日本一の宝飾産地、山梨の伝統工芸を世界へ発信! ヒスイ(翡翠)を加工した200% BE@RBRICK | MEDICOM TOY
DESIGN / FEATURES
2023年7月26日

日本一の宝飾産地、山梨の伝統工芸を世界へ発信! ヒスイ(翡翠)を加工した200% BE@RBRICK | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

甲州BE@RBRICK(翡翠)

山梨県は甲府で作られる、「翡翠(ヒスイ)」を使用した200% BE@RBRICK。伝統的な研磨方法を用い、約半年という長い時間をかけて少しずつ形を整え、最終的に磨かれ完成する工程は驚きに満ちている。本企画が生まれた背景と制作工程を取材した。

Text by SHINNO Kunihiko|Photograph by YOKOKURA Shota | Edit by TOMIYAMA Eizaburo

「貴石」が生みだす「奇跡」の200% BE@RBRICK

メディコム・トイより、希少なミャンマー産の「翡翠(ヒスイ)」を使用し、工程のすべてを山梨県・甲州の職人の手作業によって仕上げた200% BE@RBRICKが登場する。翡翠はカワセミの緑の羽根から名がつけられた緑の半透明な宝石で、古くから不老長寿のシンボルとして中国や古代インカ帝国では金より貴重な宝石として重宝されてきた。さらにジョイント部分にはSILVER925を採用し、頭部・両手足の可動も実現。至高の銘品が誕生した。
プロデュースしたのは山梨県出身のIVX JAPAN代表の上島徹也氏。「IVXLCDM」など数多くのブランドを手がける、日本を代表するジュエリーデザイナーの一人だ。製作は同じく山梨県甲府市にある詫間宝石彫刻の代表・詫間康二氏。宝石彫刻、宝石研磨、貴金属加工と三つの異なる分野を手掛け、伝統に基づく技術力とクリエイティビティで新風を吹き込む詫間氏の工房は、国内外のブランドからコラボレーションの依頼が絶えない。
今回は詫間宝石彫刻を訪問し、翡翠を加工したBE@RBRICKの製作風景を見学させていただいた。

山梨の伝統工芸「甲州水晶貴石細工」

日本のワイン生産発祥の地として有名な山梨県だが、同時に日本一の宝飾産地でもあることはご存知だろうか。
古くより甲府市近郊の金峰山一帯では上質の水晶が採掘され、江戸時代に水晶の研磨技術が伝えられたことで大きく発展。現在はその伝統を受け継ぐ宝石の研磨・彫刻から貴金属加工まで、ジュエリーを完成させるすべての工程が揃う世界的にも珍しい集積産地となっている。
水を張った桶が並ぶ作業場。泥のような状態の研磨剤を素手で持ち、回転するコマに適量を送りながら貴石を研磨していく。この手法が「甲州水晶貴石細工」の大きな特徴でもある
2007年、伝統の技術を背景にジュエリーブランド「IVXLCDM(アイブイエックスエルシーディーエム)」を立ち上げたのが、今回のBE@RBRICKをプロデュースした上島徹也氏。I,V,X,L,C,D,Mはそれぞれローマ数字の1,5,10,50,100,500,1000を意味し、身に着ける人と共に5年,10年,100年と時代を越えて受け継がれる銘品作りを志している。2022年春、メディコム・トイとのコラボレーションでSILVER925製BE@RBRICKネックレスを発売したことが、今回のプロジェクトへとつながった。
「ミーティングで何度もメディコム・トイ社へお伺いさせて頂いた際、商談室の壁面に陳列されている愛知県のカリモク、石川県の九谷焼、佐賀県の有田焼といった工芸系のBE@RBRICKに感動したと同時に、山梨産のBE@RBRICKをこの横に並べたいと思ったんです。瞬時に山梨の宝飾産業の起源とも言える伝統工芸「甲州水晶貴石細工」が頭に浮かんで、帰り道の電車で工場にアポを入れました。次のミーティングで早速メディコム・トイ代表の赤司竜彦さんに、弊社にしか出来ない新しいBE@RBRICKとして企画提案させていただいたところ、ぜひ見てみたいですねと言っていただけたことからプロダクトが進み始めました」(IVX JAPAN代表・上島氏)
IVX JAPAN代表・上島徹也氏
BE@RBRICKのサンプルを持って貴石彫刻の工場へ行くと、貴石彫刻の職人も仏様や鳳凰等のオブジェは得意とするものの、可動する作品は作ったことがないため、驚かれたそうだ。しかも一見シンプルなのでスムーズに進むと思いきや、計算された重心の位置やカーブのバランスなど、細部の設定を見誤ると直立すら出来なくなるため製作は難航。調整に調整を重ねた末、100%サイズの翡翠製BE@RBRICKのプロトタイプが完成する。2022年夏のことだ。
「プロトタイプをご覧になった赤司さんから“200%サイズの翡翠製BE@RBRICKを作ってほしい”という連絡をいただきました。100%のサンプルを製作した工場では200%サイズを作れる大きい翡翠の原石が無かったため、山梨の貴石屋をまわって原石探しから始め、たどり着いたのが現在の工場である詫間宝石彫刻でした」(IVX JAPAN代表・上島氏)
製造を託された「詫間宝石彫刻」の代表・詫間康二氏は、1973年生まれの伝統工芸士/ジュエリーマスター。ジュエリー業界で培った金属加工技術を取り入れた現代的センスと伝統的技術で次々と新しい作品を生み出す業界の風雲児として注目を集めている。1967年、「詫間宝石彫刻製作所」として創業した先代の父・悦二氏は、当時至難の業と言われていた翡翠を光らせる特殊技術を独自に考案したことで「科学技術庁長官賞」を受賞。翡翠の第一人者として認められ、上野・国立科学博物館で開催された「翡翠展」にも出品している。
「翡翠は縄文時代から交易として使用されていた歴史があり、現在は日本の国石にも指定されています。今回の200%サイズBE@RBRICKの製作には透明度が高く、艶のある美しい質感が特徴のミャンマー産を使用しました。うちは父親の代から長年翡翠を扱っていることもあり、ちょうど求められる大きさの原石のストックがあったんです」(詫間宝石彫刻 代表・詫間康二氏)
詫間宝石彫刻 代表・詫間康二氏
工房内には至るところに原石の保管所があり、世界中から集められた貴石が並べられている。海外での買い付けは康二氏の弟・亘氏が担当し、経験による目利きで質の高い石を入手している。
「翡翠は単一の鉱物でできた宝石とは異なり、さまざまな鉱物が集まってできています。そのため原石はいわば皮を被った状態で、その価値は中を開けて見ないとわからないんです。そのため透明度の高さ、深緑の部分がどれくらいあるか、割れがあるかどうかで値段が大きく変わるんです。中華圏では縁起を担ぐお守りとして、ほとんどの人は一人一個は持っているので、良質な翡翠は投資対象になっているほどです。なので原石の状態で買い付ける時は専用のライトを当てて、内包物や色ムラが少ないものを選びます」(詫間宝石彫刻・詫間亘氏)
詫間宝石彫刻・詫間亘氏
「翡翠の扱いが難しいのは、予測しなければいけないことですね。BE@RBRICK製作で大変だったのは、まず原石をどう切り出すかです。表面上のサイズだけでなく厚みも必要になりますし、深緑の部分はできるだけ正面に取り入れたい。しかも全部で7パーツありますが、美しく仕上げるためには、すべて同じ原石から取った痕跡も残したいんです。(原石のサンプルを取り出し)ここ、見てください。カンといって石が割れているんです。これがあると欠点っぽく見えるから使えないんですね。こんな感じで、切断前の面取りにはかなり時間を費やしました」(詫間宝石彫刻 代表・詫間康二氏)
どれだけ美しい石でも、カン(クラック)が入っている場所は使うことができない
プラ板で型取られたBE@RBRICKのパーツを当てながら、面取りする場所を探していく
荒削りされた各種パーツ。この状態から研磨してフォルムを作り上げていく
長年の経験から原石を最良のかたちで切り出すと、次はパーツごとに荒削りで次第にかたちを整えていく工程へ。翡翠はさまざまな鉱物が集まってできていることから硬い部分と柔らかい部分があり、ピカピカに研磨するのは至難の技だったが、先代の悦二氏が考案した技術がそれを可能にした。
「最初にこの話をいただいた時、翡翠の硬いけど粘り気がある特性は、BE@RBRICKの素材に合ってるなと思いました。ただ、それゆえ磨いても表面がボコボコしたものになりやすいんです。それをうちの父親が編み出したやり方だと、つるっと仕上げられるんです」(詫間宝石彫刻 代表・詫間康二氏)
桶の底に沈んでいる泥のような研磨剤。工程が進むごとに粒子が細かいものに変えていく
量の研磨剤を素手で送り込みながら、自動で回転するコマに翡翠を当て研磨していく
実際に作業場でその工程を見せていただくと、水槽の中に沈んだ泥を使い、少しずつ研磨しながらパーツの大きさに調整していた。熟練の技術と繊細さが要求される手作業である。
「この泥は砥石などを混ぜたもので、少しづつ番手を変えながら磨き上げていきます。実は僕は昨年と今年、アートフェア東京(日本最大級の国際的アート見本市)に水晶のショットグラス作品を出展していて、隣のブースが『AKASHIC RECORDS』(メディコム・トイ代表の赤司氏がキュレーションを行い、世界中から厳選したアーティストやブランド、コンテンツの作品を展示・販売するプロジェクト)だったんです。その時に国内外のアーティストが製作したBE@RBRICKを見て、こういうものに関われたら山梨の宝飾産業が世間に広く知れ渡るだろうね、なんて話をしていたんです。うちの父親は昨年亡くなってしまったんですが、その半年後に今回のお話をいただいたので、これはきっと父が “やれ”と言っているに違いないと思いました」(詫間宝石彫刻 代表・詫間康二氏)
代表の詫間康二氏の作品である、水晶の素材を生かしたショットグラス
創業者であり亡き父、詫間悦二氏が「科学技術庁長官賞」を受賞した作品
山梨の宝石彫刻の技術を次世代につなぐため後進を育て、旧工場跡を使って一般の方に作品を見ていただくためのギャラリーをオープンするなど、伝統工芸技術の継承と発信こそ次なる課題だと考えていた詫間兄弟にとって今回のBE@RBRICKプロジェクトは、まさに渡りに船だった。現代的なモチーフで、しかも海外を視野に入れたものづくりができる。上島氏は十代の頃から詫間兄弟と顔見知りで、プライベートでも遊ぶ仲だったそうだが、一緒に仕事をするのは今回が初めてだったそうだ。工房見学を終え、ギャラリーでくつろぎながら「ちょうどいいタイミングでしたね」と三人は笑った。
詫間宝石彫刻製作所として創業した場所に作られたギャラリー。現工場の隣にある
こうして2022年11月にスタートした翡翠製BE@RBRICKは、半年の歳月をかけてサンプルが完成。「甲州BE@RBRICK(翡翠)」と名付けられ、2023年7月開催のイベント「MEDICOM TOY EXHIBITION '23」にて初公開された。山梨が誇る宝飾産業技術を世界へ発信したい──最後にプロデューサー上島氏にこのプロジェクトに込めた思いを語っていただいた。
「最初に申し上げたように甲州といえば、甲州ワイン、甲州ぶどうの二択に留まり、日本一を誇る宝飾産業が普及してないことにジレンマを感じていました。世界中にコレクターを擁するBE@RBRICKだからこそ、少しでも甲州(山梨)が誇る伝統技術や宝飾産業を知っていただくため、今後、甲州産業技術を融合した作品を生み出せるようにと、赤司さんと相談して名前を決めました。
今回製作させていただいた天然石BE@RBRICKに使われている翡翠は、何億年もかけて地中で形成された鉱物です。マテリアルの希少性、生産面の効率を考えると量産は非常に難しいですが、だからこそ感じていただけるロマンがあると思います。甲州で製作されたBE@RBRICKがこの先代々受け継がれる家宝になったり、世界的な美術館に展示に加わったら素敵だなと感じてます。
私たちの産業の形は、宝飾だけではなく時代と共に形を変えて次の世代に繋げていく義務があると思っていますので、そのひとつのきっかけになれば嬉しいです」(IVX JAPAN代表・上島氏)
甲州BE@RBRICK(翡翠)
製作|詫間康二(詫間宝石彫刻)
プロデュース|上島徹也(IVX JAPAN)
プロダクト|詫間宝石彫刻 by IVXLCDMⓇ
素材|翡翠(ミャンマー産)、SILVER925    
サイズ|全高約145mm。鍵付き豪華美麗ボックス収納
購入方法|2023年7月21日(金)16:00~8月31日(木)23:59の期間、MEDICOM TOY PLUS及びMCT TOKYO(http://mct.tokyo)にて受注。
発売日|2023年12月発売・発送予定
価格|132万円(税込)
※天然石のため、石の表情には個体差が出ます。
※オーダーメイドの受注生産(送料別)となります。
※貴重な石を使用しているため、一定量を超えた場合、予告なく受注を締め切る場合がございます。
※発送に4ヶ月以上お時間をいただく場合があることを予めご了承ください。            
©️2023 Takuma Gem Carving、IVXLCDMⓇ
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2023 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

                      
Photo Gallery