「Kaon」デザイナー・米山 薫 インタビュー(前編)
Fashion
2015年3月19日

「Kaon」デザイナー・米山 薫 インタビュー(前編)

2009-10秋冬 注目のファッションデザイナー特集

みんなに支えられて生まれる、大人のためのロマンティックな服
「Kaon」デザイナー・米山 薫 インタビュー(前編)

大人ならではの甘さ──。
そんな言葉が「Kaon」のクリエイションにはしっくりとくる。オリジナリティを感じさせるデザインでありながら、着る女性を必ずかわいらしく演出する洋服はどのようにして生まれるのか。デザイナーの米山 薫さんに、原点を振り返ってもらった。

取材・文=津島千佳写真=原恵美子

洋服は、自分ひとりじゃ、つくれない

──米山さんは、もともとデザイナー志望ではなかったとか?

ええ。ものごころがついたときから服は好きだったので、服飾関係で働きたいとは思っていたんですが、とくに専門的な勉強はしなくて。学生のころにレイビームスでアルバイトをしたのがファッションのキャリアの原点ですね。そこで「Pippi」デザイナーの佐藤葉子さんとも出会ったんですよ。
その後、ユナイテッドアローズに移ってからも、販売の仕事はつづけていました。ただ、服が好きだからファッションに携わる仕事をしていたはずなのに、あるとき、急に不安に襲われたんです。「服が好きすぎたのかな、このままファッションの世界にいていいのかな」って。それでユナイテッドアローズも辞めてしまって……。

──いったん、服の現場からは離れたんですね?

そうなんです。グラフィックデザインの道に進もうと思って、デザイン系の専門学校に通ったんですよ。でもグラフィックデザインのことを学ぶにつれ、「どうせなら洋服のデザインをしたいなぁ」と感じることが増えてきて、改めて自分が服が好きなことを思い知らされたんです。
その後、3年ほどあるブランドのファッションデザイナーとして働きました。ほとんど独学に近いものでしたけど、やっぱり現場で吸収できるものは多くって、そこで服づくりのいろはを学びましたね。それから独立して、「Kaon」を立ち上げました。

──ごく自然な流れでデザイナーになったんですね。

服が好きだった結果、ですかね。でもどのブランドさんもそうでしょうけど、デビューしてからが苦労だらけで、最初はイメージどおりのものをつくるのがすごく大変で。私の出したデザインを製作行程に落とし込むと、イメージとちがうものがあがってくるんです。

やっぱり服って、自分ひとりじゃつくれない。いろんなパタンナーさんとつきあっていくなかで、いますっごく頼りにしているパタンナーさんと出会えたり、何度も工場さんに足を運んで、私のほしい生地をつくってくれるようになったり。商品になるまでに時間と多くの方からの協力が必要で、ひとに助けられたからいまの「Kaon」があるんですよね。

──服づくりは、みんなの力があってこそ、なんですね。

米山 薫さん

昔の作品を見るとイメージどおりにできていないのがよくわかるんです。ここもあそこも改善しなきゃ、っていうのが。まだまだだけど、ようやくイメージに近いものができるようになってきた感じかな。だから、いまのスタッフは信頼できるひとばかりです。

「Kaon(カオン)」レースジャケット5万9850円

コアな部分に、トレンドをくわえることの難しさ

──多くの人がかかわって生まれる「Kaon」の服ですが、米山さん自身、一番好きな作業はなんですか?

苦しいといえば、苦しいんですけど、やはりデザインが好きですね。それは私の仕事だし、デザインがないと服はできないし(笑)。逆に嫌いなのは生産(笑)。工場さんからの生地が減ってしまったんだけど、どうしようっていう相談とか。これだけはどうしようもないから、本当に困ります(笑)。

──たしかに(笑)。でも好きなデザインで悩むこともありますよね?

服をつくって販売している以上、バイヤーに認めてもらわないと、店頭には並びません。そうなると、自分の好きな気持ちだけを押し通すことはできないじゃないですか。
私のブランドだからコアな部分はしっかり通さなきゃいけないと思うけど、どのくらい自分を抑えて、どれだけトレンドを入れるかもかなり重要で、そのさじ加減にいつも悩みますね。個人的にはシンプルなのが好きだけど、それだとおもしろくないから、なにか遊びを入れなきゃな、って気持ちでデザインにはとり組みます。みんなが喜んでくれるかどうか心配で、デザインしているときは悶々としちゃうんですけど(笑)。

──クリエイションのイメージソースは、どのようなものですか?

私のデザインのベースって、「好きな素材をどう活かすか」が基本作業なんですよ。だから生地選びからはじまります。生地が見つかったら「その素材に合うアイテムはなんだろう」「じゃあ、そのアイテムに必要なディテールはなんだろう」って段階を踏んでデザインをつめていきますね。
デザイン自体は、次に来るトレンドを予想しつつ、好きなテイストを自分の引き出しから引っ張ってきます。だからどうしても私っぽくなっちゃう。自分の感性が70%、残りの30%にトレンドをスパイスとしてくわえていく感じですね。

──デザイナーとして、一番うれしい瞬間は?

私の服を着ているひとを見かけたときは、やっぱりうれしいですよ。あと、シーズンの出荷が全部終わった瞬間(笑)。そのときは、すでに次シーズンのことに取りかかってるんですけど、出荷が終わるまでは二足のわらじを履いてるみたいで気分が乗らないんですよね(笑)。

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