Swarovski|バーゼルワールドで吉岡徳仁が手がけたブースデザイン
DESIGN / ARCHITECTURE
2015年3月24日

Swarovski|バーゼルワールドで吉岡徳仁が手がけたブースデザイン

Swarovski|スワロフスキー

世界最大の時計展示会「バーゼルワールド」にて披露

吉岡徳仁が手がけた「Swarovski」ブースデザイン(1)

「Wings of Sparkle(輝きの翼)」、輝きの光に包まれ、クリスタルの夢の中へ──スイス・バーゼルで開催された世界最大の時計展示会「バーゼルワールド」で、吉岡徳仁氏が手がけたスワロフスキーのブースデザインが話題をさらった。

Text by KAJII Makoto (OPENERS)

輝きのなかに包まれることで、“光そのもの”を体感できる

今回のブースデザインは、スワロフスキーのクリスタルファセットをイメージ。LEDストロボをまるで結晶構造のように連結させたスパークルウォールは、強くエレガントな輝きを放って、大きな曲線とダイナミックな光の空間を創り出した。

輝きのなかにひとが包まれることで、そのクリスタルの輝きの中に入るような“光そのもの”を体感でき、表面的なデザインではなく、スワロフスキーの「輝きの世界」とその美しさの追求を表現。湖の白鳥が優雅に翼をひらくように、強く美しい煌めきを放つ「輝きの翼」を具現化している。

バーゼルワールド|吉岡徳仁 02

バーゼルワールド|吉岡徳仁 03

吉岡徳仁が解説する今回のスワロフスキー・プロジェクト

──ブースデザインは、どこからインスピレーションを得ていますか?

水辺に反射する光、星の瞬きなどの、「ランダムな自然の光と輝き」にインスピレーションを得ています。

──その裏側にあるオリジナルのアイデアは何ですか?

巨大なカーブを描くファサードの表面は、スワロフスキーのファセットを象徴するような、ミラー加工されたストロボLEDからなる六角形のメタル反射板によって形成。それがおよそ2万3千枚集まることにより巨大な壁をつくりだします。25万ものLEDを反射板に巧みに設置し映し出される映像は、コンピュータプログラムによって、まるで水面のようにランダムでまばゆい光を放ちます。

──ブースをデザインするために、スワロフスキーからどんな要素を取り入れていますか?

スワロフスキーの輝きの歴史と、輝きへの美の追求です。

──このデザインにいきつくまでにどれほどの時間がかかっていますか?

2011年11月からです。

──このプロジェクトに参加するにあたって、担当したのはプロジェクト全体のプロセスですか? それともデザインパートだけですか?

デザイン提案から、2013年4月の完成にいたるまでプロジェクト全体のプロセスに携わっています。

Swarovski|スワロフスキー

世界最大の時計展示会「バーゼルワールド」にて披露

吉岡徳仁が手がけた「Swarovski」ブースデザイン(2)

一つひとつの美しい輝きが重なりあうことで、大きな光の翼へと変化

──今回の制作において制限はありましたか?

制限ではありませんが、スパークルウォールについては、訪れた人びとが輝きに包まれるように、輝き方についてあらゆる実験をおこないました。そのプロセスはまさにチャレンジでした。スワロフスキーの技術者の協力によって実現することができました。

──なぜ「輝きの翼(Wings of Sparkle)と呼ぶのですか?

スワロフスキーのシンボルでもある白鳥の翼の優雅な羽ばたきをイメージし、ファサードでは大きな曲線とダイナミックな光の空間をつくりだすことで、スワロフスキーのクリスタルの輝きの世界を表現しています。スパークルウォールは、白鳥の翼のように強くエレガントな煌めきを放ちます。

──「光を詩的に表現する」と話されていましたが、このブースを通してどのように表現されていますか?

一つひとつの美しい輝きが重なりあうことで、大きな光の翼へと変化します。

──あなたにとってスワロフスキーのクリスタルとは?

スワロフスキーの歴史を学び、クリスタルそのものに触れるなかで、クリスタルのもつ透明性が生み出す輝きと詩的な美しさという魅力に惹き込まれていきました。詩的な透明感と、それ自体は透明でありながらも、光や輝きを捉えることができるスワロフスキーのクリスタルという素材の美しさに魅了されています。

バーゼルワールド|吉岡徳仁 05

バーゼルワールド|吉岡徳仁 06

吉岡徳仁が語る、スワロフスキーとのコラボレーション・プロジェクト

──これまでに、数多くスワロフスキーとのコラボレーションを手がけていらっしゃいますが、それらについてもお話いただけますか?

「Swarovski Crystal Palace」では、3回にわたってコラボレーションさせていただいています。スワロフスキーとの最初のコラボレーションとなったのは、2005年に発表した、光ファイバーによって一つひとつのクリスタルが光を放ち、映像が映し出される未来的なシャンデリア「STARDUST」です。そして2008年に、スワロフスキー最大のクリスタルを使ってつくられた椅子「Eternal」、2010年には、無数の力強い光線を放つ人工の星をイメージした「Steller」を発表しました。

2010年には“Crystal Forest(クリスタル・フォレスト)”というデザインコンセプトのもとスワロフスキー初のフラッグシップストア「SWAROVSKI GINZA」をデザインしました。まるでクリスタルの森に迷い込んだような不思議な感覚の空間をつくることを試みました。最大の特徴となったビルのファサードは、あらゆる角度からリフレクションを放つ1500本近いステンレスミラーのレリーフによって構成。まるでクリスタルの滝が流れ落ちてくるように、そしてまわりの風景を反射させて不思議な表情を映し出し、朝から夜へ時間とともに絶えずその表情を変化させていくようにデザインしました。

2009年には、バーゼルブース「Lake of Shimmer」をデザインしました。クリスタルの輝きの美しさを彷彿させる16万もの小さなミラーがファサードにほどこされ、風に揺れることで、湖の表面に美しい波紋を広げる太陽の光のように、ブースに煌めきをもたらすデザインです。

そして2012年には、スペシャルモデルウォッチ「“LAKE OF SHIMMER”-AVANT Time N˚ 3」が発表されました。文字盤は12面にカットされた一塊のクリスタルでできており、まさに輝く12のファセットによって時の経過が表現される、スワロフスキーの詩的でエレガントなエッセンスを凝縮した時計です。美しい反射を生み出すステンレススティール製の小さなヘキサゴンパネルで構築されたブレスレットは、前述の2009年のブース「Lake of Shimmer」のファサードから着想を得ています。

バーゼルワールド|吉岡徳仁 07

このようなさまざまなプロジェクトを通して、私のデザインに対する考え方、そしてクリスタルに対する解釈を理解していただき、今回ふたたびコラボレーションの実現へとつながったのではないかと思っています。

吉岡徳仁デザイン事務所
www.tokujin.com

           
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