フォトキナ2012|最大のトピックは、 手が届く“フルサイズセンサー”
DESIGN / DIGITAL
2015年1月6日

フォトキナ2012|最大のトピックは、 手が届く“フルサイズセンサー”

フォトキナ2012

最大のトピックは、 手が届く“フルサイズセンサー”

去る9月18日から23日まで、ドイツ・ケルンで2年ぶりに開催された世界最大の写真・映像見本市「フォトキナ2012」(正式名はフォトキナ ワールド・オブ・イメージング)。
地元ドイツの名門ライカを筆頭に、ニコンやキヤノン、ソニー、パナソニック、富士フイルム、リコー(&ペンタックス)、カシオ、エプソンなど日本のカメラメーカーもこぞって参加、新製品を発表・展示した。今回の最大のトピックは何か?
それは“身近なフルサイズセンサー搭載モデル”だ。

Text & Photographs by SHIBUYA Yasuhito

ハイアマチュア向けレンズ交換式一眼レフも、フルサイズセンサーの時代に

カメラ好きの方には改めて解説するまでもないだろうが、フルサイズセンサーとは、銀塩の35mmフィルムの1コマ(ライカ判)のサイズ、横36×縦24mm程度(メーカーによって若干のサイズ違いがある)のイメージセンサー(固体撮像素子)のこと。

会場ブースを結ぶスペースでは写真展などの企画も行われる

リコーとペンタックスは今回、初めてひとつの会社として出展した

有効画素数は3600万画素から2400万画素。撮像素子のサイズが35mmフィルムと同じなので、現在、プロ用以外のデジタル一眼に採用されている一般的に採用されているAPS-Cサイズ(APSカメラシステムの場合は23.4×16.7mmでこのあたりのサイズをこう呼ぶ)よりはるかに大きい。そのため、画像1枚当たりの情報量が増える。さらに、撮像素子1画素分の絶対的なサイズも大きいので、感度も良くなる(ちなみにAPS-Cの場合、センサー全体の面積はフルサイズの約40%程度に過ぎない)。またAPS-Cサイズでは画角の関係で、35mmフィルムカメラ用システム用に設計されたレンズを使うと焦点距離が約1.5~1.6倍相当になってしまう。つまりワイド側が使えなくなるのだ。
フルサイズセンサーならこうした問題はない。

しかしフルサイズセンサーの搭載は、キヤノン、ニコンのレンズ交換式一眼レフの一部モデルを除けば、プロ向け、ハイエンドなアマチュア向けモデルに限られてきた。その理由は、センサーがAPS-Cサイズより格段に高価なこと、高価で高性能な画像処理エンジン(回路)が必要なこと、レンズの性能がストレートに出る、などの理由からだ。プロ機でないフルサイズ機でも、ボディのみで30万円前後という高価さもあり、購入者は限られていた。

今年のフォトキナでは、この“フルサイズセンサーの常識”を覆すアマチュア向けの小型・軽量・低価格のレンズ交換式フルサイズセンサー搭載一眼レフのニューモデルが、キヤノン、ニコン、ソニーから揃って登場した。会場で来場者が押しかけて賑わっていたのは、こうした「新時代のフルサイズセンサー搭載レンズ交換式一眼レフ」の展示コーナーだった。

コンデジながらフルサイズセンサーを搭載して話題のソニー「Cyber-shot DSC-RX1」

フォトキナでもRX-1は注目の的。「ひと目見よう」という人で賑わっていた

ソニーはレンズ交換式一眼レフの最上位モデル「α99」、コンパクトデジタルカメラの「サイバーショット DSC-RX1」、レンズ交換式HDビデオカメラレコーダ「ハンディカム NEX-VG900」という“フルサイズトリオ”をフォトキナ直前の9月12日に発表して“フルサイズセンサー時代”をアピールした。

ニコンもフォトキナ直前の9月13日に、従来のフルサイズセンサー搭載モデルより格段に小型・軽量で身近な価格の「ニコンD600」を発表、発売。

「EOS 5D」シリーズで2005年以来、ハイアマチュア向けのレンズ交換式フルサイズセンサー搭載一眼レフの世界をリードしてきたキヤノンは、フォトキナのプレスデイである9月17日に世界最軽量となる新シリーズ第1号機「EOS 6D」を発表・公開している。

フルサイズセンサー搭載デジタル一眼レフの世界をグッと身近にしたEOS 6DとニコンD600のブースは、常に賑わっていた。
画素数などスペックの違いはあるが、直販サイトでのボディのみの価格は、EOS 6Dが19万8000円(12月上旬発売予定)、ニコンD600が21万8000円(発売中)と、従来のフルサイズセンサー搭載モデルより価格も手頃に、またサイズも小さく、重さも軽くなった。
“アマチュア一眼もフルサイズセンサー搭載モデル”の時代の幕が上がったのである。

ニコンの「D600」コーナーは、実機を手に真剣な眼差しの人でいっぱい

ビデオカメラまで幅広い展示のキヤノンブース

ヨーロッパでも静かに“ミラーレス”ブーム

そしてフォトキナ2012のもうひとつのトピックが、ミラーレス一眼の進化・発展だ。

世界初公開となった富士フイルムのレンズ交換式プレミアムミラーレス一眼「X-E1」を筆頭に、キヤノン初のミラーレス一眼「EOS M」、パナソニックの「LUMIX DMC-GH3」、ニコンの「Nikon1 J2」、オリンパスの「OLYMPUS PEN Lite E-PL5」「同mini E-PM2」、ペンタックスリコーのダブルブランドネームでは初出展となったペンタックスの超小型ミラーレス一眼「PENTAX Q10」など、新製品の数ではフルサイズセンサー搭載一眼モデルをはるかに超える充実ぶり。ソニーとの技術提携で今回発表されたソニーEマウントのハッセルブラッドのミラーレス一眼「Luna(ルナ)」も初公開された。

こうしたミラーレス一眼モデルに対する入場者の反応も上々の様子。
特にキヤノンの「EOS M」コーナーはいつも盛況。また、ペンタックスリコーブースのQ10のコーナーでは、立ち止まってじっくり吟味する女性の姿が印象的だった。
これまで「欧米市場では人気はいまひとつ」と言われてきたミラーレス一眼だが、着実に人気は高まりつつある。

キヤノンも今月ついにミラーレスを発売する

ハッセルブラッドは、ソニーEマウントを採用した「Luner」のプロトタイプが人気

フォトキナ2012に続いて、2013年1月末から日本のパシフィコ横浜で「CP+(シーピープラス)2013」が開催される。こちらではレンズ交換式一眼レフ、そしてミラーレス一眼レフに、さらにどんな進化・発展があるのか。横浜での展開も楽しみだ。

           
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