BE@RBRICK KNAVE BY YUCK P(L/R)AYER 400% / 1000%発売。グラフィティライター YUCKインタビュー | MEDICOM TOY
DESIGN / FEATURES
2023年9月24日

BE@RBRICK KNAVE BY YUCK P(L/R)AYER 400% / 1000%発売。グラフィティライター YUCKインタビュー | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

UVライトを照射するとマリア像が浮かびあがる

「MEDICOM TOY EXHIBITION '23」にて、“KNAVE BY YUCK”名義で展示されたBE@RBRICKが話題となった。その全貌が今回のインタビューでついに明かされる! KNAVEとYUCKの関係性も含め、これまでの軌跡を聞いた。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

平和の祈りを込めたBE@RBRICK

2005年に東京・新宿でスタート以来、独自の視点から製作されるオリジナルのアパレルや、ソフビフィギュアをリリースしているKNAVE。そして、メタルヒットからプロダクションピースまでオールラウンドなアクションで暗躍するグラフィティライターYUCK。
今年7月開催の「MEDICOM TOY EXHIBITION '23」にて、両者が“KNAVE BY YUCK”名義で製作したBE@RBRICKが突如発表され大きな注目を集めた。
YUCK氏のグラフィティを緻密に再現した表面に、UVライトを照射するとマリア像とアヴェ・マリアの詩が浮かびあがる仕様。そんな平和の祈りを込めたBE@RBRICKの発売を記念して、YUCK氏に同作へ込めた思い、KNAVEとの関係など、いままで明かされていなかったことについてメールインタビューにて回答いただいた。

ヴァンダルを継続していく上でタグネームを社会に持ち出したくなかった

──まずはYUCKさんのプロフィールを教えてください。グラフィティを始めたきっかけ、魅力を感じる部分はどのようなところでしょうか。
YUCK クルーはH2F.とINO、最初に缶を握ったのが96年頃でYUCKとしてボムを始めたのは98年から。相方のAKEとH2F.を組んだのが2000年くらい。INOに入ったのは2004年頃。
海外よりも桜木町や神奈川のシーンに強く影響を受けました。グラフィティの魅力かぁ、なんでしょうね、25年も向き合ってると、もはやライフワークなので何とも言い難いです。
──今回“KNAVE BY YUCK”としてBE@RBRICKを発表されますが、KNAVEとYUCKさんの関係について教えてください。
YUCK 2005年に自分がKNAVEを始めました。ヴァンダルを継続していく上でタグネームを社会に持ち出したくなかったので、YUCKの名を伏せてHITと名乗ってブランドを始めました。
今回BE@RBRICKのリリースにあたり、もうデザインの中にYUCKとたくさん書いてあるし、今更知っている人は知っているし、何よりもメディコムさんがクリエイターの意思や存在を尊重してくれる会社であると認識していたので、これを機にYUCKとKNAVEを繋げていいと思いました。
──KNAVEはWEBサイトに「2005年7月新宿にて発足。 Graffitiのバックボーンと“Cynical”をメインテーマに、社会や体制を皮肉った内容のグラフィックをアパレルにのせて発信」とあります。同ブランドを立ち上げるまでのいきさつ、これまでリリースしてきた主なアイテムについて教えてください。
YUCK 20代の前半はグラフィティライターとして活動するかたわら、普通にサラリーマンをしていました、デザイナーとして。けど、その頃から知り合いを通じてロゴデザインやアパレルのデザインを頼まれたりしていたので、KNAVEの構想もなんとなく練っていました。勤めていた会社の改変期に乗じて退職・独立しKNAVEを始めました。
最初の数年は定期的にコレクションを展開していましたが、リーマンショックのあたりで取扱店舗がたくさん潰れて卸先が激減しました。その時いかにそれまでお店に頼っていたか、他力本願だったかを痛感したので、その後は徐々に規模を縮小し、最終的にはWEBストアのみに完全移行しました。
コロナが終わりかけた頃にそのWEBストアも閉じて、現在は海外でのイベントや自身のエキシビジョンを中心に展開しています。
──KNAVEとメディコム・トイは、これまでVAG「カタキッド」「ぐんぢょ」をリリースしています。ソフビに興味をもった経緯と、「カタキッド」「ぐんぢょ」を制作した背景、メディコム・トイとの出会った経緯について教えてください。
『カタキッド』
2018年3月発売。VAG(VINYL ARTIST GACHA) SERIES 14
『ぐんぢょ』
2023年6月発売。VAG(VINYL ARTIST GACHA) SERIES 35
YUCK 中学生の頃はプレデターが好きでアメトイを集めていました。渋谷のZAAP! にもよく行ってました。高校に入ってしばらくした頃に、和物のビンテージばかり置いてる店が実家の近所にできて、そこに通い詰めるようになりました。ソフビはその頃から始めました。
それからずっと途切れることなく集め続けてて、パンクドランカーズの親方と遊び始めて「そんなにソフビが好きならオリジナル作ったら絶対いいもの作れるのに」と2年くらい言われ続け、アイツ(パンクドランカーズのメインキャラクター)の敵を作るというコンセプトで生まれたのがカタキでした。そんなカタキがたまたまSNS上で赤司さんの目に止まり声をかけていただき、最初のVAGを制作する運びとなりました。

繰り返されるそれぞれの「時代の混沌」に対する祈りの象徴

──今回の「BE@RBRICK KNAVE BY YUCK P(L/R)AYER 400% / 1000%」は、YUCKさんからメディコム・トイの赤司社長に直接アイデアを持ちかけたとうかがっています。どのような話し合いをされたのでしょうか。
YUCK カタキのVAGを製作した時、フワっとBE@RBRICKの話もあったのですが、その時は「いつか面白いアイデアが浮かんだ時にお願いします」とお伝えしました。2019年にパンクドランカーズと合同でNY、2021年にソロエキシビジョンを東京で開催しソフビとあと趣味で書き溜めていたキャンバスの展示をしました。
東京では思いのほかキャンバスの評判が良くほぼ売り切れました。メディコムさんからお花を頂いていたので、そのお礼も兼ねて挨拶に行きました。そこで残っていたキャンバスの1枚を持ち込み、赤司さんにお見せして、これをそのままBE@RBRICKに落とし込むことは可能ですか? と尋ねたら、やったことがないのでまだその技術はないし、量産も難しそうだけどだからこそやる価値がある、みたいなことを言っていただき、そこから長い長い製作が始まりました。
──BE@RBRICKの全身にはYUCKさんのグラフィティが施されています。コンセプトや色合い、それらをBE@RBRICKに施すうえで大変だったことなど、製作工程について教えてください。
YUCK 10数年前、1枚のキャンバスに何の意図もせず落書きや試し書きをひたすら繰り返していたら、数年後にそのキャンバスがグラフィティで埋まった街の壁のような景色になっていました。そこに可能性と面白みを感じて今のスタイルになっています。偶発的な街のカオスを必然性の上でバランスを取りながら作り出す、そんな意識の元でこのキャンバスワークを始めました。
BE@RBRICKに施すうえでは、まず2枚のキャンバスを上下左右の全方向で繋がるリピートパターンにて書きました。キャンバスに書き込んだのは、戦争でよく聞くワードやストリートシーンで常用されている言葉の数々で、辛辣な意味のものが多いです。
UVを照射すると別の画が浮かび上がるのは、NYでの展示で偶然思い付いたのをその後に進化させたスタイルなんですが、これを量産品のBE@RBRICKで表現するのが一番難しかったです。
参考までに、こういうものです。
以下の画像は大きなキャンバスの断片なんですが、左と右は同じ画の同じ箇所です。右のUVに照らされて現れている箇所は全て左の明るい状態でも見えているのですが、バックグラウンドの多くの情報と合わさることによって見えなくなっています。
──表面にUVライトを照射するとマリア像とアヴェ・マリアの詩が浮かびあがるというアイデアは、どういうところから生まれたのでしょうか。また、なぜマリア像とアヴェ・マリアの詩を選んだのでしょうか。P(L/R)AYERという作品タイトルの由来についても教えてください。
YUCK ベースのデザイン(バックグラウンド)に対し何のモチーフを隠し入れるか、考えていたちょうどその頃にロシアとウクライナの戦争が始まったのも1つのきっかけでした。爆撃で荒れ果てた戦地とグラフィティだらけの街とでは違うにせよ、混沌というワードではくくれる気がして、繰り返されるそれぞれの「時代の混沌」に対する祈りの象徴、そのビジュアルとは、と考えた時にこれ以外のイメージが出てきませんでした。ただ、宗教画だったこともありかなり悩みました。実際に反対意見もありましたし。
これは私事なのですが、宗教画やそれに付随するデザインを観たり調べたりするのは昔から好きで、信仰心よりもビジュアルベースの興味から礼拝に通ったりしていたこともあり、これまでも自分で描いたりデザインに組み込んだりしてきたことがあったので、家に祭壇こそありませんが、割と身近には感じていて。
画だけでなく、つい文字も組み合わせたくなるのはグラフィティからの癖でしょうかね。グアダルーペのマリアを描いたので、アヴェ・マリアのリリックはラテン語のものにしました。作品タイトルのP(L/R)AYERですが、PLAYERはシーンの前線で暗躍する者を、PRAYERはそんな明日なき彼等に祈りを捧げる者を、(L/R)は原画が2枚のキャンバスから成ることを、それぞれ意味しています。
──今回のBE@RBRICKの製作にあたって特殊な工程を新たに開発し、特許を申請されたとうかがっています。
YUCK 今ちょっと手元に資料がないので、詳しくはお話しできないのですが、私の描くキャンバスのスタイルを量産品として立体物に落とし込むための技術? といったところでしょうか。私はただの発案者であり、技術的な面と権利の諸々はメディコムさんにお任せしているので。ぶっちゃけ、あまりちゃんと頭に入っていないです。
──完成したBE@RBRICKをご覧になった感想をお願いいたします。
YUCK すごいですよね、本当に。メディコムさんの技術力と再現力には頭が下がるばかりです。企画を提案してから2度目のミーティングの時に、生産管理部の片岡さん、企画開発グラフィック部の清本さん、そして代表の赤司さんと、4人で頭を抱えていたのが懐かしいです。
今は未だ見えていないだけ、きっと方法はある! なんて言いながら。完成までに1年半かかりましたが、面白いことができたと思います。
──まだまだメディコム・トイと実現させたいアイデアはたくさんあると思いますが、第2弾以降はどのようなことを考えていますか。
YUCK 今回とりあえず新しい表現方法を一つ生み出せたので、今後この方法がメディコム・トイの元でどのように進化していくのかが楽しみです。応用次第で表現は無限に広がる気がするので。
より複雑により難解な見せ方に進化していくこと、それをするのが自分じゃなかったとしても、他のアーティストやデザイナーがこの方法を使ってどんな面白いものを作るのかを見るのは、今からすごく楽しみです。
VAGもまたやりたいし、でっかいソフビも作ってみたいです。KNAVEだけでは成し得ないことを、メディコムさんの力を借りて一緒に具現化してみたいです。
──メディコム・トイの印象についてお願いいたします。
YUCK 大きな会社なのにすごくフレキシブルですよね。打ち合わせだけでも毎回ワクワクしてすごく楽しいです。あと、社員さん達がみんなイケてるNIKEを履いていて羨ましい。
──最後に、YUCKさん及びKNAVEの今後の予定、やりたいと思っていることについて教えてください、
YUCK YUCKとしてはこれまで通りに好き勝手やってけたらと。KNAVEとしては今は国内よりも海外での動きに重きを置いているので、これからもアメリカを中心に色んなことを仕掛けていきたいです。既に仕込んでいるものもいくつかあるので楽しみにしていてください。
いつかソロエキシビジョンでNY、シカゴ、LAを回るツアーをするのが今のところの夢です。死ぬまでに叶うといいなあ。
BE@RBRICK KNAVE BY YUCK  P(L/R)AYER 400% / 1000%
サイズ|各全高約280mm/700mm(UVライト付属)
購入方法|2023年9月24日(日)0:00~10月10日(火)23:59の期間、MEDICOM TOY PLUS店頭及び、MCT TOKYO(http://mct.tokyo)にて先行受注
価格|[400%]1万6500円(税込)/ [1000%]8万5800円
発売日|2024年2月発売・発送予定
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Tel.03-3460-7555

                      
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