですね。加奈が女性誌の編集ライター、八月朔日がアパレルの企画・デザイン、私は若いときにモデルを経験したあと、海外ファションブランドで営業やプレス業務をしていて、みんなファッション畑と近いところで仕事をしてたんです。もともと3人ともファッションには興味があったし、好みも似てるから自然にブランドを立ち上げたって流れですね。

加奈 30歳で区切りもよかったんだよね。独り立ちできる時期にさしかかってて、「自分たちで表現できるものがほしいね」っていう共通の思いがあった時期でもあって。

──たとえば親友同士でもルームシェアなど、四六時中一緒の環境にいると関係が険悪になるとか、よく耳にしますが、ブランドを立ち上げて3人の関係性は変わりましたか?

ゆかり まわりからは結構そういう声もありましたが、とくに昔と変わりませんね。

加奈 最初は、周囲のひとから一緒に仕事をするのを反対されました(笑)。でも八月朔日と私はロンドンに一緒に留学していて、2年弱ルームシェアしてたこともあって、「大丈夫だろう」って結構、楽観的に構えてましたけど。

八月朔日 大人になる前からずっと一緒で、成長した過程をお互い知っているし。兄弟とか家族みたいな感じかな。

加奈 ケンカも1回もしたことないし、むしろ誰かが欠けても困る。それは仕事とは別に、単純に寂しいだけだったりするんですけど(笑)。

──デザイン作業は分担してされるんですか?

八月朔日 全部共同ですね。「こういうのをつくりたい」っていうのを、ブレストしながらつめていきます。

加奈 デザインするうえで主張し合うことはよくあることだけど、それはいいものをつくるための意見の出しあいなので、険悪になることはないです。こういう関係なので、1から10まで言わなくても、それぞれわかるんですよね。

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Velnica 2009-10 AUTUMN&WINTER COLLECTION

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Velnica 2009-10 AUTUMN&WINTER COLLECTION

忙しく働く現代女性だからこそ、自宅では女性らしい気分に浸ってほしい

──「Velnica」がデビューしたころは、とくにルームウェアが注目されていたわけではありませんでした。なぜ、ルームウェアにスポットを当てたブランドにしようと思ったのですか?

八月朔日 たしかにデビュー当時はルームウェアブランドってほとんどなくて、質のいいバスローブを探すと白いものしかないって状況で……。私たち個人としてもピンクやグリーンとか、もう少し華やかな色で、ポンポンとかかわいいディテールがついているものがほしいって気持ちがあったんですよ。

加奈 若いころなら安くてかわいいジャンクな部屋着でもいいけど、30代で一歩大人になったら、「もう少し質が良くて世界観のあるものが着たいね」ってところが発端ですね。

ゆかり “おうちでもセクシーに優雅に”ってコンセプトがあったので、シルエットや素材も透け感のある女性らしいものにこだわりました。

加奈 外で男性のように馬車馬のように働いて、家ではスウェットを着る生活だと、心まで男みたいになっちゃいそうでしょ? だから女心を取りもどせるようなルームウェアをつくりたいな、と。リラックスといっても、だらっとするのではなく、女性らしさを忘れないクリエイションを心がけています。

──デザインソースはどのようなものですか?

加奈 海外を旅すると、当たり前に思っていたことが、じつはちがったりするじゃないですか。そういう私たちが新鮮に感じたものをデザインに反映させています。外国の部屋の壁紙とか、子どものころから色を塗り替えて使いつづけていくインテリアとか、ヴィンテージのジュエリーや香水瓶とか……。そのあたりからは、よくインスピレーションを受けてます。

ゆかり モロッコの鮮やかな色づかいやデコラティブなニュアンスを落とし込むことも多いよね。

八月朔日 だから「Velnica」のアイテムって、単色のものがほとんどないんですよ。毎シーズン、色のコンビネーションを妥協せず追求しています。

──デザインするうえで、トレンドは意識しますか?

加奈 トレンドはすごく疎いですね、私たちは(笑)。それよりは、ヴィンテージのものや世界を旅したなかで出合った色彩の感覚を取り入れていくことの方が大切で……。

八月朔日 流行っているものをつくっていたら、商品ができたときには、トレンドが終わってるしね。

加奈 むしろ世間で流行っているものは、「Velnica」ではつくりたくないって思いのほうが強い。ハートや星のモチーフ、ラインストーンのものは、ほかのブランドさんがされているし、うちが追い求めるジャンルじゃないですね。

ゆかり 「Velnica」ってパステル調の色づかいのものが多いから、トレンドを意識しているように思われがちだけど、じつはそうじゃない。トレンドに迎合しないってところは立ち上げ当初から変わっていません。

加奈 それまで無意識に好きだったものが、ブランドの成長とともに、それがどんなテイストなのか3人のなかでどんどん鮮明になってきてるよね。

八月朔日 立ち上げ当初よりデザイン画を描くのも早くなってきたし(笑)。はじめはピンクといっても赤みがかったものか、青味が強いものか、それぞれ思い描いていた色合いがバラバラだったけど、最近はそれもずばり一緒になってきた。だんだん固まってきた感じですね。

ゆかり 「Velnica」にとって一番いいのはこの素材、色っていうのがすぐ判断できるようになったよね。

「Velnica」デザイナー・小林加奈、小林ゆかり、八月朔日けい子インタビュー(後編)につづく

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