海外で爆発的人気。アート界を騒がせる Aruta Soupのルーツとは? | MEDICOM TOY
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2022年3月24日

海外で爆発的人気。アート界を騒がせる Aruta Soupのルーツとは? | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

日本人アーティストAruta SoupのBE@RBRICKが登場

ロンドンのグラフィティ文化に影響受けアートを始め、現在もストリートカルチャーを背景に活動を続けるAruta Soup。世界的に高い評価を受ける彼のBE@RBRICK発売を記念して、メールインタビューをおこなった。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

BE@RBRICK Aruta Soup 100% & 400%

ロンドンのストリートでグラフィティの才能を開花させ、日本帰国後は多数のアパレルブランドにも作品を多数提供。近年はウサギのオリジナルキャラクター「ZERO」が国内外で大きな反響を呼んでいる日本人アーティスト、Aruta Soup。
壁画、絵画制作を通じて数々の名だたるアートウォールを手がけ、独特なターコイズカラーやディフォルメされたキャラクターたちは人々の心を掴み、今年1月6日~3月31日には香港のLucie Chang Fine Artsにて最大規模の個展"MAD TEA PARTY"を開催。中華圏での人気の加熱ぶりは今後のアートシーン全体を占ううえでも注目すべきといえよう。
今回、メディコム・トイとの初コラボレーションとなるBE@RBRICKが100% & 400%で登場することを記念して、現在に至るまでの背景をうかがった。
Aruta Soup
アルタスープは、アニメ⽂化、イギリス特有のブラックジョークをミックスしたストリートアーティストとして知られている。複合化された社会とそこに住む⼈々の⼼理状態、タイムリーな問題についての対話を現代社会におけるコンテンポラリー・イコンとして神経質な線で描写している。作品に頻繁に登場する包帯を巻いたウサギは、彼が⽣きる混沌とした暴⼒的な世界の反映であると同時に、傷つきながらも再⽣を望む彼の魂の形でもある。
17歳で渡英、イーストロンドンにおけるグラフィティ、クラブカルチャーを吸収しつつ現在のスタイルを構築する。2012年に帰国後渋⾕⻄武における展覧会、台湾、⾹港、中国杭州での⼤型個展、数々のアートフェアへの参加、⽇本国内のみならず世界各地に壁画を制作するなど多岐に渡って活動している。2022年8⽉には中国北京での個展開催を予定している。
2009年 Camberwell College of Arts in London BA Illustration卒
2018年5⽉ フランスのランス市グラフィティフェスティバルへの招待出演
2018年7⽉ ⻄武渋⾕店にて個展開催
2019年6⽉  ⾹港の Lucie Chang Fine Artsギャラリーにて個展を開催
2020年6⽉  ⾹港⼤館當代美術館にて個展を開催
2021年3⽉20⽇ 中国杭州に新設されたINXXMARKETにて個展を開催
2021年9⽉  INXX ×萌奇× ARUTA SOUPブラインドボックス発売開始
2022年1⽉~3⽉ ⾹港にて最⼤規模の個展を開催
──いつ頃から絵を描くことやアートに興味を持たれたのでしょうか?
父親がアーティストということもあり、絵を描くことが当たり前の様な特殊な環境であったため、自分自身はいつから絵を描き始めたのか、はっきりとした記憶がありません。母親の話によると、赤ん坊の頃まだ歩き始める前から父親と並んで絵を描いていたとの話です。
父の仕事場が幼少期の遊び場でした。家はアートだらけですし、子供だから当然といえば当然なのですがめちゃくちゃなことをやっていました。父の作品に自分で切り絵した絵をぺたぺた貼ってしまったり。それを見て父が嬉しそうにしていたのを覚えています。
他にも、うちにはいつも何をやっているのか分からないミュージシャンや詩人とかダンサーとかヒッピーくずれみたいな人たちが頻繁に出入りしていて、言葉や倫理観などは彼らから教わりました。今思うとかなり滅茶苦茶だったと思います。完全にナチュラルボーンです。
──2004年に17歳で単身渡英された当時のヴィジョンを教えてください。
まず、高校の頃にスケッチブックを一冊持ってロンドンに行きました。セントラルセイントマーチンズの教授にスケッチブックを見せたところ、奨学金を大学側が負担するのでぜひうちに入学してくれと言われ、高校を卒業した2日後に本格的に渡英しました。
ただ、セントラルセイントマーチンズには一年程通ったのですが、エリート志向が全く肌に合わず、転学してキャンバウェルカレッジオブアーツに行きました。
──ロンドンを選ばれた理由は?
近所によく遊んでくれたロックをやってる兄貴みたいな人がいて、彼は建築事務所で働きつつDJをしていてロンドンと日本を行き来していたんです。
日本に帰ってくるといつも向こうで流行っている音楽を教えてくれて、小学校の時に聴いたProdigyには後頭部をぶん殴られたような衝撃を受けたことを覚えています。なんだこれは! みたいな。元々ダークなものが好きだったので、しっくりきました。
他にもSKINS、PUNKなどのユースカルチャー然り、ロンドンは新しいカルチャーが生まれる場所として特別な憧れがずっとあったんです。そこからアルバイトでお金を貯めて高2の時ロンドンに遊びに行ったのですが、今度はクラブカルチャーとスクワッドパーティーに出会ってしまって。
当時はドラムンベースとブレイクビーツの全盛期で、Tubeが走る鉄橋下や廃墟にサウンドシステムを持ち込んで毎晩パーティーやっていて、それにもバチバチに喰らってしまって。これはもう自分はここに来るしかない! と思ったんです。
──プロフィールにはロンドン東部のグラフィティに影響を受けたとありますが、当時のロンドンのグラフィティ事情を教えてください。日本のグラフィティと、どんな違いがありましたか?
今では考えられないと思うんですが、当時のイーストロンドンってまだバンクシーのグラフィティがケバブ屋のルーフトップや鉄橋とか、そこらじゅう普通にあったんです。へー、カッコいいなくらい。ファーストコンタクトはそんな感じでした。
日本はまずグラフィティカルチャーの土壌が全く肥えていなく、リーガルウォールが存在しないのでスキルを上げるにはイリーガルで活動するしかありません。なので、日本で活動しているグラフィティライターはその行為をやっていたとしてもやっていないというしかありません。
また、大きな違いでいうとロンドンは街中にピース(4色以上を使用し時間をかけて描いたマスターピースのこと)がありますが、日本には上記の性質により街中ではスローアップ(2色以下で描かれたレター)しか見ることが出来ません。
もし日本でクオリティの高いマスターピースを見ようとしたら、廃墟か誰の目にもとまらないアンダーグラウンドに描くしかありません。ロンドンにはリーガルウォールが沢山あるため練習できる環境があります。
──イギリス時代は主にどのような活動をされていたのでしょうか?
キャンバウェルカレッジオブアーツ在学中からFar East Underground Resistanceっていう仲間がやっているベースミュージックのクルーがあって、僕はそこでずっとイベントのフライヤーや大判ポスターをデザインしていました。
夜な夜なバンで繰り出してウィットペーストで街中にペタペタ貼ったり、仕事というよりも全部遊びの延長線上でお金はまったくなかったですが、とにかく毎日が最高に楽しかったです。
卒業後はフリーランスとして活動を始めて雑誌のイラストの仕事を貰ったり、自分の絵を描いてチャンスがあれば発表していました。
初個展はブリックレーンにあるLCB SulfStoreというスケーターショップでやらせてもらえることになり、それをトリガーにCARGOという世界的に有名なクラブの壁画を描けることになりました。自分の壁画の隣にはシェパード・フェアリーのピース、エントランス側にはバンクシーのピースもあり、日本人として初めて同じ店内に壁画を描かせてもらえて光栄でした。
──作品をアピールするために心がけたことや計画したことはありますか?
自分の活動に計画性は一切ありませんでした。しかしながら今思うとただ遊んでただけに思われるかも知れませんが、20代前半は絵を毎日必ず描きまくっていて、それが今の自分を形成し、自信にも繋がっています。
──帰国して日本で活動しようと思った理由はなんだったのでしょう?
ロンドンには8年くらいいて、その時点で25歳くらいですかね。ずっとロンドンっ子だったので、自分は日本人なのに日本との接点が一切ないことも寂しかったし、パーティカルチャーにも段々飽きてしまい、日本で活動してみるかと思って東京を拠点に移しました。
──これまで影響を受けたアーティストは?
時代ごとによって影響を受けたアーティストも移り変わっています。奈良美智さんの描く子供の可愛いんだけれど毒気がある表情に影響を受けました。ダミアン・ハーストのホルマリン漬けの真っ二つに割れたサメを見た時は、こんな悪趣味でグロテスクなのにすごく美しくて衝撃を受けました。
──創作において、どんなものからインスピレーションを得ることが多いですか?
色々な出来ことからインスピレーションを受けていますが、その時の自分の気持ちに正直になるように心掛けています。大切な友人が死んでしまってとても悲しいとか、イライラしている時は瞑想している時の脳の波長を捉えてバックグラウンドに描いてみたり。
自分は結構巫女体質なので、気を抜くとあっという間にありとあらゆる情報をアンテナからキャッチしてしまい飲み込まれてしまうので、SNS然り情報の遮断が大変です。特に東京は余りにも情報過多なので、遮断の仕方が上手くなったと思います。
──アート以外に興味があることは?
音楽です。絶えず聴いてます。漫画も映画といった総合芸術も大好きです。基本的にインドアな趣味が多いです。あと動物が大好きです。彼らは自分の本能に正直で気高く憧れます。
──Aruta Soupという名前の由来を教えてください
Arutaは昔、自分で適当につけて、そのまま呼ばれてます。Soupはロンドン時代にホームパーティーでよく圧力鍋でお手製のスープを作っていたんです。自分では結構美味しいと思っていたんですが、後から友人にAruta Soup is really bad tasteだと言われて。そのフックが頭に残っていて今に至ります。
あと、僕はねこぢるさんの大ファンでAruta Ziruっていうのもいいなと思っていたのですが、何か語感が気持ち悪いなと思って、Soupがしっくり来ました。
──海外でのファンはどういった方が多いですか?
絵画は中華圏の超富裕層の方ですが、プロダクトは若い世代の方も多いです。
──アパレルブランドとのコラボレーションも多いですね。
最近だと、自分の「ZERO」という名前のウサギのキャラクターが『INXX』という中国のハイブランドとアーティストコラボレーションすることになりました。ありがたいことに中華圏で人気になり、アパレルだけでなく、バスケットコートやスニーカー、生活雑貨全般になり、それがそのままおもちゃになって中国で発売されています。オリジナルキャラクターがあることが強かったのかもしれません。
──コラボレーションの面白さはどこにあると思いますか?
自分の知らない所でどんどん情報が広がることに面白さを感じます。
中国のKOL(インフルエンサー)は規模が日本と全然違ってフォロワー数1000万人単位ですが、そんな方が一度もお会いしてないのに自分の名前を取り上げてくれて、それが人づてに情報として入って来たりで面白かったです。
出来上がったプロダクトもそうですし、フィードバックだったりも自分の想像を飛び越えてくることがあるのでそこが楽しいですね。え、そこに刺さるの!?みたいな。
──メディコム・トイとの出会いについて教えてください。
不思議なことに赤司さんのメディコム・トイさんとは、映画『少女椿』(16年)で関わりがあったんです。僕が映画の中に登場する絵を描いて、メディコム・トイさんが映画のおもちゃを作っていました。ご縁があって今回のプロジェクトになりました。
今後もメディコム・トイさんとは、おもちゃやプロダクトの開発をさせて頂けると嬉しいです。勝手な希望ですが。
──BE@RBRICKのことはご存知でしたか?
もちろんです。有名なプロダクトですので色々な所で見かけていましたし、幼少期レゴブロックで街一個分くらい作っていたのでフォルムにシンパシーを覚えていたんです。今回コラボレーションさせて頂けて光栄です。
──今回発売される「BE@RBRICK Aruta Soup 100% & 400%」の制作で苦労した点を教えてください。
正直言いますと、今回のベアブリックのデザインはメディコム・トイさんに手がけて頂いたので、私の苦労は一切ありませんでした。
さきほど質問にあったコラボレーションの面白みにも繋がるのですが、私自体がデザイナーとしての一面も持っているので、アーティストがプロダクトを作る場合、余計なエゴが出てしまったり客観視が難しくなる場合があります。なので、外部のデザイナーにお任せしたほうがいいものが出来上がってくると、今までさまざまなクライアントとコラボしてきた体感で理解しています。
──完成したいまの感想はいかがでしょうか。
最高潮にハイプでハッピーな気持ちです。本当にありがとう御座います!
BE@RBRICK Aruta Soup 100% & 400%
サイズ|各全高約70mm/280mm
価格|1万3200円(税込)
購入方法|メディコム・トイ直営各店舗及びオンラインストア各店、他一部店舗にて発売予定。2022年3月24日(木)00:00~2022年4月10日(日)23:59、MCT TOKYOにて受注を承ります。
発売日|2022年8月発売・発送予定
※監修中のサンプルを撮影しております。発売商品とは一部異なる場合がございます。        
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