CASE-REAL|福岡の飲食店「WINE & SWEETS TSUMONS」設計を語る
DESIGN / ARCHITECTURE
2015年1月7日

CASE-REAL|福岡の飲食店「WINE & SWEETS TSUMONS」設計を語る

CASE-REAL|ケース・リアル

周囲に住まう人びとの「坪庭」のような存在となることを目指した設計

福岡の飲食店「WINE & SWEETS TSUMONS」

ソムリエ兼パティシエであるオーナーのあらたな提案のための空間 ── デザイナー、二俣公一氏が主宰する「CASE-REAL(ケース・リアル)」が手がけた福岡の飲食店「WINE & SWEETS TSUMONS」が完成した。

Text by CASE-REALPhotographs by MIZUSAKI Hiroshi

二俣公一氏が解説する「WINE & SWEETS TSUMONS」

パティシエでありソムリエールでもあるオーナーによる、ワインと洋菓子というあたらしい組み合わせを楽しめる店舗の計画。敷地は福岡市中心部にある住居や中層ビルなどが乱立しているエリアで、今回の区画も非常に狭いうえに周囲を十数階建てのマンションに囲まれていましたが、いっぽうで平屋の建物というのがオーナーの希望でした。

私たちは打ち合わせを重ねるなかで、彼女のあたらしい食の提案の場が、謙虚さと凛とした強さをもちあわせる職人そのもののような佇まいであらわれることを目指すと同時に、用途や階数もバラバラで無秩序な街並みのなかに、あえて平屋を建てることについて考えました。

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屋根がもうひとつのファサードとなる

この建物は、箱型のヴォリュームのなかに南側へ大きく傾斜した片流れ屋根を組み込んで構成されています。そして道路側に販売スペース、その奥にカウンタースペースを配置し、これらふたつのスペースに面するよう南側にスタッフ動線となる通り庭を設けました。

これによって雑多な街路に対して店内の落ち着きを確保するとともに、ふたつのメインスペースの背景を柔らかな光の入る半屋外の風景とし、さらにはこの風景をフレームのない大きな水平連続窓でトリミングしています。

通り庭の仕上げには、屋根へと連続して大粒のアスファルトシングル材を用いており、水持ちがよく凹凸のある壁や屋根を、あらかじめ一部に植え込んだマメツタなどの植物が時間をかけて徐々に覆ってゆくことを想定しています。やがてはこの屋根がもうひとつの「ファサード」となり、周囲に住まう人びとの「坪庭」のような存在となることを目指しました。

背丈がある建物に囲まれたこの平屋建ての上部の空間には「空(そら)」が広がっており、それはこの建物のひとつの特徴となっています。この特徴が店舗自体(ブランド)の意義を高め、さらには街並みへと組み込まれた建物が、地域とともにより良い状況を創り出してゆくことを期待しています。

「WINE & SWEETS TSUMONS」(2014年/福岡)
設計|ケース・リアル 二俣公一 片田友樹
設計協力・施工|時空建築工房
照明計画|モデュレックス福岡 佐藤政章
家具製作|E&Y
撮影|水崎浩志

クライアント|WINE&SWEETS tsumons(http://wine-sweets.com/)
計画地|福岡県福岡市中央区高砂
計画種別|新築
用途|飲食店
計画期間|2013年2月~2014年2月
構造|木造
規模|地上1階
建築面積|65.3平米(約19.8坪)
敷地面積|87.3平米(約26.4坪)

CASE-REAL
http://www.casereal.com/

           
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