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2021年4月26日
ヒット作が洋服である必然がなくなった時代、その先。STYLEVOICE.COMリニューアル記念鼎談 | STYLEVOICE.COM
ヒット作が洋服である必然がなくなった時代、その先。STYLEVOICE.COMリニューアル記念鼎談(前編)
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
スタイルヴォイス片山社長 × マッシュホールディングス近藤社長 ×メディコム・トイ赤司社長が語る
2019年11月にマッシュホールディングス、JUN、デイトナ・インターナショナルの3社で立ち上げたECモール「STYLEVOICE.COM(スタイルヴォイス ドットコム)」が、この春マッシュホールディングス、JUN、サイバーエージェント、メディコム・トイの4社の出資で再始動となる。昨年のコロナ禍においても好調な売り上げを記録したスタイルヴォイスが、今回のリニューアルによってどんなコンテンツを提供してくれるのか。スタイルヴォイスの片山裕美社長、マッシュホールディングスの近藤広幸社長、そして新たに参加することになったメディコム・トイの赤司竜彦社長に語っていただいた。
Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo
意思決定から商品化までのスピードの早さ
赤司 ここ最近は世界的な行動変容が起きています。コロナ禍以降のアパレル業界の動きでは、近藤社長のマッシュホールディングスが展開されている『gelato pique(ジェラート ピケ)』と、『あつ森』(Nintendo Switch用ソフト『あつまれ どうぶつの森』)のお取り組みは非常に印象的でした。ゲーム内で使用できるマイデザインを公開されたり(2020年6月)、ルームウェアを発売されたり(同年11月)。
近藤 緊急事態宣言になってお客様の生活がどのように変わり、居場所がどこになって、その居場所をどうやったらハッピーにできるかを第一に考えたとき、ジェラート ピケと「あつ森」のコラボをまず最初に掲げました。ハッピーなニュースになるとともに大きな売り上げになるということも確信しました。
赤司 マッシュさんと任天堂さんとのお取り組みは初めてだったそうですね。それも私、びっくりしました。
近藤 デモヤコロナなど沢山の壁が立ちはだかる香港での今後のビジネスプランを考えていたとき、コロナの影響でデモができなくなった若い方々が「あつ森」に集まって、様々な意見を主張している姿を目の当たりにしたことも大きかったです。今のデジタルネイティブの若い人たちは、ネットやゲームの中での結びつきが圧倒的に強く、そこに対するグルーピングに長けているなと。
アメリカなどの海外市場に関しても、同じくコロナ禍でのおうち時間をちょっとでも明るくしたいと思っている方々がたくさんいるんじゃないかなと期待したところ、即日完売しました。
アメリカなどの海外市場に関しても、同じくコロナ禍でのおうち時間をちょっとでも明るくしたいと思っている方々がたくさんいるんじゃないかなと期待したところ、即日完売しました。
赤司 ゲーム自体の盛り上がりを受けつつ、意思決定から商品化までのスピードがものすごく早かったなという印象があります。「ビジネスの決断力」、「商品の企画力」。それから「生産リードタイム」の一貫性が素晴らしいなと思っていました。
今回スタイルヴォイスさんからお話をいただいた際、近藤社長が支えながら片山社長が動かして行くんだったら大丈夫だろうと思って、ご一緒させていただくことになった次第です。片山社長、コロナ以降のスタイルヴォイスの動きはいかがでしたか?
今回スタイルヴォイスさんからお話をいただいた際、近藤社長が支えながら片山社長が動かして行くんだったら大丈夫だろうと思って、ご一緒させていただくことになった次第です。片山社長、コロナ以降のスタイルヴォイスの動きはいかがでしたか?
コロナ禍で注目を集めた「ワンマイルウェア」
片山 ECなので売り上げに関しては上振れしましたが、細かくデータを見ていくと新しいニーズが浮かび上がった1年でした。女性マーケットですと「ワンマイルウェア」(家から1マイル=約1.6キロの範囲で着るホームウェアとタウンウェアの中間的な服)であったり、メッセージ性のあるマスクだったり。
あとはおうちの中でじっくり自分の肌や髪をケアしたいという気持ちから、「美容家電」が大きく動いたり。自分自身と向き合いながら新しいファッション感を育てていこうという動きが強く感じられます。
あとはおうちの中でじっくり自分の肌や髪をケアしたいという気持ちから、「美容家電」が大きく動いたり。自分自身と向き合いながら新しいファッション感を育てていこうという動きが強く感じられます。
赤司 「ワンマイルウェア」という言葉は日常でも目にする機会が増えましたよね。
片山 実は、スタイルヴォイスで大ヒットしたワンマイルウェアって、家着のくせにすごくフェミニンなデザインでした。ユーザーの声で多かったのが、「外に出かけるタイミングがない中、“自分自身”がハッピーでいられるオシャレって何なのかを考えた」というもの。「リラックス」という要素も重要だけど、ただ楽ちんな格好でいたいのではなくて。パートナーの男性や彼氏を意識してフェミニンさを忘れない服を選びたい、とか、人目がないからこそ思い切りモードや派手な配色を楽しみたい、とか。着ていて楽なものが当然いいんだけど、楽なほうに流されて、自分を見せることや表現することを忘れてしまうのはヤバいぞ、と。少し大袈裟ですけど、そんな危機感めいたものを女性ユーザーから感じました。男性の洋服に関しても、コロナ禍を経て、スーツでもカジュアルに着られるものやリラックスして着られるものがフォーカスされていますよね。
赤司 先日、洋服の青山からネックピロー(首枕)になるビジネスジャケットが発売され、好調だというニュースを目にしました。スーツ好きからするとどうなんだろうという思いもありつつ、ニーズはきっとあるでしょうね。実際、男性・女性問わずコロナ以降の価値観って大きく変わったなという気がしていて。洋服然り、ライフスタイル然り、食も然りですよね。
そうした中、新生スタイルヴォイスの創出は僕自身すごく興味がありますし、ぜひご一緒したいと思い、ジョインさせていただいた次第です。今だからこそご提案できることもたくさんある気がするんです。
そうした中、新生スタイルヴォイスの創出は僕自身すごく興味がありますし、ぜひご一緒したいと思い、ジョインさせていただいた次第です。今だからこそご提案できることもたくさんある気がするんです。
注目商品を育てていく感覚が強まっている
片山 スタイルヴォイスも、当初は「こういうアイテムがいいよね」と発信してお客様に届けるイメージでした。コロナ以降は、SNSでの熱量の高まりとスタイルヴォイスからの提案がシンクロして、「注目商品を育てていく」感覚が強まっているので、これまでとは盛り上がるマーケットやアイテムの育ち方が違う気がしています。
赤司 片山社長はインフルエンサーの方々と一緒に商品開発をなさっていますが、この先ユニセックスな路線も増えていきそうですか?
片山 ディレクターの方からは、「ユニセックス」や「ジェンダーレス」なものづくりをしたいという声がとても多いです。
赤司 ブランドでもユニセックスを謳うところが増えてきているので楽しみなところです。メンズ事業だと、近藤社長は先日インタビューで「『GELATO PIQUE HOMME(ジェラート ピケ オム)』を、この数年内に50億規模に成長させたい」と語ってらっしゃいましたね。
近藤 既に『ジェラート ピケ オム』は20億以上の市場がありますが、売り上げの85%は女性が男性に贈るギフトブランドとしての需要であり、自分用に購入いただいているのは残り15%というのが現状です。これまでは男性が入りにくいお店の作りだったので、せっかく男性向けに作っているのに悔しいなという気持ちもあって、新たにメンズ専門チームを編成し、メンズ専門の店舗などを企画しているところです。
例えば、スタイルヴォイスのキュレーターたちに「家の中では男性にこういうファッションをしてほしいよね」ですとか、あるいは男性の目線で「バレンタインデーにチョコだけではなく、こういうものをもらったら嬉しいよね」といった座談会を開いていただいて、そこから生まれた発想を形にして限定で販売する。私たちだけでは実現できなかった「新しい売り上げ」と「喜び」を創造できたらいいなと思っています。
赤司 今回スタイルヴォイスでご一緒させていただくことになり、「ジェラート ピケに対してどんな印象を持ってる?」ということを、いろいろなクリエイターの方に聞いてみたんです。つくづく感じたのは、「愛されブランド」だということ。
女の子からすると「すごく好き」、男の子からすると「もらって嬉しい」なんですけど、印象的だったのが「なかなか自分で買う機会がない」という男の子たちの声でした。絶対ニーズがあるはずなんです。「何かかっこいいものがあれば欲しいな」っていう声は結構聞きます。
女の子からすると「すごく好き」、男の子からすると「もらって嬉しい」なんですけど、印象的だったのが「なかなか自分で買う機会がない」という男の子たちの声でした。絶対ニーズがあるはずなんです。「何かかっこいいものがあれば欲しいな」っていう声は結構聞きます。
共感の先にある新しいニーズの掘り起こし
近藤 メーカー側から、「一生懸命作っていてすごくいい商品なんです」と言ってもなかなか伝わらなかったりします。でも、スタイルヴォイスというメディアを通して、キュレーターの方々の客観的な意見や盛り上がりが生まれれば、「共感」として見ていただけるんじゃないか──。
この共感の先にある新しいニーズの掘り起こしに、私たちはすごく興味があるんです。『ジェラート ピケ オム』に関しては、今までは女性視点で「彼や旦那さんが着てくれたら嬉しいな」という声が多かったのですが、ピケ オムという新しい市場を開拓していく上で男性目線の商品も増えてくると思うので、今後の展開を楽しみにしていただけたら嬉しいです。
この共感の先にある新しいニーズの掘り起こしに、私たちはすごく興味があるんです。『ジェラート ピケ オム』に関しては、今までは女性視点で「彼や旦那さんが着てくれたら嬉しいな」という声が多かったのですが、ピケ オムという新しい市場を開拓していく上で男性目線の商品も増えてくると思うので、今後の展開を楽しみにしていただけたら嬉しいです。
片山 私もスタイルヴォイスをスタートして実感しましたが、年齢やファッションの嗜好に関係なく女性は百発百中ピケが大好きですね。そして、みんなが必ず持ってるのが、ジェラート ピケを贈ったり贈られたりした時の、ちょっとキュンとくるエピソード(笑)。集めたら、一冊の本にできるくらい、なんだか沁みる話ばかりなんです。
メンズに関しても、私の周りでは一回着ると「これがいい!」と毎日着ている人が多くて。女性以上に「あの触感がたまらない」とおっしゃられる。本当にジェラート ピケに関しては発見ばかりです。
メンズに関しても、私の周りでは一回着ると「これがいい!」と毎日着ている人が多くて。女性以上に「あの触感がたまらない」とおっしゃられる。本当にジェラート ピケに関しては発見ばかりです。