第5世代最終型に乗ってかんじるマスタングの魅力|Ford
CAR / IMPRESSION
2015年1月6日

第5世代最終型に乗ってかんじるマスタングの魅力|Ford

Ford Mustang V6 Convertible|フォード マスタング V6 コンバーチブル

だれもが憧れたアメリカンスポーツカーの象徴

第5世代最終型に乗って考えるマスタングの魅力

あたらしい第6世代の「マスタング」が12月5日に発表されたとはいえ、現行第5世代モデルの魅力はまだまだ色あせない。ロサンゼルス オートショー取材のさい現地で借り出した「マスタング V6 コンバーチブル」からは、アメリカンスポーツカーを代表する存在感と、ファンなドライビングテイストを確認することができた。だれもがステアリングを握ると、50年もの長いあいだ、アメリカのスポーツカーを牽引してきた人気の高さが伊達ではないことを、感じとれるはずである。

Text by SAKURAI KenichiPhotographs by WATANABE Shinsuke

5世代目の最終マスタングに乗るわけ

11月下旬に開催されたロサンゼルス モーターショーの取材のために渡米し、現地の移動をどうするかかんがえたとき、まっさきにおもい浮かんだのが、「マスタング」のコンバーチブルに乗りたいということであった。

すでにご存知のように、マスタングは、12月5日に第6世代のニューモデルが発表された(予想以上にスタイリッシュで、一瞬でノックアウトされた)が、LAモーターショーの取材時は、その直前のタイミング。ただし、いっぽうでフォードはすでに12月5日の発表を予告していたので、現行モデルの最終型をもう一度味わっておきたいという理由もあった。

とはいえ、第6世代の新型「マスタング」は北米でも2015年モデルとして発表されるため、市場導入は早くても2014年後半になるはずだ。日本上陸はさらにその少し先になると見込まれ、まだまだ現行モデルを購入するチャンスはある。なにせ、ニューモデルが公開されたとはいえ、正式なプロダクションモデルの発表までには、もう少し待たねばならないのだ。

そして4月17日には、誕生50周年の盛大なバースデーイベントが控えている。つまり、2014年は、「マスタング」一色の記念イヤーである反面、期待のニューモデルを手にするまでには少々時間がかかってしまうということも事実である。

マスタング コンバーチブルを選んだ理由は、もうひとつある。今回の車両、じつは「ハーツ」のレンタカーだ。空路での移動が一般的なアメリカでは、レンタカーも広く抵抗なく受け入れられている。もちろん自動車大国だけあって東海岸から西海岸まで何日もかけて愛車で往復する猛者もいるが、忙しい旅行者にとっては、飛行機+レンタカーがなによりも頼りになる存在だ。

日本の一般的なレンタカー会社とおなじように、アメリカでも普通は“コンパクト”や“インターミディエイト”などクラスは決められるが、どんなクルマがくるかは現地に行ってみるまでわからない。ところが、ハーツでは、カテゴリーやクラスでクルマを選べるほか、さらに一部モデルでは車種も選択できる。

マスタング コンバーチブルは、車種限定でピンポイント予約が可能なモデルだ。せっかくのカリフォルニア。どうせ移動をたのしむのなら、退屈なクルマよりもスポーツカーにしたいと思うのは、クルマ好きならば同意してもらえる小さなわがままではないか。

Ford Mustang V6 Convertible|フォード マスタング V6 コンバーチブル

だれもが憧れたアメリカンスポーツカーの象徴

第5世代最終型に乗って考えるマスタングの魅力 (2)

欧州車好きにこそ知ってほしいマスタングの美点

日本ではアメ車好き、あるいはツウ好みのスポーツカーという印象のマスタングも、カリフォルニアでは絶大な人気を誇るモデル。実際今回の移動中でも、対向車にはマスタングが、しかもコンバーチブルがちらほら走っていた。一日に目にする数は、ライバルたるシボレー「カマロ」よりも圧倒的に多い。日本では見かけないような派手なボディカラーを纏っている車両もあり、この地のオーナー車は、じつに個性豊かである。

日本から6,000kmも離れた地でひとりステアリングを握っていても、やはり同好の士は、なんとなく連帯感も(勝手に)芽生え、目にするだけで嬉しくなる。

オレンジカウンティからパシフィック・コースト・ハイウェイを南に下るという、海沿いのルートを走る。この道沿いの左右には、サーフショップやオシャレな小物をあつかうカリフォルニアらしいショップが軒をつらねていた。こうした道の流れに身を委ねるように走るだけで、ドライブがたのしいのもカリフォルニアならでは。潮まじりの風は、乾いた空気のなかでは心地よい。

カリフォルニアとはいえ11月の風は冷たいが、シートヒーターとエアコンのおかげでコクピットは快適そのもの。まさに頭寒足熱で、スッキリした気分で風をたのしみながら走ることができる。

日本導入モデルのコンバーチブルはV8エンジン搭載車だが、アメリカではV6モデルがどちらかと言えば人気なのだとか。エンジンはV6搭載のクーペとおなじく3.7リッターの排気量から、最高出力227kW(309ps)、最大トルク378Nm(38.7kgm)を発生。

いまどきのスポーツカーのようにことさらレスポンスを謳うようなセッティングではないが、踏めば踏んだだけ瞬時に意図したパワーが伝わり、ドライバーの意のままに走らせることができる。そこには一般的にいわれる、ダルなアメ車のフィーリングは皆無である。反対にトルクの出方が唐突でないぶん、安心して踏め、クルマをコントロールしているというイメージを強く味わえるのだ。

ステアリングは、しっとりとした手ごたえで、まわしたぶんだけクルマが忠実にノーズをインに向かせる。コーナーでは、ボディの重さを意識させることのないヒラリ感が気持ち良い。実際ボディウェイトは、このV6コンバーチブルで1,656kgでしかない。

マッチョなスタイリングながら、じつはこう見えて意外と締まったボディの持ち主なのだ。こうしたボディサイズに比較して軽量なウェイトがもたらす走りは、想像以上にクイックでコントローラブル。アメ車はフワフワしていて乗り心地は良いけれど、スポーティに走らせるなんて──とおもいこんでいる欧州車好きに教えてあげたいマスタングの美点だ。

Ford Mustang V6 Convertible|フォード マスタング V6 コンバーチブル

だれもが憧れたアメリカンスポーツカーの象徴

第5世代最終型に乗って考えるマスタングの魅力 (3)

50年愛される野生馬

どうしてもクーペにくらべボディ剛性が落ちるコンバーチブルながら、ステアリングインフォメーションは正確で、意外におもうかも知れないが機械精度の高さが窺えるのだ。クーペであれば、これにくわえて引き締まったボディがもれなくついてくるから、ワインディングでも(ボディの大きさをを気にしながらだが)狙ったとおりの走りを相当なアベレージでたのしめるはずだ。

ちなみに日本仕様のコンバーチブルのボディサイズは全長4,815×全幅1,880×全高1,415mm、ホイールベースが2,720mmという数値。一見おおきく見えるが、大型化してきたいまどきのDセグメントスポーツカーをかんがえれば、ウェイト同様に決して大柄なスポーツカーというほどではない。

ステアリングを通して伝わるフロントタイヤのグリップ感や路面の状況が、予想どおりの感覚とでもいえばいいのだろうか。自分で300psをきちんとコントロールしているフィーリングがなんともいえず快感になる。使い古された言い方をすれば、人馬一体感。アメ車が大味という評価は、残念ながらここでも「マスタング」にはあてはまらない。

現行モデルが2004年のデトロイト モーターショーで発表されてから、来年でちょうど10年。コンバーチブルは、オープンにする場合フロントウィンドウ上部のロックをはずす必要があるなど、フルオート化されたいまどきのオープンカーにくらべモデルライフの長さをかんじる部分もあることは事実だが、誕生いらい細かく改良を重ねた現行最終モデルは、走りもデザインも質感も熟成の域に達した。

幌がじゅうぶんに厚いせいで、閉めたときの静粛性も実用的なレベルを問題なく確保しており、通常はレッドで、バックのさいにおなじ箇所が白く光るLED式のテールライトデザインも秀逸である。ちなみに北米仕様のテールライトは、赤一色に統一され、これがまたスポーティなフォルムに絶妙なアクセントをもたらしている。

初代マスタングが誕生した1964年といえば、映画「オールウェイズ 三丁目の夕日」でも描かれていたように、日本がやっと戦後から立ち直り、東京タワーの建設や東京オリンピックの開催で、すこしずつ前を向きはじめていた時代である。そのときにすでにアメリカは、スペシャリティカーというカテゴリーを生み出し、マスタングに乗り、男女の区別なくクルマのある生活を謳歌していたのだ。

しかし、そんな理屈でものをかんがえずとも、カリフォルニアの、とくに海沿いに置いたマスタングは単純にカッコいい。その姿は、だれもが憧れるスポーツカーをまさに絵に描いたようなものだ。

熟成なった現行モデルに3年乗り、きたるべき6世代目に乗り換える──というのも、アメリカンスポーツカーをたのしみ尽くす方法としては悪くない。そんなことを妄想させるのも、マスタングというモデルがもつヒストリーであり、50年にわたりかわらず愛されてきた魅力なのである。

Ford Mustang V6 Premium Convertible|フォード マスタング V6 プレミアム コンバーチブル
ボディサイズ|全長 188.5 × 全幅 73.9 × 全高 55.8 inch(全長 4,788 × 全幅 1,877 × 全高 1,417 mm)
ホイールベース|107.1inch(2,720 mm)
トレッド 前/後|62.0 / 62.9 inch(1,575 / 1,598 mm )
トランク容量|9.6 ft2(272リットル)
重量|(MT)3,630 lbs. (AT)3,652 lbs.((MT)1,647 kg (AT)1,657 kg)
エンジン|3.7リッター V型6気筒 DOHC
圧縮比|10.5 : 1
ボア×ストローク|95.5 × 86.7 mm
最高出力|305 ps/ 6,500 rpm
最大トルク|280 lb.-ft(380 Nm)/ 4,250 rpm
トランスミッション|6段MT / 6段AT
駆動方式|FR

※上記は米国仕様の数値

           
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