HYSTERIC GLAMOURデザイナー北村信彦の現在(1)
Fashion
2015年5月11日

HYSTERIC GLAMOURデザイナー北村信彦の現在(1)

HYSTERIC GLAMOURデザイナー 北村信彦の現在(1)

ブランド『HYSTERIC GLAMOUR』がスタートしたのは1984年。日本のヤング・ファッション界にDC(デザイナー・キャラクター)ブランドブームが巻き起こり、多くの若者が「ブランド」に目覚めた時期でもある。
そのデビューから来年で25周年。HYSTERIC GLAMOURとそのデザイナーである北村信彦は、まさに「転がる石は、苔むさず=Like a Rolling Stone」のように、時代の垢(あか)も付着させず、独特のポジショニングで、時代時代の若者から絶大な支持をうける。──2回にわたって、北村信彦の“いま”をストレートに聞いた。

まとめ=梶井 誠(本誌)photo by Jamandfix

音楽がスタンダードになっていくように、洋服にもそういうことがある

──『HYSTERIC GLAMOUR』誕生から来年で25年。なぜこんなに新鮮なイメージでいられるのでしょう

ブランドをはじめたときは、当時のいわゆるDCブランド、カジュアルブランドのイメージがどうしても強かったんですが、それから90年代の裏原宿ブームや、赤文字女性誌ブームやギャル文化などをへて生き残ってきたことで、独自のHYSTERIC GLAMOURのポジションができてきた。時間の経過とともに邪魔なイメージが消え去ってくれたことで、より明確なものづくりができるようになったんです。

──業界では、1ブランド20年限界説などといわれています。なぜHYSTERIC GLAMOURはサバイヴできたんですか?

当時の80年代前半にできたブランドは企業的な考え方からどうしても変貌せざるを得なかったり、ブームが去れば名を変え、品を替えしてきている。ぼくはそれがイヤなんですよ。
時代時代によって、浮気をしたいこともあるんですよ、もちろん。自分のキャリアから、「こういうことをやりたいな」という欲求もでてくる。でもね、そういうときに、店やスタッフが思いとどまらせてくれた。そうやって時代をクリアしていくことによって、音楽がスタンダードになっていくのとおなじように洋服にもそういうことがあるんです。

──ファッションマーケットやターゲットは意識しますか?

市場はもちろん変わってきています。HYSTERIC GLAMOURを84年にはじめたころは、10代から20代前半の客層で、10年間ぐらいはその層は変わらなかった。
70年代から80年代初頭にファッションに目覚めた人は、一生ファッションを引きずると思う。パンク・ムーブメントや『POPEYE』、『anan』などのメディアのフィルターを通ってきている世代は、いくつになろうがファッションに対する興味は薄れないんです。

──現在のマーケットについては?

メンズマーケットに関しては、いまは、30代中盤から上の男性が、服をちゃんと理解して楽しんでいる層でしょうね。10代、20代はギャル男的で、J-POPとかジャニーズとかが男性にとってもカリズマ、アイコン的になってきている。ブームとしてのファッションという意味では、ヒップホップ的なカジュアルが登場して以来、若者ファッションは皆無だと思う。

──そうやってお話を聞くと、継続はチカラなりって感じですね

そう、継続してきたことによっての、ぼくのまわりの人たちのブランドに対する評価が励みになっていますね。年をとって一度離れたお客さまの子どもが、HYSTERIC GLAMOURの子ども服を着てくれたり、また戻ってきてくれるのもうれしいことです。

10代、20代の気持ちを常にもっていたいという思い

──単刀直入に聞きますが、北村さんが枯渇しない理由は?

学生時代から、将来、自分が社会で成功して、たとえば社長になって、乗るクルマ、食べに行く店、身につけるもの……、世間一般が考える社長的な態度って、個人的に大きらいなんですよ。そういうふうになっていく自分が。
そういうふうになっていける人がうらやましい部分もあるんですけど、自分的にはそれは受け入れられないんですね。
怖いもの知らず、世間知らずで、どん欲にやっていた10代、20代の楽しかったその気もちを常にもっていたいというのがあるんです。

──25年間を振り返っていかがですか?

来年25周年を迎えますが、HYSTERIC GLAMOURをはじめたときの自分のまわりより、いまの自分のまわりのほうが、よき理解者が多いので、はじめたころよりはもうちょっと(笑)自信をもってできるようになってきているかな?

──ちょっと(笑)なんですか?

自分だけちがう方向に行っているかなという瞬間がどっかにあったりするんです。「このまま古くさくなっていくのかな?」とか。でも、ぼくより若い人にも尊敬できる人間ができてきて、そこで交流が生まれて、励まされたり、支持されたり、突き詰めていけば、人を選んでいる。こうやって長くやってこれるのは、人間関係ですよ。たとえばおなじことをやっていても、友人や、工場など、それでずいぶん変わるような気がする。

──つぎは、THEE HYSTERIC XXXについてうかがいます

           
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