マルクト|MARKTE
Design
2015年4月22日

マルクト|MARKTE

マルクト|MARKTE

「リドルデザインバンク」がディレクションを担当

江戸の時代からつづく商業の中心地としてさかえた日本橋界隈。近年、このエリアには魅力あるショップやギャラリーが集まりつつある。今回は、デザインや建築の観点からも注目を集める東・東京エリアから、雑居ビルの3階に店をかまえる「マルクト」を紹介。

写真と文=加藤孝司

真っ先に思い浮かぶのは、東欧のアンティーク雑貨

今回紹介するドイツ生まれの雑貨を中心に扱うマルクトがある東神田の辺りは、江戸のころより繊維問屋街として趨勢をきわめ、現在もその名残を残す活気のあるエリアだ。しかしバブル崩壊以降、歴史はあっても古い建物の多いこの地は、経済の中心からはずれ、魅力ある街でありながら東京のなかで取り残されてきた感がいなめない。

しかしそんな街も近年変わりはじめてきた。不動産という視点からは敬遠されてきたこの街に残る古い建物も、堅牢なつくりのうえに空間に趣きがあり、広々していて、なにより賃料も比較的安い。そんないままで古いというだけでマイナスと思われていたことが利点にかわり、東京の東エリアに若いクリエーターたちが集まる理由になっている。

マルクトが入っている「アガタ・タケザワビル」もその例にもれず、近年ほぼ空きビル状態であったという。しかし現在ではほかにも、ギャラリーやカフェレストラン、アトリエがひとつ屋根の下に軒を連ねる賑わいをみせはじめている。またこのエリアは、過密と過疎化という相反することが同時多発的におこる東京で、都心にある空きの目立つ倉庫や事務所物件を、住居やショップ、ギャラリーといったほかの用途に転用する「コンバージョン」の実験を行うには願ってもない場所でもある。

さて肝心のショップの話だが、カラフルな雑貨店であるマルクトといえば、真っ先に思い浮かぶのが東欧のアンティーク雑貨だろう。お店に入ると旧東西ドイツ時代のアンティーク雑貨や、ヴィンテージのテーブルウェアやファブリック、カラフルなロゴの入ったエコバッグ、ポスターなどが目に入ってくる。人気玩具「プレイモービル」の、ドイツモノのヴィンテージなんていうレアものに遭遇することができる。

ショップのロゴがプリントされたTシャツや、通常の5倍の寿命をほこる、漁船などで使用される電球にメッセージを加えたビッグバッグライト、ドイツで使われているコンセントタップをリサイクルしたプラグストラップといった、個性的なオリジナルプロダクトも販売。人気のフライターグのバッグもほどよくセレクトされて並んでいる。

グラフィックデザインやプロダクトデザイン、書籍の編集、イベントオーガナイズなど幅広く手がける「リドルデザインバンク」がディレクションを担当するマルクトだけに、そのセレクトもバラエティ豊かだ。なかでもソックスをぬいぐるみにしたドイツ生まれの「sockmates」は、マルクトの店長である塚本太朗さんが惚れ込んだ一品。ハンドメイドで一点ずつつくられる、なんともユニークでかわいらしいキャラクター性をもったぬいぐるみたちは、上質なウールの柔らかな手触り感もあって、プライベートルームやオフィスでの癒しアイテムになることは間違いない。

以前、駒込にお店があったころから、そのショップ名のとおり青空市場のような楽しさは変わらない。その楽しさとは、そこに置かれたオーナー自らおもむき、足であつめた雑貨たちが私たちに語りかける、彼の地の人びとの生活に近いものではないだろうか。

店内にはいたるところにノスタルジーあふれる雰囲気が漂うのだが、その空間にそこはかとなく流れるのは、日常を楽しくするためのアイデアに満ちたデザインが、当たり前のように平等に日常にある喜びでもある。それは経済の中心から取り残されながらも、古いモノがもつ懐古趣味的な側面とは異なる視点から再び注目を集めはじめた、この街の在り方とも重なる。豊かさは新しさや相対的な価値の高さでははかることはできない。そんなことを教えてくれるショップといえるだろう。

MARKTE(マルクト)
東京都千代田区東神田1-2-11
アガタ・タケザワビル 305
営業時間|12:00~19:00
定休日|日曜祝日
Tel. 03-5926-5511
http://www.riddledesign.cc

           
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