OPENERS編集部的デザインタイドトーキョー総括
密着!デザインタイドトーキョー2008 フォトギャラリー
OPENERS編集部的デザインタイドトーキョー総括
今年で4回目となる東京発のデザイン見本市、デザインタイド。今回からタイトルも「DESIGNTIDE TOKYO」となり、東京という都市から何か新しい真摯なデザインを発信していこうという、強い意気込みと自負を感じさせるものとなった。 「DESIGNTIDE TOKYO」は一般ユーザー向けの「ショー=デザインイベント」という側面と、ビジネスの場という「見本市=トレードショー」としての側面の2つの顔をもっている。
今回は会場を東京の新しいアートの中心地である六本木という街に移し、メイン会場も商業施設として、都内有数の高いトレンド性と集客を誇る東京ミッドタウンとしたことからもわかるように、海外のデザインショーと同様のあらゆる面での質の高さと、コンテンツの充実がはかられているようにみえた。 なかでもプレスによる情報発信の充実は顕著で、報道関係者、出展者、ビジネス目的の来場者とのコミュニケーションもスムーズで、トレードショーとしての側面が強化された印象をもった。
今回は空間に流れる音楽にもこだわった。ひとつひとつの作品とそこに集まった人びとを包み込むような音楽。それは布で出来た「建築」で、ゆるやかにそれぞれのブースを仕切りながらつないだ空間構成にも同じことがいえるだろう。その双方が日本人らしいきめ細やかなおもてなしの心にあふれているように感じた。
そんな新しく生まれ変わった「DESIGNTIDE TOKYO 2008」。 OPENERSでは開催一ヶ月前から「DESIGNTIDE TOKYO 2008」に密着、その動向に注目してきた。 開催初日にメイン会場に集結したOPENERS CASA編集部による、OPENERS的視点で捉えた東京の今を感じさせるデザインとデザイナーをフューチャーして、今回の「DESIGNTIDE TOKYO 2008」の総括としたいと思う。
文=加藤孝司Photo by Jamandfix
501 DESIGNSTUDIO(ゴーマルイチデザインスタジオ)
伝統工芸や技法の力で、既成のものに新しい息をふき込むということ。一からつくるのではなく、今あるものから新しいものをつくる。
金槌でスプーンやKEYを叩きそこにおこる変化。それは既成のものに関わっていくためのひとつの新しい方法論であるともいえる。
稲田博範/ステッチアンドソー
素材をかえて三つのバッグを提案したステッチアンドソー。材料が本来もっている機能であったり、強さ、イメージをバッグとして具現化している。たとえばその素材も、紙、工業廃材、シーチング材を使用。工業廃材をマテリアルにしたバッグは実際に土嚢や、建設現場を覆うシートをつくる工場で縫われているという。ディリーユースのバッグとして、あるいは特別な強度を必要とするシーンに対応する。
100%坪井浩尚
今回のデザインタイドで6つの新作を発表した100%坪井浩尚。日常使用しているほんもののストローを一輪挿しに見立てたプロダクトは、花の形態を受けるための器である花瓶をストローを使うことで伸びたり曲がったり、曲がったまま固定することも出来るストローの特性を生かした、能動的なフラワーベースになっている。
全部がコマで出来ているメタルバンドの特性に着目したリストウオッチは、コマとコマのあいだに必然的に出来る07ミリほどの隙間に、7セグメントのLEDを仕込み時を表示するというもの。LEDのデジタル感とアナログ時計のアイコン的なメタルバンドの調和が生み出す、プロダクトとの幸せな関わりかた。
熊谷彰博
オシャレなものが少ないカメラバッグ。熊谷彰博氏が今回オリンパスとともに開発したカメラバッグは、カメラを保護する機能を十全に満たしながら、オブジェのような美しさを兼ね備えている。
山本和豊
開き戸に対する固定概念が扉に鍵をかける、ということをコンセプトにしたインスタレーションに近い展示をした山本和豊氏。自分の意識が鍵をかけてしまう物事の多さに対する、デザイナーからの熱い問いかけ。デザインの可能性が人間の潜在意識にまで及ぶような刺激的な展示であった。
柳原照弘
花という高さや長さの異なるものを、ひとつの花瓶で活ける花に合わせて高さを変えたり、形を変えることのできるフラワーベースを発表。
もうひとつはフォークリフトのパレットの形をした棚。そのものが本来もっているフレキシブルな機能性をいかしたかたち。それがインテリアとして本棚やベッドの台、そしてベンチになったり。ひとつのモジュールで異なる用途に対応することができる。
渡辺力/METROCS
段ボールで出来た組み立て家具をウオールに見立てて展示した、時代の中に埋もれてしまった名作家具のリプロダクトでも知られるメトロックス。今回展示されたのは日本のインダストリアルデザインのパイオニア、渡辺力氏のデザインによる紙の家具、「CFSキッズセット」と「CFSスツール」。会場にはデザイナーである渡辺力氏も姿を見せ、興味深く会場を見てまわる、今年97歳を迎えた現役デザイナーの姿が強く印象に残った。
天童木工PLY
ショップ限定カラーのイームズのサイドチェアや、畳のない暮らしに変化している日本人のライフスタイルに対応した、フロアにも置けるクッション「ユカ座布団」などを発表。合わせてプロダクトデザイナー秋田道夫氏の新作プロダクト「プリマリオ」の新作4点も特別展示。注目を集めていた。
Emmanuelle Moureaux /エマニュエル・ムホー
ABCクッキングスタジオなどの空間デザインで知られるエマニュエル・ムホー氏。
竹ひごを使ったフランスでは有名なミカドという玩具からインスバイアされて生まれたstick chair。20キロのアクリルの座面を支えるのは、構造的にはギリギリの細さの木のスティック。厚さ9センチのアクリルに刺さったスティックは、あたかも水面に刺さっているかのようにも見える。ランダムに刺さったスティックは不安定に見えながら椅子としての機能をしっかりと満たした、建築的なアプローチをもった椅子だ。
Arabeschi di Latte
イタリア、フィレンツェを拠点に活動する5人組の女性デザイングループ。食をテーマに「EATING EVENTS」を各地で展開。デザインタイドトーキョーではブース全体をピクニックのテーブルに見立て、目にも楽しいそのインスタレーションは会場を訪れた女性たちの注目の的であった。
Tomas Alonso / トマス・アロンソ
スペイン人であるトマス・アロンソ氏はイギリスのRCA卒業後プロダクトデザイナーとして活動を開始。日常見慣れたマテリアルを驚きを持った目でみつめ、それを機能的でシンプルな家具にして私たちに驚きを与えてくれるデザイナーだ。2006年、RCAの卒業生とともにOKAYstudioを設立。