DAMIR DOMA|ファッションデザイナー ダミール・ドマ インタビュー
DAMIR DOMA|ダミール・ドマ
高い独創性が注目を浴びる!
そのクリエイションの源泉(1)
3月16日、東京・銀座にグランドオープンをはたしたドーバー ストリート マーケット ギンザ・コム デ ギャルソン(以下DSM)。コム デ ギャルソンをはじめとして、ルイ・ヴィトンやセリーヌといったラグジュアリーブランド、アダム キメルやトム ブラウンなどのデザイナーズブランド、さらにはシュプリームなどのストリートブランドまでさまざまなファッションがひしめきあう注目のスポットだ。そんなDSMの3Fにはある気鋭デザイナーの服がセレクトされている。ダミール ドマ。2007年にパリコレクションデビュー以来、洗練された新時代のモードファッションを担う若手として注目されている。そんな彼が2年ぶりに来日した。
Photographs by JAMANDFIXText by TOYODA Koji(OPENERS)
スペシャルアイテムを用意
「今回はDSMの新店舗に置いてもらうことになった僕のコレクションを見るために来日しました。レセプションパーティに招待されて、はじめてショップを訪れたんですが、とにかくすばらしい。僕のスペースはもちろん、他ブランドのショップインショップもとても刺激的。久々に日本に訪れて、原宿、渋谷や青山などを見てまわりましたが、そこで印象に残ったお店が少なかっただけにとても面白かった。最近どこか停滞気味な日本のファッションシーンを盛り上げるのは間違いないでしょう」
なかなか手厳しい彼は絶賛するDSMのオープンを祝すために、とっておきの限定アイテムを用意。オープン初日から2012春夏のメンズ・ウイメンズコレクションとともに販売した。
「来日した理由のひとつは、DSMのために準備したスペシャルアイテムをもってくることでした。シャツ1型とカットソー3型。とくに肌触りの良いジャージー素材を使ったカットソーは世界中で人気が高く、まだ僕のことを知らない人にも上質な着心地を味わってもらいたくてもってきたものです。ぜひ気にいってもらえるとうれしいですね」
じつはダミール ドマとDSMの関係性は深い。今年の2月24日(金)から1ヵ月間、ドーバー ストリート マーケット ロンドンにおいて、1Fのショーウィンドウを大々的に使って、自身初となるインスタレーションを展示。洋服という枠に収まりきらない彼のクリエイティビティがいかんなく発揮された。
「DSMは常日頃から僕のことを気にかけてくれていましたが、まさかこんなにもフィーチャーしてくれるとは思いませんでした。とても光栄なことです。その感謝の意も込めて、この展示会ではシリアルナンバー入りのクラッチバッグをはじめとしたスペシャルアイテムを数点つくりました。そして、僕のもてるクリエイションをお店に来た人が肌や眼で感じ取れるようにと、とくに展示方法やディスプレイにはこだわりました」
ファッションという範疇を凌駕し、さらにその先……へと向かうダミール・ドマ。はたして彼のインスピレーションの源とはいったいどんなものなのだろうか。
DAMIR DOMA|ダミール・ドマ
高い独創性が注目を浴びる!
そのクリエイションの源泉(2)
クリエイションに刺激を与えた、ロドニーとの出会い
「僕のひらめきはいつも異文化に触れることから生まれてきます。それはとても興味深いアジアの文化であったり、それとは真逆の進化を遂げたアフリカの文化。繊細さと野蛮さ。そうしたものに触れるとなぜだか創作意欲が湧いてくるんですね。そして、それらをミックスすることが僕の個性であり、これからも変わらず目指すべきところです。もちろん、音楽や本、映画などからも刺激されることも多いですが、具体的にこれというのはありませんね」
そんな彼のアイデアソースや美的センスを具現化するのが、この春パリにオープンするダミール ドマの旗艦店だ。偶然にもコム デ ギャルソンの並びという絶好の立地に建つ同店は、同ブランドのメンズ、ウイメンズのほかに、彼のセカンドライン、サイレント ダミール ドマもラインナップされるという。
「お客さんに、そこに置かれている洋服たちの背景、そして僕のセンスを知ってもらいたいと思っています。だから、さまざまな本がディスプレイされ、店内のBGMも、壁に飾られたアートピースもすべて僕のコレクションにおける大切なモチーフです。多くのデザイナーが自身のインスピレーションソースを隠そうとするなかで、僕はありのままをさらけ出すことで、多くの人にダミール ドマをより深く知ってもらいたいんです」
それをかたちにしたのは、スキンケアブランド、エイソップのメルボルン店の斬新なプロデュースで知られる建築家、ロドニー・エグルストンだ。彼はダミール・ドマといクリエイターが内包するイデオロギーを最善といえるインテリアで表現した。
「彼との仕事はとても刺激的でした。というのも彼と僕はなにもかもが違う。お店をつくるにあたって、いろいろなタイプの建築家や空間デザイナーに会いました。そのなかには僕と感性や考え方が近い人もいましたが、あえて、そのタイプの人間を選ぶことはしませんでした。どうしてかって? 完成予想図を簡単に想像できたらつまらないじゃないですか。ロドニーは見込んだとおりのサプライズをぼくに与えてくれました。だれもが創造しえなったお店となることは間違いない。このインタビューを読んでいる人にかぎらず、パリに足を運んだあらゆる人に立ちよってほしいですね」
自身初となる旗艦店ができ、表現の場所を着実に増やしつづけるダミール・ドマ。彼のクリエイションはこれからさらに深みを増し、研ぎすまされていくであろう。では、もっともこだわっていることは?
「僕がつねに意識しているのは、これまでにないものをつくるということです。それは洋服もおなじで、既存のものに手をくわえてなにかをクリエイトするのではなくて、過去にとらわれないあたらしい発想をかたちにしていくこと。それが僕を含めた若手デザイナーの使命だと考えています。50年後も、100年後も、モダンさを失わないタイムレスな洋服。これからもそうしたものをつくっていきたいと思っています」
ダミール ドマ。次世代のクリエイティビティをあなたの眼でぜひ確かめみてほしい。
DAMIR DOMA|ダミール・ドマ
1981年クロアチア生まれ。ミュンヘンのデザイン学校に進学したあと、ベルリンでファッションを学び、アントワープへ拠点を移す。ダーク・ショーンベルガー、ラフ・シモンズのもとでアシスタントとして経験を積む。2006年にダミール ドマを立ち上げ、2008S/Sパリメンズコレクションにてデビュー。その独創性に富んだコレクションは、スタート時から多くの話題を呼んだ。ヨーロッパでもっとも注目を集める気鋭のデザイナーだ。