CAR /
IMPRESSION
2021年5月18日
打倒ヤリスクロス&ヴェゼル？──e-POWERとプロパイロットを搭載した日産「キックス」に試乗｜NISSAN
NISSAN KICKS｜日産キックス
e-POWERとプロパイロットを搭載した日産「キックス」に試乗〜打倒ヤリスクロス？
ジュークの後継モデルという位置付けで、2020年6月に日本に導入された日産のコンパクトSUV「キックス」。海外では2016年に登場し、ブラジルや中国、タイなどで生産されているグローバルカーでもある。トヨタ「ヤリスクロス」やホンダ「ヴェゼル」など競合が顔を揃えるなか、同車の魅力を探るべく試乗した。
Text & Photographs by HARA Akira
進化したe-POWERとプロパイロットの走り
ほんの少し前まで、日産のコンパクトSUVといえば「ジューク」だった。それがフルモデルチェンジを機に日本への導入がなくなり、“代わり”として新たにデビューしたのが「キックス」だ。ただしこのキックス、海外ではすでに2016年から生産が開始されていて、初出しはブラジルから。その後メキシコや中国、タイなど世界中で生産が開始されることになり、実は日本でデビューしたモデルも生産はタイで行われている。
ただし日本向けのキックスは、右ハンドル化と内外装の高級化がなされ、さらに日産が誇る運転支援システム「プロパイロット」を標準で装備。そしてパワートレインも虎の子の「e-POWER」を搭載することで、トヨタのヤリスクロスやホンダのヴェゼルとキッチリ勝負できるモデルに仕上がっているはずだ。横浜市内の一般道と高速を走り、出来栄えを確かめてみた。
試乗したのは、インテリアがちょっと派手目のオレンジとブラックのツートーンとなる上級モデルの「Xツートーンインテリアエディション」（286万9,900円）だ。ボディカラーもプレミアムホライズオレンジとブラックルーフのツートーンなのでとても明るい印象だ。
日産の小型車向けである「Vプラットフォーム」を採用したボディは、全長4,290×全幅1,760×全高1,690mmで、サイズ的にはBセグメントとCセグメントの中間あたり。これは世界のコンパクトSUVのトレンドであり、今最も使いやすい大きさのボディをまとったことになる。
搭載するシリーズ式ハイブリッドの電動パワートレイン「e-POWER」は、82ps（60kW）/6,000rpm、103Nm/3,600〜5,200rpmを発生する1.2リッター３気筒を発電専用エンジンとし、1.5kWhの小型リチウムイオンバッテリーと、最高出力129ps（95kW）/4,000〜8,992rpm、最大トルク260Nm/500〜3,008rpmの走行用モーターによって前輪を駆動する、というもの。
つまり走る時はほとんどモーターを使用するので、大きなトルクを利用して低速から気持ちよく加速し、当然音も静かなのである。初期型ノートなどでは、電池が減ってくると状況に構わず充電のためにエンジンが始動してその音が「ウルサイ」という評判をよく聞いたものだが、キックスでは車輪の回転数をチェックすることで走行音が高まった時を狙ってエンジンをかけるという方式に改めているという。
シフトレバーの根本にあるドライブモードボタンでS（スマート）かECOを選択すれば、ワンペダル走行が可能になる。出始めの頃のワンペダルは、アクセルから足を離すと結構な減速Gが一気に伝わってきて上手にスピードをコントロールするのが難しかったけれども、キックスではその辺りの調整が進み、なめらかに減速ができるようになった。慣れれば停止線にぴたりと止められるようになるのでいいな、と思っていたら、最新型のノートでは停止時にきちんとブレーキペダルを踏む方法に変更されたのだと後から聞いた。
キックスが搭載する運転支援システムの「プロパイロット」は、ハンズオフができるプロパイロット2.0ではなく、通常のもの。ステアリングホイールの右スポークにあるボタンで起動する追従運転時は、メーターの表示が大きくて作動状況が分かりやすく、初期型にあった鼻先がカクカクするような動きもなくてとても使いやすい。
足回りは少し硬め。背の高い小型SUVで揺れを最小限に収めるためには、こうしたサスペンションのセッティングは仕方のないところか。良路ではスムーズな乗り味をみせるけれど、路面が悪かったり段差があったりするとちょっとショックが大きめになる。タイヤは205/55R17サイズで、試乗車はスタッドレスのブリヂストン「VRX-2」を履いていた。燃費はWLTCモードで21.6km/ℓ。試乗時のメーターでは平均で16.0〜18.0km/ℓあたりを表示することが多かった。