QUICO|キコ
QUICO|キコ
優秀なデザインが根本に宿している機能と美しさ
表参道の喧騒からのがれるようにわき道にそれると、クルマの通りも少ない静かな小道が街の奥までつづいている。インテリアやファッションのちいさな店、ヘアサロンが静かに軒を連ねる神宮前の裏道。そのなかほどにある白い壁のモダンな建物が、デザインとプロダクトを扱うQUICOという店だ。
写真と文=加藤孝司
オーナーの視点から集められた工芸や民芸的なクラフト類
大きなガラス窓越しに明るい光りが射し込む店内には、世界じゅうから集められた良質なデザインがならんでいる。北欧のヴィンテージの家具やオブジェクト、手作業の卓越した技術とぬくもりが作品にこめられた日用の器。一見シュールだかよくみると具象的な絵画、アノニマスな名もなき名工がつくった美しい日用品……。
2005年初夏に表参道の裏道にオープンした「キコ」は、性別や年齢を問わず楽しみながらショッピングすることができる、インテリアやデザイン性の高い小物などをあつかうショップだ。
韓国出身の陶芸家・李 英才(リヨンゼ)の陶器は、キコがリコメンドするもののひとつだ。彼女は現在、ドイツのマルガレーテンヘーエ陶器工房のディレクターをつとめる世界的に人気の高い陶芸家。モダンに素朴さをミックスした陶器は、日常使いのための確かさと健気さをもっていながら、彫刻作品のような一点ものの美しさを備えている。バウハウスの理念を今に伝える工房だけに、その作風には起源の器としてのプリミティブさと機能美があふれている。
ビヨルン・ウェクストロムのジュエリーや、ラオスなどの少数民族がつくるチャームやヴィンテージのビーズなどを繋ぎ合わせたアクセサリーは、アートとクラフトのちがいこそあれ、自分への日常のご褒美や気のきいた贈り物としても最適だ。
またオーナーの視点から集められた工芸や民芸的なクラフト類も、この店に深みをあたえているもののひとつだ。
ケヤキやサクラを材に一点一点削りだされてつくられた木製カトラリー、まげわっぱやかご。それらはハイセンスなインテリアや室内空間に置いてもしっくりとなじみ、都会的な感性にも十分の刺激を与えてくれる。
空間そのものの美しさも特筆すべき点だ。扉を開けた瞬間からはじまる、ゆたかな空間体験もこのショップの魅力になっている。
設計は数々の優れたモダン建築を手がけている坂本一成氏。ショップというものの機能を満たしつつ、「建築」といった意味でも、魅力を十二分に発揮している。この建物に採用された空間を最大限にいかすスキップフロアという構成は、フロアごとの連なりを遮断することなくゆるやかに繋げることが可能。ひとつのコンセプトをもったショップといった形態には最適なスタイルであるといえるだろう。
優秀なデザインが根本に宿している機能と美しさは、人がなにげない日常に使う品にこそ素直なかたちであらわれてくる。それは使う人とつくる人によってもたらされる健気な美しさだろう。
凛とした生き方。そんな目に見えない大切なものに気づかせてくれるショップだ。
QUICO(キコ)
東京都渋谷区神宮前5-16-15
12:00~20:00
無休
Tel. 03-5464-0912
http://www.quico.jp/