小野瀬慶子 - 「The SECRETCLOSET」
大人のすてきな女性のための衣装箱
The SECRETCLOSET 小野瀬慶子インタビュー
ユナイテッドアローズのウィメンズのファッションディレクターである小野瀬慶子さんが、昨年秋に外苑前に自分のショップをオープンした。店名は「The SECRETCLOSET」。そのネーミングのとおり、大人の女性がリラックスして買い物できる空間が心地いい。
Text by OPENERSPhoto by Jamandfix
古いものと新しいものが生活のなかに自然に溶け込んでいる空気感を……
──キラー通りからちょっと奥まって、いいロケーションですね
ヘアサロン「Twiggy」のオーナーの松浦美穂さんと「なにか一緒にできたらいいね」と話していたんです。松浦さんのなかに、ヘアやメイクに服などもふくめたトータルビューティ的な発想があって、店という具体的な話になったのが3、4年前。もちろん、私のなかにも潜在的にショップをやりたいという思いはありました。
──それで「Twiggy」と「The SECRETCLOSET」はとなり同士なんですね
ええ、松浦さんはサロンという自分の場所をもちながら、コスメブランドとの仕事もされていて、その仕事のしかたが理想的なんです。それを見ていて、自分も拠点をもちたいと思いましたね。
──とても静かで、外苑前じゃないみたいです
物件探しは難航しましたが、表参道などよりもう少し大人っぽい場所に……と、時間をかけて探しました。私はロンドンで生活していて、あの古いものと新しいものが生活のなかに自然に溶け込んでいる心地よさが好きなんです。その空気感を表現したいと思い、できるだけ内装はシンプルにして、新しいビルですが古い匂いをどう出すかにこだわりました。家具類はすべてオーダーです。
──客層はいくつぐらいですか?
「Twiggy」のお客さまにはとてもすてきな40代、50代の女性が多いんです。そういう方々にファッションを提案できたらという思いがスタートのきっかけです。
──いわゆる、ファッションを見る目をもった女性ですね
そうですね。若い人だと、人から自分がどう見えるかという視点でスタイリングを考えることは重要だと思いますが、30代、40代の女性は、自分が気持ちいいというのが大切で、さらにその場にふさわしいかというのも重要になっていきます。そういう方は、素材の良さにとても敏感ですね。最高の糸を使ったカシミアのニットは、シルエットやディテールにほんの少し“いまっぽさ”が入ることで、着こなしに新しさを加えてくれます。
たくさんはいらない。気持ちいいものを、妥協せずに買いたしたい女性たちへ
──小野瀬さんは仕事柄たくさんの服やスタイリングを見てきていますが、自分の好きなものはなんですか?
私の永遠はシャネルですね。50年代、60年代の白と黒のシンプルなコレクションが好きです。あの服を辛口に着ているシャネル本人の写真は、いつ見てもすてきだなと思いますね。ユナイテッドアローズに入る前、はじめてニューヨークに行ったときに、バーニーズ ニューヨークの最上階のフロアにシャネルのコーナーがあって、黒と白だけのセレクトで、それを見て衝撃を受けたんです。
──バイイングの基準を教えてください
ファッションの情報源は、新聞、雑誌、本、インターネット、コレクション、展示会、ARTのEXHIBITION、それに知人や友人のネットワーク、街を歩いている人のウオッチングもそうですね。バイイングで最初にピックアップするのはまず直感的に「いいな」と思うものです。つぎに自分が着たいもの、お客さまに似合いそうなものですね。それからプライスを聞いて、おなじブランドのなかで調整して仕入れます。
──その「いいな」というのは、どこに感じるのでしょう
なにで判断するの? と聞かれると難しいですが、そのものにエネルギーを感じるかでしょうか。
つぎの時代を切り開いていくようなエネルギーですね。それはつきつめると、服の完成度や新しいコンセプトということもありますが、やはりつくっている人ですね。
──デザイナーということ?
デザイナーと話をしていると、なにか感じるものがあるんです。
たとえば、情熱とか信念とか。いまでは大きくなったブランドや有名デザイナーでも、みな最初は制約のなかでファーストコレクションから工夫しながら地道にがんばってきて、その結果として売上げや認知度がついてくるわけですから。
──小野瀬さんも「The SECRETCLOSET」でオリジナルをつくられていますね
はい。デザインが入ったコレクションブランドはその新しさに買い付ける楽しさもありますが、じつは、それに加える黒のシンプルなニットなどに買いたいものがないんですよ。
今年のスカートのシェイプに合うニットや、クオリティの高いもの、日本の女性にとってバランスの良いものなど、プライスもふくめてオリジナルでつくるしかない。
──それは小野瀬さんの考え方の基本にコーディネイトがあるということですね
単にファッションというのではなくて、毎日自分がいい気分で仕事に行くとか、生活するとか、人に会うというのが、大人の着る服だと思います。「The SECRETCLOSET」は、いい意味でわがままを言って、リラックスしてお買い物のできる空間でありたいし、なんでもあるよりは、自分の好きなモノだけあるという環境で買い物をするほうが幸せなんです。今後は、よりお客さまの趣味や趣向に沿ったかたちでのパーソナルな提案ができるスタイルをバイイングしたり、オリジナルでつくっていきたいですね。
──ありがとうございました