ソフビをアートに昇華した孤高のアーティスト、NAGNAGNAGの意志を受け継ぐNEW ART GUILD | MEDICOM TOY
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2024年7月25日

ソフビをアートに昇華した孤高のアーティスト、NAGNAGNAGの意志を受け継ぐNEW ART GUILD | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

令和6年6月6日6時6分6秒 NEW ART GUILD設立を宣言

アーティストNAGNAGNAGこと、故・新井茂氏の意志を受け継ぐために設立された「NEW ART GUILD」。ここでは、設立メンバーであるMEDICOM TOY、GORO、Pied Piper、Kaleidoscope、spamper、4KDO10 の6名からのコメントと共に、新井茂氏の功績とこれからの活動について紹介していく。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

NEW ART GUILDとは何か?

令和6年6月6日6時6分6秒、「NEW ART GUILD設立のご案内」という告知がSNS上にポストされた。設立メンバーは、MEDICOM TOY、GORO、Pied Piper、Kaleidoscope、spamper、4KDO10 の6名である。
NEW ART DUILD
MEDICOM TOY / GORO / Pied Piper Kaleidoscope / spamper / 4KDO10
New Art Guildは生前の新井茂と共に歩んできた者達によって設立された団体です。氏の意思を受け継ぎ、氏の意向を守っていく事を念頭に、未完のままで止まってしまっている各作品の完遂や、市中に出回る氏の贋作物の排除、および氏の作品の鑑定などを行いつつ、新井茂の尊厳を守る団体として活動していきます。

New Art Guild is an organization established by those who walked alongside Shigeru Arai during his lifetime. With the intention of continuing his legacy and preserving his wishes, the organization aims to complete unfinished works, eliminate counterfeit works circulating in the market, and authenticate Arai’s pieces while safeguarding his dignity.

New Art Guild是由在新井茂先生生前曾与之同行过的人们 成立的组织。该组织旨在继承他的意愿,秉承他的初衷,致力 于完成他尚未完成的作品,清除市面上的假冒品,并对其作品 进行鉴定,以维护新井茂先生的尊严。

世界に衝撃を与えたNAGNAGNAGこと新井茂氏

2023年11月3日、アーティストNAGNAGNAGこと新井茂氏は東京都内の自宅にて心筋梗塞のため、この世を去った。51歳というあまりにも早い旅立ちだった。
メディアに登場することもほとんどなく素性を明かさないまま活動してきた新井氏だが、長年創作の仕事に関わっていたこともあり、造型センス、塗装技術、プロデュース力においてずばぬけた才能を持つ存在だった。
2008年8月15日、新井氏は「NAGNAGNAG」という名前で第1作目のオリジナルソフビ人形「暴力原人」を発表。以降、「NAGBALL」や「NZOMBIE」などのソフビ人形を制作。手作りの衣装や髪を身に着けた作品も多い。
2008年11月にはニューヨーク発のファッションブランドMISHKAからオファーを受け「暴力原人」のアートとパッケージの両方でコラボレーション。同年12月よりロサンゼルスを拠点とするアーティストCoopとのコラボレーションを開始。2009年には「暴力原人」をテーマにしたストップモーションの短編映画2本を制作。
生前の新井氏は2010年以降、ニューヨークコミコンイベントに不定期に参加しており、2013年には「NAGBALL」に関する記事がニューヨーク・タイムズに掲載されている。

ソフビ(ソフトビニール人形)の歴史

「ソフビ」とはソフトビニール人形の略称で、軟質ポリ塩化ビニールを金型に注入し外部から熱を加え、中空成型して製造する。
日本では大正から昭和(1950年代)にかけてセルロイド(硝化綿と樟脳を主原料とする合成樹脂)製の玩具や人形が製造され、アメリカに多く輸出されていた。太平洋戦争終結後、民間貿易が再開された1947年から1952年にかけての5年間、陶磁器、衣類、カメラ、玩具などの輸出品には「MADE IN OCCUPIED JAPAN(占領下の日本製)」という刻印が義務づけられ、それらは現在では希少価値から北米を中心にコレクションの対象となっている。
耐久性と柔軟性に富んだセルロイド製品だったが、極めて燃えやすく、アメリカでは「日本のセルロイドは発火性があり危険である」とされ、1955年に可燃物質規制法が成立。輸出ができなくなったことから、これ以降セルロイド玩具はソフトビニール玩具へと代わっていく(最初期の国産ソフビ玩具には増田屋斎藤貿易(現・増田屋コーポレーション)の「ミルクのみ人形」など)。
1966年には『ウルトラQ』『ウルトラマン』のテレビ放映に合わせてマルサン商店から発売された怪獣ソフビ人形が子供たちに人気を博し、第一次怪獣ブーム(1966年~1968年)を牽引。第二次怪獣ブーム(1971年~1974年)においても、マルサンの金型を引き継いだブルマァクの怪獣ソフビ人形が大ヒットとなり、無版権の類似商品も数多く出回る事態にまでなった。
一世を風靡したソフビ人形だったが、1973年の第一次オイルショックによる原材料の高騰や怪獣ブームの終焉に伴い、1970年代後半になると人気も落ち着くが、1980年代以降になるとアンティークとして価値を高めていく。1990年にはレトロブームから復刻版のソフビ人形が、各社より発売開始。その製作過程のために省略化された造形や塗装に味わい深さを感じるコレクターが増えていく。
2000年代に入ると、それらのヴィンテージトイとは別の文脈でオリジナル怪獣や当時の紙モノに描かれたまま立体されなかった怪獣などのソフビ人形を製造するインディーズメーカーが現れるようになる。
NAGNAGNAGもそのひとつだが、デビュー早々実現させた海外アーティストとのコラボレーション、ゲリラ的に情報開示するオフィシャルサイト、全高6フィート(約1.8m)の巨大な「暴力原人」製作といった活動の数々は人々に大きな衝撃を与えた(そもそもNAGNAGNAGというネーミングやロゴデザイン自体、PUNK/NEW WAVEを筆頭とするサブカルチャー的な要素が強く感じられる)。
唯一無二の造型や塗装はもちろんのこと、変幻自在にシーンをかき回していく手法すら、もはやNAGNAGNAG作品の一部といえよう。新井氏と親交の深いMEDICOM TOY代表取締役社長 赤司竜彦氏は「本人は無自覚でしょうが、2010年代においてはバンクシー(※1)よりも前からバンクシー的なことをやっていた人物」と語っている。
(※1)Banksy(バンクシー)
本名・生年月日未公表。イギリスを拠点とする素性不明のアーティスト。世界各地の壁や道路、時には地下鉄の車内にまで社会問題をテーマにした風刺的な作品を神出鬼没に残している。

NEW ART GUILDメンバーが語る NAGNAGNAG作品と設立への思い

NEW ART GUILDの設立を令和6年6月6日6時6分6秒という6並びに発表したのも、第1作目のオリジナルソフビ「暴力原人」の発売日を8月15日=終戦記念日にした新井氏なら、きっとこのタイミングに何か仕掛けたに違いないというメンバーの総意である(新井氏は生前、先述の「MADE IN OCCUPIED JAPAN」という言葉も好んで使っていた)。
新井氏の逝去後、NAGNAGNAG作品の贋作がオークションなどで出回っていることや、未発表や構想段階の作品について心配しているコレクターも多いことだろう。
NEW ART GUILDは「市中に出回る氏の贋作物の排除、および氏の作品の鑑定などを行いつつ、新井茂の尊厳を守る団体として活動していきます」という宣言のもと、今後は未完のままとなっている新井氏の意思を受け継いで活動していく。以下、設立メンバーである6名の思いを広く伝えるべく、新井茂氏との思い出やNEW ART GUILDについて語っていただいた。
【MEDICOM TOY】
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1996年設立。「自分たちが欲しいものを作る」をコンセプトに幅広い分野のキャラクターフィギュアを企画製造。2001年発表の「BE@RBRICK(ベアブリック)」など、国内外のアーティスト、ブランド、企業、キャラクターと多彩なコラボレーションを発信。NAGNAGNAGとは2016年6月発売のBE@RBRICK SERIES 32に潜ませた新井氏のBE@RBRICK「SECRET/SECRET裏」を皮切りに全高6フィートの「FOUR EYES」や東宝怪獣シリーズなど多数リリースしている。
<回答は同社代表取締役社長 赤司竜彦氏>

未だ彼を越える作家を見た事はありませんし、今後も出てくる事は無いでしょう

1)NAGNAGNAG 新井茂氏との思い出について
最初にお会いしたのは西麻布のクラブだったように記憶しています。
「俺の事、知ってますよね?」と声をかけられました。
フレッド・ペリーのポロシャツを着て、ライムカラーのVESPAに乗っていました。
知り合ってから、かれこれ10年以上になりますので印象的なエピソードは枚挙にいとまがないですが、どんな時も、どんな状況でも自分の感性を一番に持ってくるタイプで、その分、周りに敵も多かったですが、反面、熱狂的なクルーを多く内包していたのも事実で、かくいう私もその一人です。
2)これまでご自身が関わられたNAGNAGNAGの作品名、および特に印象的な1点とその理由について教えてください。
どれも印象的すぎて、ひとつには絞れませんが、Tara McPherson(※2)とのコラボレーションは印象的でした。2人のアーティストの間で詳細を詰めていく作業はかなり大変でしたが、良い作品が出来たと思います。
(※2)Tara McPherson(タラ・マクファーソン)
1976年アメリカ・サンフランシスコ生まれのアーティスト。作品集に「Lonely Heart」「Lost Constellations」「Bunny In The Moon」「Wandering Luminations」がある。彼女の作品はアカデミー賞受賞映画「ジュノ」、エミー賞受賞HBOシリーズ「サクセション」、アイズナー賞受賞アンソロジー「Popgun 3」の表紙にも登場。オフィシャルサイト  https://www.taramcpherson.com/
3)NAGNAGNAGがアート界に与えた影響について
かなり早い時期から、所謂、現代美術の作家が彼を慕い、様々なアプローチを試みているのを興味深く見ていました。それはNAGNAGNAG自身のパブリックイメージやスタンスに強い共鳴を受けていたのだろうと思います。尤も彼自身は誰からのどのようなオファーにも自身の価値観だけを提示し、そこにシンクロできる相手にしか興味が無かったように感じます。
作品は勿論、作家としてのスタンスは多くの模倣者を生みましたが、彼の表現したフィールドにおいて、未だ彼を越える作家を見た事はありませんし、今後も出てくる事は無いでしょう。
4)NEW ART GUILDの設立について
NEW ART GUILDは、いつか私が現役をリタイアした後に、新井茂のマネージメントを軸としたプライベートカンパニーを起業する時の為に考えた名前です。彼の急逝によって、設立の形は変わりましたが、新井茂自身の持つ思想や信念を間近で支えてきた6組の関係者に賛同いただき、ファンデーションとして動き始める事を決めました。
5)これからのNEW ART GUILDの活動について
NAGNAGNAGは生前、非常に多くのプランやアイディアを内包しており、これらを断片的にNEW ART GUILDのメンバーは受け取っていました。
これらの構想や彼から受けたイマジネーションを、形にしながら皆さんにお披露目できればと考えています。
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【GORO】
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ソフビメーカー。2016年1月、ゴローとして第1弾となる完全合体ロボットソフビ「超合拳リキダイザー3」をリリース。付属パーツを組み合わせて、多彩なバリエーション展開を実現。原型製作をEXOHEAD、スーパーバイザーをNAGNAGNAGが担当し、カラーバリエーションの中には新井氏の塗装によるワンオフ作品も含まれている。その後も同シリーズより「ザンジンガン」「グラスライザー」がリリースされている。オフィシャルサイト http://www.rikidizer3.com/

ソフビをアートの世界に昇華させた第一人者だと思います

1)NAGNAGNAG 新井茂氏との思い出について
2014年くらいに私が住んでいた近所に偶然新井さんが引っ越してきた事がきっかけで、よく飲みに行ったり遊びに行ったりする仲になりました。
その時点ではまだ私はソフビなどのオモチャを集めている人だったのですが、そんな私に「自分が欲しいソフビを造ったら?」とゴリ押し気味に無茶ぶりをしてくるのです。
すったもんだが多々ありましたが、ソフビを造る事に相成り、ゴローが誕生するきっかけを作っていただきました。
2)「超合拳リキダイザー3」シリーズについて
超合拳リキダイザー3は、『子供の頃に夢中になったポピー・ポピニカの超合金で、しかもコンバインボックス・ボルトインボックスみたいな合体ができる仕様のロボットソフビが欲しい!!』が基になっています。半年くらいかけて、ロボット等の形状や合体する時の嵌着(かんちゃく)仕様を苦心惨憺して考えました。
原型は私が大好きだった原型師、EXOHEADさんにお願いしました。それ以降のザンジンガン・グラスライザーの原型も手がけて頂き感謝の念に堪えません。
原型からロウ型・金型へ工程が進んでいくのですが、成型工場の方々には多大なご尽力を賜り感謝しています。ソフビになったテストショットを受け取った時の喜びと安堵感は格別なものでした。
NAGNAGNAGさんは色彩感覚が超越していたので、ゴロー製品のプロデュースという形で塗装の監修をお願いしていました。私が塗装したリキダイザー3をNAGNAGNAGさんが手にとってチェックしていくわけですが、その緊張感は半端ないものでした。指摘された箇所を修正しますと、間違いなく格段に良くなるわけで流石としか言う他ございません。様々な塗装技法をご教授頂き感謝の思いでいっぱいです。
NAGとゴローのコラボレーションで、NAGNAGNAGさんがリキダイザー3をワンオフで3セット塗装すると言ってくださいました。第一弾の出来映えはとても素晴らしいものでした。が、面倒くさくなったのかこの1セットのみで終了となり唯一無二のワンオフとなりました。
3)NAGNAGNAGがアート界に与えた影響について
ソフビをアートの世界に昇華させた第一人者だと思います!!
太くてデカいグローブみたいな手なのですが、手先が物凄く器用で物事への妥協のない探究心には心底感服いたします。
そこから産み出された造型や彩色パターンの数々は多くの方々を魅力し、影響を与え続けていると考えます。
4)NEW ART GUILDの設立について
メディコム・トイさんでのNAGNAGNAGさん関連の商品化に向けてと、贋作拝除の為の鑑定に少しでもお手伝いできればと考えています。
5)「超合拳リキダイザー3シリーズ」ファンの皆様へのメッセージ
超合拳リキダイザー3シリーズをご購入頂き大事にして頂けている皆様には本当に感謝しています。1回の製作数が少なくてご購入頂けない方々には本当に申し訳ありません。
逝去によりNAGNAGNAGさんのプロデュースが受けられなくなってしまいましたが、NAGNAGNAGさんから伝えられた事を肝に銘じこれからも超合拳リキダイザー3シリーズを製作していきますのでどうぞよろしくお願い致します。
秋頃に新作を発表する予定です。
名前は『ダブルリンチ』です。
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【Kaleidoscope】
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東京都板橋区大山にある絶版玩具専門店 「かれいどスコープ」。ヴィンテージのヒーロー・怪獣ソフトビニール人形、超合金、ジャンボマシンダーなどを扱い、信頼ある知識と鑑定でコレクターに広く知られている。新井氏、ゴロー氏との親交から超合拳リキダイザー3シリーズも販売。店頭には新井氏の塗装作品も展示されている。

新井茂が望まない事を排除し、望むであろう事を遂行していく助力の一翼に

1)NAGNAGNAG 新井茂氏との思い出について
新井さんはヴィンテージトイのコレクターでもあったので昔から当店を訪れてくれていたようなのですが、私と長話をするようになったのは2~3年前です。その際に「NAGNAGNAGという名前で活動している」と言われるも、私はヴィンテージの専門だったので、その名は知らなかったのですが「リキダイザー」は知っていました。
その流れから新井さんがゴローさんと共に当店を訪れてくれるようになり、NAGNAGNAG/GORO作品の販売をする事になりました。変な話、私がヴィンテージ以外に全く興味が無かった事からなる極めてフラットな視点で作品を捉えた事が新井さんには新鮮だったようです。
2)これまで関わられたNAGNAGNAGの作品で特に印象的な1点
リキダイザー、ザンジンガンと扱ってきて、新井さんのセンスというか、独自のアーティスティックな面に惹かれるようになり、あらためて彼の作品を総ざらいした中、やはり一つには絞れませんが、強いて言うなら商品のボックスの写真で使用された、当店に展示してある新井さんが塗装したザンジンガンです。
©️ ゴロー
新井氏が塗装した超合拳リキダイザー3シリーズ「ZANZIMGAN / ザンジンガン」
3)NAGNAGNAGがアート界に与えた影響について
前項でも触れましたが、当時、私はアート界への見識は皆無だった為、新井さんから直にNAGNAGNAGの実績の説明を受けても「ヘぇ~…」くらいしか返さなかった事ばかりでした(笑)。故に、その役割など知る由も無く、ただ私は礼節を重んじ、筋を通して物事を捉える新井茂という人間が好きだっただけです。ただ周りの人曰く、他の人には礼節とか滅茶苦茶だった…とはよく聞きます(笑)。
4)NEW ART GUILDの設立について
新井さん亡き後、その後のあらゆる場面において常にこの6人が核となって動いてきましたから、今となってはNew Art Guildの設立は必然だったように思います。最も新井さんと共に過ごした時間が多いゴロー氏、新井さんの感覚を具現化できる無二の存在であるPied Piper氏、新井さんが最も信頼を寄せていたspamper氏、新井さんに最も熱い想いを寄せる4KDO10氏、そして総てを取り纏め、圧倒的な実行力を有するメディコム・トイの赤司さん。これだけのメンバーの中、新井さんとの濃い時間を共に過ごした期間が短い私が皆に呼ばれて創設メンバーとして入る流れになったのは、ひとえに新井さんの遺志だと思えてなりません。ただただ私は新井茂が望まない事を排除し、望むであろう事を遂行していく助力の一翼を担うのみです。
5)ファンの皆様へのメッセージ
昨今の贋作の流通をはじめ、新井茂が望まない事が横行しております。そういう場面に出会った時に「これは新井茂が望む事か?望まない事か?」と問うて頂ければ、新井さんも喜ぶのではないかと僭越ながらに思います。New Art Guildは、新井さんが最も信頼を寄せてくれた6人全ての合意が無ければ動けない機構になっています。どうか皆様、新井茂/NAGNAGNAGの世界の継続と発展を見守ってやっていただければ幸いです。
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【Pied Piper】
原型師。2021年2月にMEDICOM TOYより発売されたNAGNAGNAGプロデュース「ゴジラ(1995)」の原型製作を担当。以降、東宝シリーズ「ゴジラ(2001)」「ゴジラ(1995)口開け」「ゴジラ(2001)口開け(ONE OFF)(EDITION 5)」「ゴジラ(1995)2期」「ビオランテ(1期)」「ゴジラ(1964)1期」「ゴジラ (1995))口開け 2期」を担当。他に「ジラース」「ミューナ」「三億円犯人」「漂流教室 関谷 三輪車」「みすず 三輪車」「青田赤道 三輪車」を手がけている。

玩具のイメージが強かったソフビという素材をアートの表現手段として取り入れた

1)NAGNAGNAG 新井茂氏との思い出について
出会いは知人の紹介でした。
原型師を探しているとの事で会って話をして自分が怪獣造形も得意と伝えたところ、特撮や怪獣ガレージキットの話で意気投合し、NAGNAGNAGの東宝シリーズ最初の作品、「ゴジラ(1995)」の原型をやってみないかと言われました。
2)これまで関わられたNAGNAGNAGの作品で特に印象的な1点
ゴジラ 2001年版です。
NAGNAGNAG氏と私自身が特に気に入っているモチーフのゴジラです。デスゴジの次はどうしようかと打ち合わせしていてお互いに「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃でしょっ!」となり作る事が決まりました。原型を作り終えてソフビになり「傑作が出来たな」と言ってもらえた事は忘れられません。
本当に嬉しく思いました。
 
3)NAGNAGNAGがアート界に与えた影響について
自身の持つ世界観を自ら原型をつくりソフビに落とし込み、玩具のイメージが強かったソフビという素材をアートの表現手段として取り入れた事は凄いと思いました。最初こそ自分なりのおもちゃを作るだったのかもしれませんが、最終的にアートの世界に持っていくという発想に驚きました。
4)NEW ART GUILDの設立について
NEW ART GUILDの設立についてはNAGNAGNAGの作品や商品が発表されなくなる事はとても寂しい事だと思っていたので嬉しく思いました。NAGNAGNAG氏と話していた今後のラインナップがありますので、氏のスピリッツを受け継ぎ1つ1つ商品化していきたいと思います。
5)ファンの皆様へのメッセージ
今までと変わる事無く楽しみにしてもらえれば嬉しいです。
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【Spamper】
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これまでMISHKA、Coop、Frank Kozik、Tara McPherson、Johnny RyanなどとコラボレーションをしてきたNAGNAGNAG。spamper氏はそうした海外のアーティストやブランドとの企画、進行、広報をはじめ、数多くのプロジェクトを担当している。

新井さんが思い描いていた「アート作品としてのソフビ」をプロモーションしていきたい

1)NAGNAGNAG 新井茂氏との思い出について
新井茂さんとの初めての出会いは2012年の春、イベント会場での事でした。「コレクターですか? どこの国の人ですか?」と突然話しかけられた事がきっかけで会話が始まり、後々、ゴローさんと共に食事に誘われ、電話番号を交換するに至りました。それから暫くして、新井さんから電話があり、「今すぐ会えないか?話がある」と言われ、ファミレスで待ち合わせしました。会うや否や「お前、Tim Burton知ってるか?」と聞かれ、「知っていますが、もちろん、会った事はありません」と私は答えました。用件は、「映画の撮影で今Tim Burtonが来日していて、どうにかして彼にこのおもちゃを渡したいのだが、協力してほしい」との事でした。そして暴力原人(新井さんがクリエイトしたソフビキャラクター)を渡されました。私は正直どうしたらよいかわかりませんでした。当時、普通のサラリーマンの私にはTim Burton監督のような有名人に会えるわけがないと思ったからです。あらゆる知り合いに聞いた結果、Tim Burtonの記者会見に参加するという人が見つかり、監督本人に暴力原人を渡す事に成功しました。このエピソードをきっかけに、長い付き合いが始まり、新井さんと親友になりました。
2)これまで関わられたNAGNAGNAGの作品で特に印象的な1点
基本的に、海外アーティストとのコラボレーションの際の企画、進行、広報を私が担当していました。またウェブサイトの管理、イラスト作家への制作依頼、暴力原人の漫画制作など、多くのプロジェクトに携わっておりました。
私にとって特に印象に残った仕事は暴力原人の漫画です。
3)NAGNAGNAGがアート界に与えた影響について
新井さんはその画期的な発想と卓越した技術で、サブカルチャーの一分野である「インディーズソフビ」をアートの世界に繋ぐという大切な役割を果たしました。新井さんの活動により道が開かれ、数多くの新たなソフビクリエイターが誕生し、現在のソフビシーンにつながりました。
4)NEW ART GUILDの設立について
新井さんのレガシーを保ちつつ、新井さん自身が制作及びペイントしたオリジナル作品を鑑定し、鑑定証をNEW ART GUILD から発行します。また、新井さんが生前に企画していた作品の商品化を実現し、ウェブサイトでオリジナル作品のデータベースを構築し、世界のファンにお届けします。
5)ファンの皆様へのメッセージ
NEW ART GUILDのメンバーは、新井さんの作品を心からリスペクトし、NAGNAGNAGのコンセプトを守る事を基本としています。新井さんが生前に作った作品の資産価値を保ち、新井さんが思い描いていた、「アート作品としてのソフビ」をプロモーションしていきたいと思いますので、ご支援ください!
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【4KDO10】
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ソフビスペース&イベント企画。世界中から厳選したソフビメーカーとソフビ愛好者の間の架け橋となり、ソフビの魅力とユニークさが芸術的な舞台で輝けようという思いから、2022年よりSOFVI EXHIBITION「4KDO10 」を開催。これまで超合拳リキダイザー3シリーズのほか、NAGNAGNAG作品では「暴力原人」「ジラース」「三億円犯人」「TRANSBOX(NAGNAGNAG x WANTO)」を抽選販売している。

新井さんの哲学と精神を受け継いでいく事は、全てのファンが期待していると思います

1)NAGNAGNAG 新井茂氏との思い出について
新井さんと初めて出会うまで、私はただのNAGNAGNAGファンの一人でした。ソフビのコレクターである私は、ずっと前からNAGNAGNAGというブランドの存在を知っていて、理解し、憧れていました。でも、なかなか手に入れられないので、コレクションは暴力原人ひとつだけだったのです。
彼の新作が発売される日、私は唯一のコレクションを持ってギャラリーに行ったのですが、彼は不在でした。帰ろうと思う頃、外は雨が降っていました。私は傘を持ってこなかったので、近所の喫茶店でその日撮った写真を見ながら、雨が止むのを待っていました。そのうち、いくつか作品を撮り忘れてしまった事に気づき、慌ててギャラリーに戻ったのです。ギャラリーの入り口で、彼の姿が目に入りました。ラッキーだと思ったと同時に、少し緊張しました。
私が自分の暴力原人を取り出し、足の裏にサインをしてもらおうと新井さんに手渡しました。すると思いもよらない事に、新井さんはそれを長い間吟味して、「ニセモノだ!」と大真面目に言ったのです。
「え?」
私は驚き、気恥ずかしく、息が止まるぐらい緊張して何を言えばいいのかわかりませんでした。彼は私の表情を見て、私の肩を叩き、「冗談だよ 」と言ってくれました。そして私のカメラに気づき、撮った写真を見せてと言いました。
「これ全部君が撮ったの? 暴力原人の写真も?」
「はい、全部自分で撮りました。」
「今日の僕の作品、気に入ってくれた?」
「もちろんです! 全部好きです!」
「どれが一番好き?」
「赤い暴力原人が好きです」と答えた後、新井さんは何も言わずに去っていきました。
ギャラリーを出ようとすると、彼は私を呼び止め、財布から名刺を取り出し「今後この番号で連絡してくれ」と言いました。
黒色の真ん中にジョーカーが描かれた、とてもかっこいい名刺でした。
夕方、家に帰ってから新井さんに感謝のメッセージを送ったら、返事は「明日時間ある? メシ行く?」
こうして私とNAGNAGNAGの物語が始まりました。今思い出すと、もしあの日の天気が晴れだったら、この出会いはなかったでしょう。
2)これまで関わられたNAGNAGNAGの作品で特に印象的な1点
全高6フィートのNAGNAGNAG "FOUR EYES"をピックアップしたいと思います。
初めてこの作品の実物を見た時、私は作品自身の極めて強い存在感に打ちのめされたとしか言いようありません。
この作品が自宅に届いてからは、まるで本当の生き物のように部屋に立っているため、時々私の背後に誰かがいるような感覚になりました。
これほど大きなサイズの作品を集めたのは初めてだったので、興奮がずっと冷めなかったのです。
後日、新井さんがうちを訪れた際、その作品を長い時間、何やら一心不乱に細部までじっくりと吟味していて、普段のお茶目な性格と全く違う、別人みたいでした。その時の新井さんはとても魅力的だったと思います。
このような大型の暴力原人を作ろうと思ったきっかけを新井さんに尋ねると、こう答えてくれました。
「実は身長20メートルの暴力原人を作りたかったんですよ」
3)NAGNAGNAGがアート界に果たした役割について
私の印象では、NAGNAGNAGの作品はおもちゃの概念を完全に超越しているので、おもちゃよりもアートの範疇に入れたほうがふさわしいと思います。暴力原人から始まった独創的なスタイリングと高度に個性化されたペイントは前例がありません。
NAGNAGNAGの作品は、現代における最もアバンギャルドなデザイン言語と最先端のデザイン思考を象徴しており、何度も既存の常識を破りながら、ゲームのルールを新しく再定義しています。
コレクターとして、私は常にNAGNAGNAGの新作に目を光らせていましたが、毎回驚きと衝撃を受けてきました。理由は、NAGNAGNAGの作品は何らのルールに縛られる事は一切なく、しかもどんなに変化しようが、どの新作もNAGNAGNAGの特徴をちゃんと受け継いでいるからです。それは非常に珍しい事だと思います。
4)NEW ART GUILDの設立について
NEW ART GUILDのメンバーは、新井さんの人生と作品に最も近い立場で参加していたので、新井さんがどこに興味を持ち、何を最も大切にしていたかを理解しています。
新井さんの嗜好を中心に新しい作品を創作し続け、彼の哲学と精神を受け継いでいく事は、全てのファンが期待していると思います。
模倣品の生産や販売は非常に深刻な問題であり、正常な市場秩序を乱し、ブランドの合法的な権利と利益を侵害しています。今後さらに模倣品が本物の商品として販売された場合、コレクターの利益も損なわれますし、ブランドへの熱意や信頼に深刻な悪影響を与えてしまいます。
NEW ART GUILDは模倣品に対抗し、良好な市場秩序を維持するために全力を尽くします。
5)ファンの皆様へのメッセージ
道路を挟んで向かい側に立っていた新井さんが、子供のように微笑んでいた姿が忘れられません。
「(4KDO10を)世界一のイベントにしような!」
新井さんはこの言葉で私を励ましてくれました。世の中には新井さんに関する様々な話や伝説が流れていますが、私自身にとって新井さんはいつもポジティブなパワーに溢れ、私をより良い方向へ導いてくれました。
皆様、もし機会があれば、ぜひ新井さんの作品を自分の目で見てください。きっと一生忘れられない貴重な思い出になると思います。
問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

                      
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