ヒット作が洋服である必然がなくなった時代、その先。STYLEVOICE.COMリニューアル記念鼎談 | STYLEVOICE.COM
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2021年4月26日

ヒット作が洋服である必然がなくなった時代、その先。STYLEVOICE.COMリニューアル記念鼎談 | STYLEVOICE.COM

ヒット作が洋服である必然がなくなった時代、その先。STYLEVOICE.COMリニューアル記念鼎談(後編)

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

新たなコンソーシアムだからできる商品とは?

2019年11月にマッシュホールディングス、JUN、デイトナ・インターナショナルの3社で立ち上げたECモール「STYLEVOICE.COM(スタイルヴォイス ドットコム)」が、この春マッシュホールディングス、JUN、サイバーエージェント、メディコム・トイの4社の出資で再始動となる。昨年のコロナ禍においても好調な売り上げを記録したスタイルヴォイスが、今回のリニューアルによってどんなコンテンツを提供してくれるのか。スタイルヴォイス片山裕美社長、マッシュホールディングス近藤広幸社長、メディコム・トイ赤司竜彦社長による鼎談の後編。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

サプライズに満ちたものづくりを提案していく

赤司 こうしてお話をうかがっているだけで、いろんな新しい企画が考えられそうですね。今回のこのコンソーシアム(共同事業体)の立て付けである、片山社長がいて、近藤社長がいて、JUNの佐々木社長がいて、サイバーエージェントの藤田社長もいらっしゃる。おもしろい方たちの作る会社にお声掛けいただいて光栄だなと思いつつ、じゃあそこから何を作ろうかと。
毎月たくさんの商品を出させていただいている中、私どもの商品自体は半分以上が「D to C(ダイレクトトゥーコンシューマー)」なので、もちろんスタイルヴォイスさんにもきちんと供給しつつ、それ以外に「このコンソーシアムだからこそできる商品」を開発していきたいというのがまず念頭にあります。実際、近藤社長とは既にいろいろご相談させていただいているところです。
近藤 どういうものになるか、ぜひ期待していただきたいです。
赤司 考えてみるとメディコム・トイで25年間仕事をして、「点と点をつなぐ作業」が一番得意だなと思っていて。「そんなところから新しいマーケットって創出できちゃうの?」みたいな掘り起こしがすごくおもしろいんです。
さっきのジェラート ピケの話もそうですし、片山社長がインフルエンサーの皆さんと作られている『Stylevoice for xxx(スタイルヴォイスフォー)』もそうですけれども、「そこからこれ作る?」みたいなサプライズに満ちたものづくりをたくさんご提案できたらいいなと考えています。
片山 スタイルヴォイスでも、スタート時からメディコム・トイのBE@RBRICKは人気が高いですよ。
赤司 この1年、世界規模でBE@RBRICKに対するご要望やリクエストは増えましたね。例えば、パリにあったセレクトショップ、『Colette(コレット)』のクリエイティブ・ディレクターを務めていたSarah Andelman(サラ・アンデルマン)という女性を介して、『ルーブル美術館』とBE@RBRICKのコラボレーション企画ができないかというお話をいただきました。
よくよく話を聞くと、いま世界中の美術館がコロナの影響で来場客数が激減して、それこそ収蔵品を手放す手前まで来ている館もあるので助けてくれないかと。ルーブルがそうだという意味ではないんですけれども。
近藤 特にヨーロッパは長期にわたって閉館していましたから。
赤司 それでルーブル美術館監修のもと『モナ・リザ』のBE@RBRICK(BE@RBRICK LEONARD DE VINCI Mona Lisa 100% & 400%)を今年2月に販売したところ、本当に世界中の名だたる美術館から「私たちとこんなことができないか?」という話をいただいている状況です。
BE@RBRICK LEONARD DE VINCI Mona Lisa 100% & 400% / 1000%
※完売
La Joconde. Portrait of Lisa Gherardini,wife of Francesco del Giocondo,known as the Mona Lisa.
Leonardo di ser Piero da Vinci, known as Leonardo da Vinci (Vinci, 1452 - Amboise, 1519)c. 1503-19
Musee du Louvre, Italian Paintings

©️ RMN - Grand Palais (Musee du Louvre) / Michel Urtado
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2021 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
そこで感じたのは、アート作品が一部の富裕層の自宅に収まるのではなく、誰でも見られる環境でステイできるのであれば「素敵なことだな」と思って。『ジェラート ピケ』と『あつ森』のコラボもそうですし、「ワンマイルウェア」に代表される女性のお洋服の価値観だったり、いろんなことが今回のコロナ禍で生まれたものですよね。
ここから先、スタイルヴォイスというコンテンツが何を発信して、最終的にどんなものを見せていけるのかに関しても、これまでの常識にとらわれないご提案ができたらいいなと考えています。例えばすごく勝手なことをいうと、サイバーエージェントの藤田社長がご一緒いただくことで、ABEMAで「ファッション情報通信」みたいなことができたらおもしろいですよね。
片山 そんなことができたら素敵ですね!

感度の高いサイトで買うものが洋服とは限らない時代

赤司 スタイルヴォイスがリコメンドするさまざまな価値観をABEMAで紹介するフォーマットやメディアが作れると、すごくシナジーが高いのではという気がしていて。そこにうちがどう絡めるかはわからないですけれども、そういうプログラムがあったら見てみたいなと思います。
近藤 ファッションというカテゴリーだけに限らず、インフルエンサーのお部屋の中のこだわりや愛用品──それこそBE@RBRICKだったり、パジャマだったり、インテリア・家電だったり。そういう、その方ならではの「空気感」をつないでいくのはおもしろそうですね。
赤司 ファンの子たちが「空気感」をシェアすることによって、自分もこれを手に入れたいと思う──そういう声が最近増えてないですか?
片山 ものすごく増えています。インスタライブの片隅に映っていた意外なものに「それはどこのですか!?」という反響が多くて、驚くことが頻繁にあります。従来のテレビショッピング的なインスタライブは響かなくなっているなと感じます。
近藤 そういう空気の出し方がとても上手なのは、マツコ・デラックスさんですよね。テレビなどを拝見していても、絶妙な空気感が伝わってきますよね。
片山 マツコさんは絶対的な自分軸の価値観を持っているインフルエンサーの代表ですよね。今の時代、とってつけたようなおすすめコメントは見ている人にまったく届かない。近藤社長がおっしゃったように、これからのインフルエンサーは格好悪いところも含めて、どこを切り取っても「その人ならではのスタイル」があることが「信頼」を得るポイントかなと思います。
赤司 「隣の晩ごはん」ならぬ「隣のインフルエンサー」(笑)
かつて「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれる」と言ったアンディ・ウォーホルの予言は当たっていたんだなって。それをABEMAの15分番組でやれたら素敵だなと思います。
近藤 もしかしたら、JUNやマッシュといったアパレル系の並びにメディコム・トイさんが加わることを「異色」と思う方がいるかもしれないですが、実は全然異色じゃなくて。
例えば、さっきおっしゃっていただいたジェラート ピケの商品の中で一番売れたものがお洋服かというと実は違ったりするんです。
先日のPEANUTSとのコラボでも、スヌーピーの刺繍が入ったルームウェアが一番売れると皆さん想像するでしょうけれども、実際は抱き枕になる「BIGぬいぐるみ」が一番人気でした。
赤司 意外ですね。
近藤 今の時代、弊社で展開している『SNIDEL(スナイデル)』『FRAY I.D(フレイ アイディー)』『Mila Owen(ミラ オーウェン)』などでも、アイデアさえよければクッションやスリッパが一番売れたりするんです。ファッションが大好きな人たちの買い物が洋服とは限らない時代になった今、商材側としてメディコム・トイ、ジュン、弊社の3社が組み、忌憚のない意見を交わす中で、洋服だけにとらわれない多様性が生まれる。感度軸や共感軸の中で様々な商品を開発していくことは、今後成長していくための条件じゃないかと思っています。なので、メディコム・トイさんは絶対必要なパートナーですし、うちの会社のアイテムに対してもぜひいろいろと教示していただきたいなと思っています。
赤司 こちらこそよろしくお願いします。
近藤 ブランドコンセプトを理解した上でのアウトプットであれば、共感さえ得られればお客様にはしっかり届くんです。我々がつくりたいと思うぬいぐるみやフィギュアだったり、逆にメディコム・トイさん側の発想による洋服だったり、それらのアイディアを共有しながらうまくハマれば「1社ではできなかった大ヒット」が生まれるかもしれないという期待はあります。
赤司 プレッシャーは大きいですけれども、頑張ります(笑)。いろんな可能性がありますよね。
近藤 遡ればシャネルだって最初は帽子屋さんですから。エルメスも食器は昔からやっていますし、生活に必要なものをブランドコンセプトのもと作って提案していくのは珍しいことではない。そうやって視野を広げながら、スペシャリストの方々の力をお借りして良いものを作っていくことを加速させていきたいなと思っています。

ストーリーが伝えられるECサイトへ

赤司 実際、リニューアル後のスタイルヴォイスも、広く浅くではなく、ある程度数を絞ってそれを深く伝えていく方針なんですよね。
片山 いままでは膨大な量のブランドを扱って、そのオペレーションにかなりの労力を割いていたんですけれども、これからは想定したマーケットに対して、きちんとストーリーが伝えられるかたちにしていくつもりです。
何が起こるかわからないというか、近藤社長がお話しされたように、洋服ブランドなのに全然違うものが売れることが今後頻繁に起こってくると思うんですね。
例えば、4月27日にスタイルヴォイスで山田優さんのブランドがスタートしますが、ルームウェアが主軸アイテムな中、山田優さんの熱量が一番高いのが「香り」のアイテムなんです。山田さんの大好きな香りのボディクリームなんですけど、本人が「この香りを作った調香師さんすごい!」とおっしゃるくらい、すごく気に入っていらして。ゆくゆくはこの香りで柔軟剤やアロマキャンドルなど、いろいろ広げていきたいと話しているところなんです。
赤司 そこまで山田優さんが入れ込んでらっしゃる香りだったら、どんなものなのか知りたくなりますね。
片山 「スパイシーバニラ」といって、大人のバニラの香りです。とてもいい匂いなんですよ。
近藤 私も使ってみたくなりました。そういう共感や空気感をきちんと伝えられるメディアに成長させていきたいですね。
片山裕美|KATAYAMA Hiromi
株式会社スタイルヴォイス代表取締役社長
お茶の水女子大学卒業。主婦の友社に入社し、雑誌「Ray」の編集長、カジュアルファッション誌「mina」の創刊編集長などを歴任。2007 年に幻冬舎入社。2009年雑誌「GINGER」の創刊編集長に。2015年以降は雑誌手法を生かした通販サイト内のコンテンツ事業を数多くプロデュース。2019年より現職でメディア型ECデパートメントストア「STYLEVOICE.COM」を運営。
<この1年で満足したベストバイアイテム>
新型のロボット掃除機「ルンバi7+」です。家の間取りを学習して自分で掃除をどんどん効率化最適化するし、スマホから遠隔操作で指示も出せて、掃除が終わって基地に戻ると自動でゴミ捨てまでしてくれる、とにかくめちゃくちゃ優秀な子。
近藤広幸|KONDO Hiroyuki
株式会社マッシュホールディングス代表取締役社長
建築デザイナーを経て、1998年にCGグラフィックの制作を手掛けるスタジオ・マッシュを設立。1999年に株式会社マッシュスタイルラボに社名変更。2005年からファッション事業に参入し、「スナイデル」などの展開を開始。2012年にマッシュホールディングスを設立。ビューティ、フード、不動産など衣食住すべての領域にて事業を拡大。
<この1年で満足したベストバイアイテム>
コロナ以降の買い物でいうと、シルク100%のワイシャツを頻繁に買うようになりました。とにかく肌触りが気持ちいいし、首周りも痛くならない。おかげで最近ジャケットの下に着るシャツは8割方シルクです。独特のアンニュイな質感にハマっています。
赤司竜彦|AKASHI Tatsuhiko
株式会社メディコム・トイ代表取締役社長
1996年、メディコム・トイを設立。 「マーケティングに基づく商品開発ではなく自分達が欲しいものを作る」をコンセプトに、映画・TV・コミック・ゲームなど幅広い分野のキャラクターフィギュアを企画製造。2001年に発表した「BE@RBRICK」は今年誕生20周年を迎える。国内外のアーティスト、ブランド、企業とのコラボレーションなど多岐に渡る事業を展開中。
<この1年で満足したベストバイアイテム>
最近一番感動したのは、近藤社長に勧めていただいた「Cosme Kitchen Adaptation」の大豆ミート(ソイミート)の唐揚げです。味も食感も鶏肉の唐揚げそのもので、非常に美味しくてびっくりしました。高タンパクなうえ、低脂肪なのは嬉しい限りです。
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