CES 2017 リポート 家電・エレクトロニクス編|Consumer Electronics Show 2017
DESIGN / DIGITAL
2017年2月22日

CES 2017 リポート 家電・エレクトロニクス編|Consumer Electronics Show 2017

CEO 2017 家電・エレクトロニクス編

カジノの街によぎるイリュージョン

2017年1月4日から8日まで北米ラスベガスで開催されたコンシューマ エレクトロニクス ショー(CES)2017。すでに公開済みのリポート前編では、内外のカーメーカーからの出展にフォーカスしたが、後編では主役たる家電・エレクトロニクスの動向について紹介する。

Text & Photos by Akio Lorenzo OYA /  Mari OYA

今年のスターはIoT家電をつかさどるスマートハブ

世界屈指の家電・エレクトロニクス・ショー「CES」が2017年1月4日から8日まで米国ラスベガスで開催された。50周年を迎えた今年は、150を超える国と地域から3800を超える企業・団体が参加、来場者は16万5千人を数えた。

2016年には我こそがApple Watchのライバルといわんばかりの各社のスマートウォッチが脚光を浴びたが、今年それは出尽くした感があった。ドローンも各国の飛行規制を受けて元気を失った。

だが失望することはない。今年のスターを挙げるなら、IoT家電をつかさどるスマートハブであろう。

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SIGNATURE はLGエレクトロニクスのプレミアムブランド。これはその新シリーズである有機ELテレビ「OLED TV W」。パネルの厚さはわずか2.57mmである

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Amazonの音声認識 Alexaを搭載したスマート冷蔵庫「LG Smart InstaView」。音声コマンドによって庫内に不足した商品を注文したり、レシピ検索や天気予報の確認も可能だ

核となるのは2016年米国のクリスマス商戦でヒットを記録したアマゾンの音声認識スピーカー「エコーEcho」と、それを用いた音声認識デバイス「アレクサAlexa」である。

今回のCESではその活用例が満開の様相を呈した。たとえばLGエレクトロニクスはアレクサを搭載したスマート冷蔵庫を発表。ディスプレイに語りかけるだけで食品の買い物注文が完了できる。

家電メーカーだけではない。自動車ブランドのフォードやフォルクスワーゲンも、クルマと家をインターネットで繋ぐデバイスとして「アレクサ」をスタンダードとする勢いだ。

会場のあちこちで、デバイスを起動するキーワードである「アレクサ!」を、マシンに向かって呼びかける姿がみられた。

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カジノの街によぎるイリュージョン(2)

地道な進歩を遂げている3Dプリンター

同様に家電メーカーからは、ホームアプライアンスと連動しつつ、ユーザーとのコミュニケーション機能をもった家庭用ロボットがいくつも提案されていた。ちなみにそれらのデザインは、図らずもひと目で各社のブランドアイデンティティが色濃く反映されていた。

いっぽうで、数年前まで脚光を浴びていたガジェットも、地道な進歩を遂げていることを忘れてはいけない。好例は3Dプリンターである。

今年80周年を迎えたポラロイドは、新型3Dプリンター「PLN1」を公開した。製作できる立体のサイズは最大12×12×12cmに留まるが、ボディサイズは僅か27×27×27cmのキューブ状である。

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人工知能を搭載した「LG HUB ROBOT Mini」 。声を通じてスマート家電の洗濯機・掃除機に指示を与えたり、音楽をストリーミング再生することもできる。

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ポラロイドが公開した新型3Dプリンター「PLN1」。キューブ状のボディサイズは僅か27×27×27cm。最大で12×12×12cmの立体を製作できる。

前回のCESで米国プレミアしたモデルも、従来製品に比べコンパクトなサイズでビジターたちを驚かせたが、今回はそれを上回るインパクトをもたらした。

同社はこのPLN1で、3Dプリンターに、いよいよ一般家庭のドアを開かせることを目論んでいる。

3Dプリンティングの世界はまだまだ広がっていた。キヤノンのブースでは、同社米国法人とパートナーシップを組む企業「ソリディフィ」が、カスタムメイドの3Dフュギュアを展開して人気を呼んでいた。

同様のものはすでに日本でもサービスが始まっているが、アニバーサリーのパーティー好きなアメリカでは、より盛り上がりそうだ。ウェディングケーキに載せるトッパーといわれる人形にも最適と、メーカーは説く。

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カジノの街によぎるイリュージョン(3)

近未来がすぐそこに感じられるのがCES

会場を彷徨ったあと、ネオンの滝に打たれながらカジノの街をモーテルまで戻る。テレビをオンにすると、バラク・オバマ最後のホワイトハウス生活が映しだされた。

やがてそれは、地元歯科医院のテレビCMに変わった。医院はミニバンによる送迎サービスに加え、患者にはビデオゲームマシンほかノベルティが用意されている。所変われば歯医者も変わる。

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パナソニックは「ファーストクラス・キャビン」をテーマに、4Kディスプレイを搭載した機内エンターテインメントを提案した。

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デンソーがデモンストレーションを行った「バリスタロボット」。クラウドMicrosoft Azureと連携してコーヒーを淹れてくれる。

近い未来、ミニバンは自動運転車に、ゲームマシンは子供用3Dプリンターにとって変わるのだろう。それらがあたかも明日実現するかのようなイリュージョンが頭の中をよぎる。それがCES期間のラスベガスだ。

ただし、それを映すテレビはといえば懐かしいブラウン管式だ。壁際では古い巨大なエアコンが、設定した華氏80℃にまで部屋を暖めようと必死に轟音をあげている。あまりのうるささにスイッチオフすると、壁全体が揺れた。

ハイテク製品を見た後には、リアルアメリカンな家電がことさら愛らしく感じる。これもまた事実なのである。

           
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