BOSE、クルマ、そして中国|BOSE
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2014年12月26日

BOSE、クルマ、そして中国|BOSE

BOSE|ボーズ

BOSE、クルマ、そして中国

北京モーターショーにブースを出展し、中国国内販売店も充実させるという「BOSE」。ホームオーディオ界ではもちろん、カーオーディオ界でも、もはや世界の代表的ブランドという印象がつよい。そのボーズは中国をどう評価するのか? そして中国はボーズをどう評価するのか? カーオーディオとホームオーディオの両面から大谷達也氏がリポート。北京モーターショーを話題にした第1弾につづいて、第2弾は北京の「ボーズ・ストア」を中心に、ボーズの中国展開の“いま”を紹介する。

Text by OTANI Tatsuya
Photographs by OGAWA Yoshifumi

北京でも変わらない「ボーズ・ストア」

目指すショップは商業ビルの一画にあった。隣はマクドナルド、むかいはナイキ。それは、もはやアメリカだけでなく、ヨーロッパや日本でもお馴染みにとなった、ショッピングモールの典型的な光景である。けれども、ここはロンドンでもなければ東京でもなく、ましてやニューヨークでもない。巨大市場として、また巨大生産地として経済発展著しい中国の首都、北京。われわれが訪れたのは、その北京の中心地に建つ「ボーズ・ストア」だった。

もっとも、白を基調としたインテリアやゆったりと商品をレイアウトした店内の雰囲気は、日本でよく目にするボーズ直営店と共通するもの。そこに展示されているホームシアター、パーソナルオーディオ、ヘッドホンなどの商品も、日本で販売されているものと型番をふくめてまったくおなじである。よくよく見れば、為替レートの関係で若干のちがいはあるものの、価格だって日本とほとんどかわらない。

聞けば、ボーズ・ストアを利用する中国人顧客は年収3万5000米ドル(約270万円)前後が中心。この数字自体、アメリカや日本の平均にくらべて決して高くはないが、中国では相当、裕福な部類に入る。もっとも、そういった人びとの数はもはや決して少なくないらしく、ボーズ・ストアは中国全土で90店舗、北京だけでもじつに13店舗を数えるまでになっている。私がこの店舗に立ち寄ったごく短時間のあいだにも、20歳代の男性が「コンピューターミュージックモニター」(日本で約4万円)を購入していったし、40歳代の女性は自分のiPhoneを店内の「サウンドドック10」に接続してその音質をたしかめていた。そういった光景からも、オーディオメーカーのボーズがしっかりと中国に根をおろしている様子がうかがわれた。

ホームオーディオとカーオーディオ

ボーズ・オートモーティブ・チャイナでジェネラル・マネージャーを務めるジョン・F・マーが語る。「中国の顧客は日増しに洗練されています。いまや、クォリティの低い商品は中国市場でも生き残れなくなっています」。マー自身はボーズのなかでも自動車関連の製品を取り扱う立場にあるが、中国市場におけるボーズの地位を向上させるには、ホームオーディオとカーオーディオを切り離して考えることはできないと力説する。

北京現地リポート|BOSE 2

ボーズ・オートモーティブ チャイナ ジェネラルマネジャー ジョン・F・マー氏

北京現地リポート|BOSE 2

BOSE SoundDock 10

「中国では、ボーズのホームエンターテイメント関連商品の売り上げが大変な勢いで伸びています。これは中国人のこだわりやサウンドにたいする要求が高まっていることを物語るものです。そして、ホームオーディオでボーズを体験したひとがボーズのカーオーディオを選ぶケースが増えています。じつは、それとは反対に、カーオーディオでボーズの良さを知り、ホームオーディオをご購入いただくということも増えているようです。つまり、ボーズにとってホームオーディオとカーオーディオはクルマの両輪、お互いが助け合ってセールスを伸ばしているのです」

もっとも、中国人の音楽好きはいまにはじまったことではなく、長い歴史を有しているとマーは語る。「中国の方々は伝統的に音楽を深く愛していますし、この国にはとても豊かな音楽の歴史があります。そういった文化を背景にして、ボーズのようなプレミアムオーディオへの需要が高まっているのだと考えられます」。ボーズが中国に進出したのは2002年のこと。中国本社は上海にあり、従業員は600名、そしてストアの数は前述のとおり中国全土で90店舗を数えるという。

BOSE|ボーズ

BOSE、クルマ、そして中国(2)

ホームオーディオの傾向

「顧客の男女比は男性が60パーセントで女性が40パーセント。ほとんどの方は自動車を所有していて、一軒家に住んでいます。ホームオーディオの需要が高いのは、この辺にも理由があるとおもわれます。また、30代前後の若いご夫婦は、あたらしい家を購入するときにあわせてホームシアターをご購入いただくことも多いようです」

そう説明してくれたのは、おなじボーズでもホームオーディオを取り扱う現地法人のジェネラル・マネージャー、ジョエル・タゾー。「いちばん人気は5.1chのホームシアターですね。2位は『ウェーブミュージック』などのパーソナルオーディオ。3位はiPhoneやiPodに接続できる『サウンドドック』です」

「上海や北京のような“ティア1”と呼ばれる大都市では、ホームシアターにくわえて、ワイヤレスモバイルスピーカー『サウンドリンク』、それとノイズキャンセリングヘッドホンの『クワイアットコンフォート』など、幅広い製品に人気があります。いっぽう、それよりも規模の小さなティア2、ティア3などの都市ではホームシアターが好評を博しています」。大都市でパーソナルオーディオの関心が高まっているのは、若者を中心にライフスタイルが変化しているからか? いっぽう、それ以外の地方都市でホームシアター製品に人気が集中しているのは、住環境が恵まれていることと関係がありそうだ。

北京現地リポート|BOSE 2

BOSE SoundLink Wireless Mobile speaker

北京現地リポート|BOSE 2

BOSE QuietComfort 3、QuietComfort 15、Bose AE2i

徐々に知名度を高めてきた「ボーズ」

もっとも、中国に進出した当初からすべてが順調だったかといえば、そうでもなかったらしい。10年前はボーズの知名度も決して高くなかったが、各地にストアを展開し、広告をうつなかで、徐々にその名が広まっていったという。なかでもユニークなのが、かれらがロードショーと呼ぶプロモーション活動だ。これは、ショッピングモールの中庭などに仮設のブースをつくり、そこでボーズ製品を展示するというもの。また、これとはべつに、裕福な顧客がアメリカやヨーロッパに海外旅行し、その出先でボーズを知って中国に帰ってから購入するパターンも増えてきているそうだ。さらに、2007年に中国初の直営店をオープンしてから急激に売り上げが伸びていき、いまでは年率20パーセント以上の成長率を記録しているという。

技術志向の強いユニークな製品を作りつづけるプレミアムオーディオブランド、ボーズ。その名は中国でも着実に浸透しているようだ。

           
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