HYSTERIC GLAMOURデザイナー北村信彦の現在(2)
HYSTERIC GLAMOURデザイナー
北村信彦の現在(2)
現在、web shopping rumors(ルモアズ)にて、ブランド『THEE HYSTERIC XXX』が販売されている。2003年にスタートした『THEE HYSTERIC XXX』について話を聞いた。
まとめ=梶井 誠(本誌) Photo by Jamandfix
素材とシルエットと縫製だけで勝負できるものがほしくなる
──THEE HYSTERIC XXXはメンズですが、2003年に立ち上げた理由から
いま、ウィメンズでは、『HYSTERIC GLAMOUR』と『Hysterics』があるんですが、たとえば10代に『HYSTERIC GLAMOUR』の服を着ていて、それから海外ブランドに興味が移って、30代半ばぐらいになって、クチコミで『Hysterics』を知って、「こういう服もつくってるんだ」と、大人になって戻ってきてくれるケースも多い。
それを考えたときに、メンズにもブランドの幅を広げるのに新しいものが必要になったわけです。
──それは、つくり手のデザイナーも年をとるということも含めて?
むかしからのファンが大人になってきて、同時にブランドと一緒に自分たちも年を重ねてきて、スタッフにもなにか新しい課題が必要だった。アイテム、素材、縫製……、学びきれていないものを学びたい、ワンランク上のものを追求することによって、自分自身もふくめて成長したかった。素材とシルエットと縫製だけで勝負できるものがほしくなったんです。ブランドというより、ひとつのテーマですね。
──外国人が『HYSTERIC GLAMOUR』に惹かれるのはなぜだと思いますか?
ぼく自身がアメリカ、イギリスの文化の影響が強くて、その文化に生きる人たちの冗談や、歌、映画、物語で育っているので、東京にいるぼくらが、一度受けた影響からひとつの答を出している。それを海外の人たちに受け入れられたときうれしいんですよ。面白がってくれたり、理解して受け入れてくれると、「間違っていないんだな」って。
65、66年のボブ・ディラン、75年のジョニー・サンダース
──THEE HYSTERIC XXXのテーマは?
基本的なテーマはHYSTERIC GLAMOURと変わりません。THEE HYSTERIC XXXは、ぼくが過去に憧れた60年代、とくに恋焦がれた65年から75年の10年間を表現しています。子どものときにカッコイイな、いつか大人になったらこういう格好がしたいなというのを思い出してつくっていますね。
──それは、たとえば?
65年、66年のボブ・ディランは、彼がエレキをもちはじめて、バンドとして演奏していた時期で、音的には彼自身がかなりパンク。『追憶のハイウェイ61(Highway 61 Revisited)』と『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム(Bringing It All Back Home)』の2枚のアルバムが大好きで、この2枚以外は入り込めないんですよ。
65、66年ごろに、ディランがイギリスにいたときに格好がたまんないんですね、かなりスタイリッシュで。サイズ感、アイテムの趣味、コーディネイト……、それはビートルズもストーンズもかなわない。
あとは、75年当時のジョニー・サンダースや、ファクトリーにたむろしていたアンディ・ウォホール、ヴェルヴェットアンダーグラウンド。THEE HYSTERIC XXXは、ぼくが憧れているミュージシャンからヒントを得ていますね。
アメリカ人が解釈したイギリスのテディ的な考え方がジョニー・サンダースで、アメリカから考えたブリティッシュファッションが、当時のボブ・ディランなんです。
──それはTHEE HYSTERIC XXXのカタログを見ても伝わってきますね
THEE HYSTERIC XXXのカタログは、最初ニューヨークに行ってロケハンしたんですが、面白い場所がなくて、コニーアイランドで撮影して、2回めはデトロイトで撮りました。最初からスタッフはモデルもおなじで、最終的に一冊にまとめたら、アメリカを横断するライフワーク的なカタログになっているかもしれません。
──THEE HYSTERIC XXXの今後の展開は?
アイテム的にはまだまだ発展途上なので、ご期待ください。
──ありがとうございました