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2023年8月17日
マカオでは10000%サイズのアートインスタレーションも登場。生みの親・千秋さんが語るMY FIRST BE@RBRICK B@BY | MEDICOM TOY
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
千秋さんスペシャルインタビュー
MY FIRST BE@RBRICK B@BYのデザイナーである千秋さん。「BE@RBRICK MACAU」では、10000%サイズのバルーンアートが登場するなど、誕生から15年の間に本人も驚くほど世界で人気となっています。そんなMY FIRST BE@RBRICK B@BYの歩みと、今後の展望を語っていただきました。
Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo
今年で16年目を迎える「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」
数あるBE@RBRICKの中でも指折りの人気を誇り、2007年の初登場以来さまざまなカラーバリエーションでロングセラーとなっている「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」シリーズ。赤ちゃん用のガラガラと音がするおもちゃをイメージして、おなかに3色のビーズを内蔵したこのモデルは世界中のコレクターを魅了しています。
MY FIRST BE@RBRICK B@BYのデザインを手がけたのは、幅広い分野で活躍する千秋さん。1991年、フジテレビのオーディション番組『ゴールドラッシュ』で初代チャンピオンに選ばれ、芸能界デビュー。96年には音楽ユニット・ポケットビスケッツのボーカルとしてデビューし、「YELLOW YELLOW HAPPY」は100万枚以上の売上を記録しました。声優としても「ノンタンといっしょ」のノンタン、「ドラえもん」のドラミちゃんを担当。自身のブランド「チロル社」や「Ribbon Casket」のデザイナーとしても知られています。今回は千秋さんに誕生から16年目を迎え、海外からもコラボレーションの依頼が続くMY FIRST BE@RBRICK B@BYについてお話をうかがいました。
インスタで見つけたら“Thank you. It's my design!”ってコメントします
──千秋さんのMY FIRST BE@RBRICK B@BYは海外でも高く評価され、2019年よりアジア有数のショッピング街・ギャラクシーマカオで毎年開催されているファッションアート展「BE@RBRICK MACAU」(WF Fashion主催)でもRoberto Cavalli、Sergio Rossi、Neil Barrettといった国際的ファッションブランドが並ぶ中、メインキャラクターとしてフィーチャー。今年(7月29日から9月22日まで開催)は全高約7メートルに及ぶ10000%サイズのバルーンアートのインスタレーションも登場します。
千秋 10000%のBE@RBRICKは他でも見たことがないから、びっくりしました。自分の子供が知らない間にこんなに大きくなった感じがして、不思議! マカオはポケットビスケッツの3枚目のシングル「Red Angel」(1997年)のミュージックビデオを撮ったこともあって、すごく思い入れがある街。かつてポルトガル領(1999年12月20日に中国へ返還)だったから、洋式の建物と中国の文化が混ざった雰囲気が大好きだったので、BE@RBRICKのお話をいただいて超嬉しかったです。しかも他にSergio Rossiさんとか世界的なデザイナーがいっぱいいるのに、私のを一番大きくしてくれて大丈夫かな!?って、いつも思います(笑)。
──「BE@RBRICK MACAU」では毎年コラボレーションモデルを製作。5年目の今年はマカオと日本の友好関係をテーマに、日本の万華鏡という品種のアジサイをイメージしたMY FIRST BE@RBRICK B@BYが誕生しました。
千秋 5年も続けば絶対仲いいはずだから。私からするとマカオって紫のイメージなんです。先方から指定されるカラーも大体紫なので。だから日本のアジサイで友好を表現するのはピッタリだと思いました。今回のも気に入ってもらえたらいいなと思います。
2019年は一番最初のモデルに近い感じのイメージでパステルカラー。その時はこの1回限りだと思っていたんです。2020年はテーマカラーが紫と決まっていたから、紫の中でも好きな濃い紫にしました。2021年は再びパステルな感じになって。この時は黄色の色合いにこだわって何回か微調整したのを覚えています。2022年はテーマがキャンプだったので、森をイメージしたグリーンです。コロナが落ち着いて、これから外に出て遊ぼうっていう感じで今までと違うものになりました。アウトドアは私があまり知らないジャンルだったんですけど、寝袋とかテーブルといったギアも作れて楽しかったです。
6年目があったら超嬉しいなあ。もしあったら、この5年間のデザインと全然違う、“そうきたか!”って思うものを作りたいですね。
──記念すべきMY FIRST BE@RBRICK B@BYの1体目は、2007年12月発売のBE@RBRICKシリーズ15 CUTEにラインナップされました。ボディの色はパステルカラーのピンク、イエロー、グリーン。当時まだ千秋さんのお嬢さんが幼かったことから赤ちゃんが遊ぶガラガラのおもちゃをイメージして、透明のボディにはビーズを内蔵。子供が初めて持つBE@RBRICKという意味で「MY FIRST BE@RBRICK B@BY」と名付けられました。
千秋 BE@RBRICKをずっと集めていたので、私だったらこういうのが作りたいというアイデアが既にあったんです。雑誌の企画でメディコム・トイの赤司さん(赤司竜彦代表取締役社長)と対談させてもらった際、「私に作らせてください!」ってお願いしました。だけどレギュラーシリーズのBE@RBRICKは箱に入ってて、開けるまで何が出てくるかわからないじゃないですか? 音がする時点で本当はルール違反なんだけど、赤司さんは「面白いですね」って言ってくださって。
その時はとにかくコラボできることが嬉しかったけど、こんなに長く続くとは思ってなかったし、どんどんコラボする相手がすごいことになってて。2008年にフランスの「コレット」からお話をもらった時もびっくりでした。外国の人は私のことを知らないはずなのに。でもそれが一番嬉しい。純粋にこのデザインを気に入ってくれたということだから。
──伝説のコンセプトショップ「colette」は、1997年にコレット・ルソーと娘のサラ・アンデルマンによりパリ・サントノレ通りにオープン。ラグジュアリーファッションとストリートウェアを融合する提案や、気鋭ブランドをいち早く紹介し、数多くの若手デザイナー・アーティストを発掘してきました。その後もMY FIRST BE@RBRICK B@BYは数々のコラボレーションを重ね、2016年には日本・シンガポール外交関係樹立50周年記念イベントにもキャラクターとして採用。世界各国に日本とBE@RBRICKを広める役割も担っています。
千秋 BE@RBRICK自体、海外でもすごい人気ですよね。去年アメリカのラスベガスに行ったら、巨大なショッピングセンターで夜中なのにものすごくたくさん人が並んでるところがあって。セレクトショップだったんですけど、お店の真ん中に置かれた巨大なショーケースの中に1000%のBE@RBRICKがぎっしり飾ってあるんです。みんなお店に入ると真っ先にその前で写真を撮ってて。たぶんSNSにあげてるんだろうな。私も赤司さんに「すごいことになってますよ」って写真を送りました。私のやってるYouTubeでも動画で紹介しました。
インスタ見てたら、東南アジアのモデルみたいなかわいい子が誕生日でもらったのか、MY FIRST BE@RBRICK B@BYを嬉しそうに抱っこしてる写真も見たし。スペイン語の人で私のBE@RBRICKを虹みたいに黄色、緑、青ってグラデーションできれいに並べてる人もいたり。時々そういうのを見つけたら“Thank you. It's my design!”って、クマの絵文字をつけてコメントするんです。中にはわかってくれる人もいて“あなたのデザインが好きです”みたいなことを書いてくれるんです。
いっぱい作ってきたけど、どの子もみんな心からかわいいなって思います
──ちなみに、ボディ内部に入っているビーズの色にも千秋さんならではの遊びごころが反映されているそうですね。
千秋 基本は3色なんですけど、一部のBE@RBRICKにはそこに隠しアイテムとして1個だけ違う色を入れてるんです。ガラガラしてたら“あった!”みたいな感じで。最初は心臓のイメージで赤とかピンクとかわかりやすいようにしてたんですけど、デザインを邪魔しちゃいけないと思うものは、グレーの中に1個だけ薄いグレーとか、透明にすることもあります。手にした人にしかわからないし、別に大きく言ってるわけじゃないから、“あれっ、間違いなのかな?”って思った人もいるかも(笑)。自分もBE@RBRICKで遊んでる感じですね。
ボディの色も“まだやってない色あるのかな?”というぐらいたくさん作ってきました。表面もピカピカになったりマットになったり。ウォータープリントで綺麗に模様が出るようになったり。
そもそもBE@RBRICKのデザインがすごいんです。顔のフォルムも、ほっぺたの膨らみ方とかおでこの出方とか。自分の娘が赤ちゃんの時と同じだったので、絶対的な“かわいい”の大正解がここにあるんだなっていつも思う。絶妙なバランスなんですよね。だからこそ私のデザインも活きるんです。
そもそもBE@RBRICKのデザインがすごいんです。顔のフォルムも、ほっぺたの膨らみ方とかおでこの出方とか。自分の娘が赤ちゃんの時と同じだったので、絶対的な“かわいい”の大正解がここにあるんだなっていつも思う。絶妙なバランスなんですよね。だからこそ私のデザインも活きるんです。
私が今まで作ってきたものとか表現してきたものって、99%が女の子向けだったんです。MY FIRST BE@RBRICK B@BYも初めは若いママとか小さい子のために作ったものだったし。だけど男の人もたくさん支持してくれたから、それもすごく嬉しいんです。
私はパンクっぽいのも好きなので、最初のMY FIRST BE@RBRICK B@BYを作る時に「裏バージョンをどうしても作りたい」と言って、眼帯をした悪そうなデザインも提出したんです。それも赤司さんは「面白いですね」って、ありがたいことに2つ作ってシークレットで発売してくれたんです。そういう裏バージョンを作ったことで男の子の世界に広がっていった部分もあると思うし。最近は真っ黒とか宇宙とか、男の子っぽいアイテムを作ることも多くなりました。超合金MY FIRST BE@RBRICK B@BYのお話が来た時も、私はちっちゃい頃にゴレンジャーの超合金を集めていたので、“えっ、いいの? やった!”と思って。
英語でCHIAKIって書いてあるだけだから、私がデザインしてることを知らない人もいると思うんです。でもそれはそれで嬉しくて。自分のデザインを気に入ってもらえたってことだから。なんならずっと知らないままでいてほしいぐらい(笑)。いつも淡々と作ってるだけなので、こうやって取材してくれるのもありがたいです。反響があればきっとまた次につながるから。
──MY FIRST BE@RBRICK B@BYも誕生から16年。初期のモデルで遊んで育った子たちも大きく成長しました。
千秋 幼稚園に通っていた私の娘も、いま20歳ですから。娘からしたらBE@RBRICKは既に日常にあって当たり前の風景なんですよね。そういう子たちが大人になってコレクターになったり、自分が使ってたものを娘、息子にあげて代々受け継がれていくのも素敵ですよね。メディコム・トイさんの意図はわからないけど、私はおもちゃだから別に傷がいっぱいついてもいいし床に転がってて時々音を出して遊んでもらうイメージだったんです。でも、私が見た限りみんなすごく大事に扱ってくれてますよね。それもまた嬉しいし。嬉しいことだらけです。本当に。
まだまだやりたいことはたくさんあります。SDGsの観点からリサイクル素材を使ったものも考えてるし、あとはディズニーとかスヌーピーとか、キャラクターとのコラボもやりたいのでお待ちしてます(笑)。「ドラえもん」のドラミちゃんできたらいいな。2006年からドラミちゃんの声を演じているので自分と自分のコラボみたいな感じ。真っ青なドラえもんと真っ黄色ドラミちゃんなんてあったら素敵じゃないですか? もしできたらまたシークレット的なものも作りたいですね。
──昨年6月、ポケットビスケッツでタッグを組んだパッパラー河合氏プロデュースで、20年ぶりとなる新曲「GREEN FLASH」(作詞/chiaki 作曲/パッパラー河合) を「千秋の歌YouTube」チャンネルで公開。今年7月には第2弾 「アオゾラ」をリリース。8月4日(金)にはパンクバンド、ロリータ18号の記念ライブにスペシャルゲストとして参加し、久々にライブハウスでの歌唱も披露します。
千秋 やりたいことはやれるうちにやっときたいから、歌も声が出るうちに歌わないとなと思って。プロモーションもYouTube全部自分たちの手作りでやってるけど、それでもちゃんとみんなのところに届くんだなって実感できてるからすごく嬉しい。デザインの仕事も楽しいし、生きてるうちにしかできないんだから、BE@RBRICKも1個でも多く作りたい。これまで自分の子供が何人いるかわからないぐらいいっぱい作ってきたけど(笑)、どの子もみんな心からかわいいなって思います。
※今回の記事内で紹介されたMY FIRST BE@RBRICK B@BYは、現在「BE@RBRICK MACAU」会場のみで発売されている2023年モデルを除いて、すべて完売となっています。
問い合わせ先
メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555