連載|the rumored “CHALIE VICE” 第1回 愛着のもてるデジタルガジェット
DESIGN / FEATURES
2016年1月4日

連載|the rumored “CHALIE VICE” 第1回 愛着のもてるデジタルガジェット

CHALIE VICE|チャーリー・ヴァイス

友人たちが感じた遊びの達人の粋なセンス

愛着のもてるデジタルガジェット

伊勢丹新宿店メンズ館にある「THE GALLERY by CHALIE VICE」をご存じだろうか。ここに先日まで、オーナーのチャーリー・ヴァイスがセレクトしたというデジタルガジェットが並んでいた。仕事でもプレイベートでも暮らしに欠かせないスマートフォンをはじめとした、デジタルデバイス。これらを使う所作をうつくしくするというアイテムは、どんな目利きによって選ばれたのか。チャーリー流の“粋”を知る友人のひとり、プロダクトデザイナーの角田陽太さんに話を聞いた。

Photographs by JAMANDFIXText by TSUCHIYA Motohiro(OPENERS)

チャーリーが旅先で出合ったアイテムに触れられる場所

チャーリー・ヴァイスは、いつも世界のどこかを旅しいて、才能ある友人たちがいる。人生を愉しむ術を知り尽くしていて、彼が気に入るモノ・コト、そしてヒトは刺激的で、ウィットに富んでいる。最近、そんな彼が「THE GALLERY by CHALIE VICE」へもち帰るものには、デジタルガジェットも少なくない。

SQUAIR|The Edge(ジ・エッジ)

つい先日も「NuAns(ニュアンス)」「SQUAIR(スクエア)」などのスマートフォンアクセサリーやスマートウォッチ「Vesper(ヴェスパー)」などが「THE GALLERY by CHALIE VICE」で紹介されている。

これらのガジェットには、どんなでチャーリー流の“粋”が息づいているのか。彼の友人のひとり、デザイナーの角田陽太さんが語ってくれた。

道具のように手になじむガジェット

――チャーリーとは、どこで出会ったんですか?

ニューヨークですね。クライアントがある展示会に出展するため、視察に訪れたときに出会いました。マンハッタンやブルックリンのように、どこかノスタルジーを感じさせてくれる街が似合う男でした。

――チャーリーはどんなひとですか?

ファッションやもちものへこだわりは強いけど、そのこだわり方がスマートなんです。ブランドとかプライス、性能的な部分ではなくて、“自分自身がもつに価するか、自分の暮らしを豊かにするものか”を基本に、自分自身の審美眼を大切にしている。

身に着けるもの、訪れる場所、出会うひと、すべてが彼のライフスタイルに寄り添っている。そんな印象が強いですね。

連載・the rumored “CHALIE VICE”|第1回 愛着のもてるデジタルガジェット

――彼が選んだデジタルガジェットの感想は?

デジタル製品やそのアクセサリーは、いろんなことができてしまう。ほかの端末に置き換えてしまうこともできて、愛着のもちづらいプロダクトが多く感じます。ですが、チャーリーが選んだアイテムは、シンプルな機能で感覚的に使えて、道具のように手になじんでくる。だから、愛着が湧きやすいのかなとおもいました。

――愛着がもてるプロダクトのデザインとはどんなものでしょうか?

仕組みがわかるもの、アナログ的なもの、機能をしぼったプロダクトのほうが、愛着がもちやすいんです。多機能で機能性の高いデジタルプロダクトでは、、愛着がもてるデザインはむずかしくなる。もちろんそこをデザインするのも我々の仕事ですが(笑)。

たとえば、レコード盤には溝が刻まれていて、その溝をとおる針を震わせて、振動を増幅させて音が出ます。この仕組みがアナログだからなんとなくわかる。でもCDのデジタル音源になると、仕組みがわからない。デジタルとアナログは、ここが大きくちがいます。

CDはレコードの形状を真似てデザインされたものなので、レコードを知っているひとは感覚的に使えます。でも音源がどうやって音になるか、感覚が追いつかない。ヒトの感覚は、機械のように急激に進化していないですから。

でも、レコードは溝のちがいで音がちがってくるし、キズがつけば音が飛ぶことは感覚的にわかる。こういうプロダクトは、愛着をもちやすい。“替えの利かない”ものだから、愛着がもちやすいんです。

連載・the rumored “CHALIE VICE”|第1回 愛着のもてるデジタルガジェット

連載・the rumored “CHALIE VICE”|第1回 愛着のもてるデジタルガジェット

こういう、仕組みと感覚とシンクロするプロダクト、シンプルで用途がはっきりしているデザインは愛着が湧きやすい。チャーリーが選んだガジェットやApple製品は、デジタルでありながら、ヒトの感覚に寄り添う、アナログの道具のような感覚を備えているようにおもいます。

――ほかに愛着をもちやすいデジタル製品というと、どんなものがありますか?

コンピューターでは、Macは愛着が湧きやすいと感じます。昔のコンピューターは、ヒトと対峙しているイメージが強かったのですが、Macはヒトがもっと昔から使ってきた“道具”に近い感覚があるようにおもいます。昔のレインボーカラーのリンゴマークのときから、そんな感じ。

もちろんデジタルなんだけど、Appleのデバイスはずっと道具のような感覚があって、最新のMacbookにもそれは貫かれているようにおもいます。Macbookは、全体がシンプルに見えるように、デザインされています。あたらしいMacbookはインターフェースが、たったひとつのポートにまとめられていて、“余計なもの”をつなぐことができません。マシンを使うことに没頭できるから、道具に近い使い心地がある。しかも薄く軽く、もち歩きやすくなっています。

Macを使っていると、手になじんでくるような感じがあって、自分のMacをほかの誰かに使われたくないし、ほかの誰かのMacを使うのも抵抗があるんです。

チャーリーが選んだ製品も、Appleのデザインと似たアプローチでつくられているのかなとおもいました。多機能でなんでもできるガジェットではなく、シンプルな機能だからヒトの感覚や暮らしになじむ。手になじんで、パーソナルなプロダクトになっていく――――。そんな感じがするんです。


角田陽太|KAKUDA Yota
デザイナー。仙台市生まれ。2003年渡英し、さまざまな事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年、YOTA KAKUDA DESIGNを設立。OPENERSにて東京浪漫酒場を連載中
http://www.yotakakuda.com/

チャーリー・ヴァイス|CHALIE VICE
年齢・職業・出身地などは不明だが、旅行好きでさまざまな国へ行っては、文化や風習に感銘を受けてセンスを磨き、音楽、写真、料理など多彩な分野に通じた“粋な遊びの達人”。旅先での出会いから、世界中に友人も多い。伊勢丹新宿店メンズ館8Fの「THE GALLERY by CHALIE VICE」では彼が世界中で出合った、人生を豊かにするモノ・コトがシェアされている
http://chalievice.com/

           
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