Jas M.B.|デザイナー ジャス・センビ インタビュー
Jas M.B.|デザイナー ジャス・センビ インタビュー
英国回帰したJas M.B.
イギリスを牽引するバッグブランドのいま
土曜日の昼下がり。メインストリートの人通りはまだまばらにもかかわらず、表参道の奥まった場所にある「DOORS By Jas.M.B. Tokyo」にはひっきりなしに人が訪れる。そして来訪者の誰もが、店内にいるターバンを巻いた外国人に話しかけ、ときおりサインを求めたりしながら、彼との談笑を楽しんでは帰っていく光景が繰り返される。彼の名前はジャス・センビ。英国生まれのバッグブランド、Jas.M.B.のデザイナーである。この日は「DOORS By Jas.M.B. Tokyo」で催されたトランクショーのために、イギリスから駆けつけたのだ。
Photographs by JAMANDFIXText by TOYODA Koji
2012年秋冬のテーマはルーツである英国
「渋谷の街を歩いていたら、私のバッグを背負った人とすれちがったり、私がJas.M.B.のデザイナーだと承知のうえで声をかけてくる人がいたり、東京の街はやっぱりエキサイティングでした。トランクショーでもおおくのファンと交流できたのは楽しい体験でしたし、なによりもユーザーの“生”の声を聞けたことは本当に勉強になりました。私にとって日本を訪れるというのはとても大事なことなんです」
さる5月19日(土)に東京・神宮前の「DOORS By Jas.M.B. Tokyo」で、そして5月20日(日)には福岡の「DOORS By Jas.M.B. Fukuoka」にて開催されたJas.M.B.のトランクショーには、多くのファンが詰めかけた。2012年春夏の最新作の代わりに店頭に並べられた、2012年秋冬のフルラインナップを、ジャス・センビ氏が自ら商品説明をおこなった。
「2012年の秋冬は英国がテーマ。さまざまな色合いのタータンチェックから落ち着いた色合いのツートーンカラーまで、クラシックで英国的なデザインを、カウハイドレザーやヘアポニーという上質な素材に落とし込んだアイテムを手がけました。とくに、ヘアポニーにタータンチェックをプリントしたシリーズはあたらしい試みで、少しちがったJas M.B.像を多くの人に印象づけることができるはず。なかでも私のお気に入りは、ツートーンのショルダーバッグ。素材、カラーリングのバランスが絶妙で、フロントのゴールドプレートが上品さを際立たせてくれています」
文化レベルでも勢いを増すイギリス
どうして今回のテーマに英国を選んだのであろうか。
「今年はこれからロンドンオリンピックが開催されるというだけあって、イギリスのどの街も人も、みんな元気。私のオフィスからほど近い街、イーストロンドンのストラットフォードにはオリンピックスタジアムが建設されたんですが、工事前と完成後では本当に活気がちがう。そこに住まう人びとや土地に、かつてないエネルギーがみなぎっているように感じます。それはイギリスのクリエイティブなシーンでも一緒です。ポール・スミスのような大御所デザイナーは脂が乗り切ったすばらしい洋服を作っているし、ルー・ダルトンのような将来を嘱望されている若手デザイナーも続ぞくと出てきている。オリンピックがきっかけとなって、イギリス全体の勢いが文化レベルでも増しているようにおもいます」
とくにトップマンがスポンサードするインキュベーション機構「NewGen Men」に所属するルー・ダルトンは、ジャス・センビ氏も注目するデザイナーのひとりだという。
「クルチアーニなどで経験を積んできたルー・ダルトンは、ビスポークテイラーリングとパターンカッティングに優れたデザイナーです。英国的なテーラードに、エッジな要素を組み合わせた、一筋縄ではいかない独特なデザインが個人的に好みで、彼女とのコラボレーションも現在進行中です。6月15日から6月18日にかけて開催されるロンドンファッションウィークで初お披露目となるでしょう」
ブランド初となるチャリティアイテムもリリース!!
両者のコラボレーションに期待が集まるが、今季リリースの、Jas.M.B.初となるチャリティアイテムにも注目したい。
「チャリティプロジェクトはJas.M.B.としても私自身としても、いつも応援してくれるファンへのささやかな恩返し。クラックレザーとカウハイドレザーをミックスしたトートバッグを1型リリースする予定です。私のアイテムを愛するすべての人に持ってもらいたかったので、男女関係なく使えるユニセックス仕様にしています。クラシックな落ち着いた英国調のツートーンカラーもポイントですね」
通常ならば5万円はするこのトートバッグを、7月下旬に1万7850円(日本国内での価格)で販売。そして売上金の15%を以下のNPOに寄付するとのこと。ひとつは約400万人の子供の教育、生活をサポートしている機関「Plan UK」(http://www.plan-uk.org/)。もうひとつはイーストロンドンの水力発電所の跡地を拠点に、若いアーティストの制作活動をサポートする「Wapping Project」(http://www.thewappingproject.com/)である。
こちらは現在「DOORS By Jas.M.B. Tokyo」と「DOORS By Jas.M.B. Fukuoka」でオーダーを受け付けている。そしてこのバッグを予約すると、ある“宝くじ”を購入したことになるという。その宝くじとは――。
「そう、このチャリティバッグを購入していただくと、宝くじのようなチャリティ企画が盛り込まれています。1等になると、私が所有するオールドポルシェをプレゼントするというものです。グローバルで6000枚のチケットを販売する予定であり、チケット売上の全額を寄付します。日本では今回紹介したチャリティトートバッグをオーダーいただくと、この“宝くじ”を購入したことになり、自動的に抽選に参加できる、というわけです」
抽選は10月10日におこなわれるWapping Projectのパーティにて。景品は、1等がジャス・センビ氏のポルシェ911(1973年)、2等はバージンアトランティックの航空券、そして3等がJasM.B.の「Large Move On Bag」の予定だ。
コラボレーションやチャリティなど、自身のクリエイションのアウトプットの幅をさらに広げるジャス・センビ氏。彼がこれからどんなものを作り、世界中の人びとに提案していくのか。いちファンとして楽しみで仕方がない。
DOORS by Jas M.B. Tokyo
東京都渋谷区神宮前5-39-2 Fes神宮前5 1F
Tel. 03-6419-7881
営業時間|11:00~20:00
無休
DOORS By Jas M.B. Fukuoka
福岡県福岡市中央区今泉2-1-10
Tel. 092-732-8819
営業時間|11:30~20:00
無休
JAS SEMBI|ジャス・センビ
イギリスで育ち、家具職人であった父の影響を受けデザインをはじめる。2000年、自身のブランドJas M.B.を設立。以来デザイン、素材など、つねにあたらしい試みをつづけており、ビンテージレザー、クラックレザーなどを使った味のあるモデルを多数生み出している。