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2020年7月17日
新作個展「記憶の修築」開催記念 アーティスト・田名網敬一氏インタビュー|MEDICOM TOY
BE@RBRICK 田名網敬一 1000% |メディコム・トイ
いまはピカソの母子像を自分なりに模倣したペインティングを 連日制作し続けています
田名網敬一氏の新作個展「記憶の修築」が、渋谷パルコ2F 2G内の「NANZUKA 2G」(7月4日〜7月26日)と、ギャラリー「NANZUKA」(7月11日〜8月8日)の2ヶ所で開催されている。今回の個展は、田名網氏が幼少期に戦争を経験した際の記憶と創作活動の繋がりを視覚的に暗喩した展示会のシリーズとして開催。会場では、箱庭のような立体作品や大作のコラージュ作品など様々な形式の新作を公開する。新たに制作したペインティングには、1938年に発表され戦後の日本でも人気を博したアメリカンコミック「Nancy」や1966年に放送された特撮ヒーローもの「ウルトラマン」など、田名網氏が影響を受けた作品のキャラクターが登場。
開催に合わせて、2Gではメディコム・トイが製作した「BE@RBRICK 田名網敬一 1000%」が数量限定で発売された。今回は田名網氏にメールインタビューをおこない、新作個展やBE@RBRICK、そしてコロナ禍以降の制作状況についてうかがった。
Text by SHINNO Kunihiko
「Mirror Image Machine」(2020 )
Pigmented ink, acrylic silkscreen medium, crashed glass, glitter acrylic paint, acrylic paint on canvas
©Keiichi Tanaami Courtesy of NANZUKA
Pigmented ink, acrylic silkscreen medium, crashed glass, glitter acrylic paint, acrylic paint on canvas
©Keiichi Tanaami Courtesy of NANZUKA
──昨年、「NANZUKA」オーナー南塚真史さんにお話を伺った際、田名網先生はおもちゃがとてもお好きとのことでした(田名網敬一は最初にアンディ・ウォーホルのなんたるかを理解した日本人アーティスト https://openers.jp/design/design_features/P6qIg)
2年前に50年間使ったスタジオを引っ越ししたので、だいぶ処分してしまいましたが、今でもミッキーマウスの古いソフビや木彫りの人形など、たくさんあります。わたしが好きだと知っていて、時々大学の教え子たちがおみやげにくれるものも多いです。
──田名網先生は長いキャリアの中でグラフィックデザイナーとしても活躍されています。今回発売されたBE@RBRICKのプロダクトデザインに関しても、さまざまなアイデアを出されていたそうですね。
BE@RBRICK 田名網敬一 1000%
サイズ|各全高約700mm
価格|各5万8000円(税別)
発売日|2020年7月発売予定
取扱店舗|2G
問い合わせ先|メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555
※完売しております。
サイズ|各全高約700mm
価格|各5万8000円(税別)
発売日|2020年7月発売予定
取扱店舗|2G
問い合わせ先|メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555
※完売しております。
©️ Keiichi Tanaami / courtesy of NANZUKA
BE@RBRICK TM & ©️ 2001- 2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
BE@RBRICK TM & ©️ 2001- 2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
今ではエディトリアルで使う技法を使ってアート作品を作成することは普通になりましたので、もはやグラフィックデザインもプロダクトデザインということばも死語になりましたね。今回、メディコム・トイさんにはかなり頑張ってもらいましたが、これでも色数や線をかなり削っていますし、もっと細かく絵柄が載っていました。
──そうだったんですね。印刷技術の進歩により、本来のデザインを再現できる日がくることを楽しみにしております。田名網先生は、2005年にも「BE@RBRICK WORLD WIDE TOUR」(世界中のアーティストが1000%サイズのBE@RBRICKをキャンバスにした作品展覧会)に参加されています。ベアブリックという素体を使ってアート作品を制作することについて、どのようにお考えでしょうか。
2006年6月に発売された「BE@RBRICK WORLD WIDE TOUR 5」5体セットより田名網氏デザインのBE@RBRICK
もちろん、私が好きに描くキャンバスのようにはいきませんが、ベアブリックが世界中で人気を得ている理由は、そうした技術的な制約がある中でも、常にチャレンジをして、より良いものを作ろうとするメディコム・トイさんの努力の成果だと思います。
──現在開催中の個展「記憶の修築」の会場のひとつである、「2G」についての印象をお聞かせください。
2Gは、ナンヅカ君より「アートのためのアートに拘らないギャラリー」というコンセプトに基づいて生まれたものだと聞いています。私は、もともと守られたアートとは真逆のフィールドで制作を続けてきましたので、昔のパルコとも多くの仕事をしてきました。今回も2Fの渡り廊下のWindowにパブリックアートを作成しました。
「Nancy 1」(2020)
Pigmented ink, acrylic silkscreen medium, crashed glass, glitter acrylic paint, acrylic paint on canvas
©Keiichi Tanaami Courtesy of NANZUKA
Pigmented ink, acrylic silkscreen medium, crashed glass, glitter acrylic paint, acrylic paint on canvas
©Keiichi Tanaami Courtesy of NANZUKA
──2020年はコロナ禍に見舞われた年になりましたが、田名網先生はどのような創作活動をされていたのでしょうか。
気持ちを落ち着けるためにピカソの母子像を自分なりに模倣したペインティングを制作し続けていました。写経のようなものですね。同じ絵を描いているつもりでも、毎日違う作品ができて興味深く、今でも連日続けています。100点描きます。来年、熊本の現代美術館で発表したいと思っています。
──こうした状況が今後の田名網先生の作品に反映されることはあるのでしょうか。
これだけの事件なので当然影響はあるでしょう。ピカソの模写のように思考を停止して、作品と対峙することも必要です。
──BE@RBRICKのプロダクトデザインでは、「ニワトリ」「金魚」「巨大な目」といったアイコンが使われています。これらは田名網先生ご自身の原体験に深く関わっているものと伺っています。作品のモチーフもまた、反復することで内面的な変化が生まれるのでしょうか?
個別のモチーフについては、過去に様々なインタビューで詳細に答えていますので、ここでは説明を省きますが、今回Nanzukaと2Gで開催する個展「記憶の修築」のテーマにもあるように、また先のピカソの作品模倣の話でも分かるように、人間は反復を繰り返すことで新しいものを生み出そうとする潜在的な能力があります。わたしは作品の制作を通して、繰り返し登場する様々なモチーフが、毎回必ず違う意味、姿形、ストーリーを持っていることに、いつも自分で驚かされています。
──最後の質問です。先生は音楽にも広く精通されていますが、最近は主にどのようなものを聴かれているのでしょうか。
スタジオではいつもラジオをつけていますので、国内外の最新の音楽から昔の音楽までなんでも聴いています。
──お忙しいところ質問に回答いただきありがとうございました。今回の個展で田名網先生の世界を存分に堪能させていただきます。
「田名網敬一 記憶の修築」
2020年7月11日(土)〜8月8日(土)
会場:NANZUKA
住所:東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビル地下2階
開場時間:11:00 - 19:00
休廊日:日曜日、月曜日、祝日
※本展はコロナウィルス拡散防止の対策として、予告なく入場を制限させていただく場合がございます。
2020年7月11日(土)〜8月8日(土)
会場:NANZUKA
住所:東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビル地下2階
開場時間:11:00 - 19:00
休廊日:日曜日、月曜日、祝日
※本展はコロナウィルス拡散防止の対策として、予告なく入場を制限させていただく場合がございます。
2020年7月4日(土)~7月26日(日)
会場:NANZUKA 2G (Shibuya PARCO)
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ2階
開場:PARCOの営業日・営業時間に準じます
会場:NANZUKA 2G (Shibuya PARCO)
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ2階
開場:PARCOの営業日・営業時間に準じます
田名網敬一 Keiichi Tanaami
1936年東京生まれ。武蔵野美術大学を卒業。1960年代よりグラフィックデザイナー、映像作家、アーティストとしてメディアやジャンルに捉われず、むしろその境界を積極的に横断して創作を続け、その半世紀を優に超える活動の歴史と軌跡は21世紀における新たなアーティスト像の模範として世界中の若い世代のアーティストから絶大な支持を集めている。昨年、adidas Originalsとのコラボレーション「Adicolor x Tanaami」コレクションを発表。その精力的な創作活動の様子は昨年4月に放送された「情熱大陸」にも取り上げられ大きな反響を呼んだ。また、昨年秋にリニューアルオープンしたNY近代美術館(MoMA)にも作品が常設展示されるなど、戦後日本を代表するアーティストとして唯一無二の評価を受けている。
問い合わせ先
メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555
Pigmented ink, acrylic silkscreen medium, crashed glass, glitter acrylic paint, acrylic paint on canvas
©Keiichi Tanaami Courtesy of NANZUKA