ジャガー初の電気自動車「I-PACE」に試乗|Jaguar
CAR / IMPRESSION
2019年4月12日

ジャガー初の電気自動車「I-PACE」に試乗|Jaguar

Jaguar I-PACE|ジャガー Iペイス

ジャガー初の電気自動車「I-PACE」に試乗

英国ジャガーがフルバッテリー電気自動車(BEV)としてゼロから開発し、昨年9月から日本でも受注が開始されているミドルサイズSUV「I-PACE」。独プレミアムメーカーに先駆けて発売されるとともに、SUVタイプの市販BEVとしては米国テスラの「モデルX」に次いで2番目となる最新の電気自動車だ。欧州のモータージャーナリストによる「ヨーロッパ カー オブ ザ イヤー2019」をも受賞したその完成度を確かめるべく、横浜市内で開催された試乗会に参加した。

Text & Photographs by HARA Akira

「Beautiful」「Fast」「Intelligent」がキーワード

現在、内燃機関のみの自動車をなくす動きが世界中で広がっている。例えばUK(英国)では「2040年までにガソリン・ディーゼル車の新たな販売を禁止」、仏「英国と同じ」、独「2030年までに内燃機関の新たなる販売禁止」、中国「将来的なガソリン・ディーゼル車の製造・販売の禁止を検討」、インド「2030年までに国内新車販売の40パーセントを電気自動車に」といった具合だ。

また、3月に開催されたジュネーブモーターショーを取材したジャーナリストの話だと、会場は電気自動車オンパレードだったという。こうした中、日本で早くも販売が開始されたジャガー「I-PACE」は、BEVをいち早く市場投入する欧州プレミアム自動車メーカーとして、EV革命の最前線へ大きく飛躍させる重要なモデルである、との位置付けだ。開発のキーワードは「Beautiful」「Fast」「Intelligent」の3つ。それぞれの項目を見て行こう。

「beautiful」なエクステリア

ジャガーのイメージといえば、ロングノーズ ショートデッキのスポーツカーだが、I-PACEはその正反対。パワフルで大きなエンジンを搭載することをアピールするロングノーズは、電動化することで不要となり、短いノーズのキャブフォワードデザインを採用した。

全長4,695×全幅1,895×全高1,563mmという「F-PACE」並みのボディに2,990mmものロングホイールベースを確保。ワンモーションの流麗なラインを描くキャビンがセンターに収まるとともに、ボディの四隅に大径の22インチホイールが配された、EVらしい新鮮で美しいスタイルを誇っている。ジャガーによると、このデザインはスーパーカーのコンセプトモデル「C-X75」からインスピレーションを得たという。

一方の顔つきは、近年のジャガーそのもの。大きな開口部を持つフロントグリル中央には見慣れたジャガーのマスコットがあしらわれ、ジャガー独自の「ダブルJ」グラフィックのマトリックスLEDヘッドライトがその左右に位置する。

ボンネットには大きなエアスクープが開けられており、こちらはウインドウスクリーンからルーフライン、リアエンドにかけてなめらかな気流を作るだけでなく、バッテリーやモーター、コントロールユニットなどの“熱源”を冷却するために必要な空気を最適化する役目を担っている。またこの空気の流れによって雨粒がリアウインドウに付くことがなくなり、リアワイパーは廃止。ドアハンドルは走行中にボディと面一となるデプロイアブルタイプで、トータルのCd値(空気抵抗係数)0.29を実現している。

Jaguar I-PACE|ジャガー Iペイス

ジャガー初の電気自動車「I-PACE」に試乗(2)

「Fast」な走行性能

I-PACEは、車軸と一体化させた軽量コンパクトなジャガー製永久磁石式の電動モーターを前後輪に各1基ずつ搭載し、瞬時のトルク配分で四輪を駆動する。合計の最高出力は400ps(294kW)、最大トルク696Nm。エネルギー効率は95パーセント(内燃機関は35パーセント程度)で、総重量2,250kg(試乗車)ものボディを最高速度200km/h、100km/hまでわずか4.8秒で加速させる能力を持つ。

また、リチウムイオンバッテリーは90kWhの大容量で、WLTCモードで最大航続距離438km(国土交通省審査値)を実現。通常使用では、ほとんど残量を心配せず走り回ることができそうだ。36個のバッテリーパックは、車体の低い位置にある床一面に敷き詰められることで、低重心と前後50:50の最適な重量配分を実現し、スポーツカー「Fタイプ」並みのねじり剛性36KNm/degを誇るアルミ製(全体の94パーセント)専用アーキテクチャーボディと相まって、その走りに大きな期待が持てる。

早速一般道に乗り出してみると、その加速力にまず頬が緩む。EVなのでエンジン音がなく、車内は静粛そのものだが、アクセルを踏み込むと一瞬でバックミラーに映る後続車が豆粒になり、すぐに制限速度に到達してしまう。そこでアクセルペダルから足を離すと強力に回生ブレーキが効き、ブレーキを踏まなくても停止まで持っていくワンペダルドライブができるのだ。

これまで色々なEVに乗ってきたが、この重いものがなめらかかつ強力に加減速する様は、間違いなくトップクラスの性能と言っていい。モード選択でhigh(高回生モード)とlow(低回生モード)が選択でき、最大で0.2Gの制動力が発生し、ブレーキペダル併用でさらに0.2G、合計で0.4Gものブレーキングと発電エネルギーが発生するという。

試乗車(FIRST EDITION)の足回りには、オプションの連続可変ダンパーが装着されており、22インチの扁平タイヤを履いているにも関わらず乗り心地の悪化が感じられなかったのは、さすがにジャガー車である。コーナリングでは過大なロールが感じられず、スイスイと向きを変えてくれる操縦感覚は、SUVの域を超えている。

アクティブ サウンド デザインという機能を持っており、こちらは走行音を選択できるというもの。「ダイナミック」を選択すると、加速中に低く「グオオオ」という音が聞こえてくる。走行後に広報担当者に聞くと、あくまでEVの範疇での走行音で、かつてのEタイプのようなジャガー製高性能エンジンの音が再現されるものではない、とのことだった。

エンジン車のドライブでは当たり前のクリープも、ある、なしが選べる。

Jaguar I-PACE|ジャガー Iペイス

ジャガー初の電気自動車「I-PACE」に試乗(3)

「Intelligent」な装備

サンシェードのないUVカットの大型ガラスサンルーフによる室内は明るく、ロングホイールベースによる広い後席により、乗員すべてが快適な乗り心地を満喫できる。

インテリアは、10インチと5インチの高解像度デュアルタッチ スクリーンによるインフォテインメント システム「Touch Pro Duo」が特徴だ。速度計やナビ、追従状態などを標準で表示する眼前のデジタルメーターと合わせて3つの画面が並ぶダッシュボードは新鮮で、さらにD(ドライブ)、N(ニュートラル)、R(バック)、P(パーキング)をボタンで選べるシフトスイッチも新しい。

AI学習機能を持った「スマート セッテイング」はジャガー初採用の最新テクノロジーで、リモートキーとスマートフォンによりドライバーをI-PACEが認識。車両乗り込み時は、インフォテインメントやシート位置などが自動調整されるというもの。さらに時間の経過とともに、場所、時間、天候、行動パターンに基づいて、カスタマイズも自動で行われるという。

また、ソフトウェア アップデートにもジャガーとして初対応。車載通信モジュールによりワイヤレスでアップデートされる。

充電は、フロントフェンダー左右の給電口で行う。最大7kWのAC普通充電と、日本では50kWのCHAdeMO規格急速充電に対応。0パーセントから80パーセントまで50kWで85分、7kWなら12.6時間で100パーセントまで充電できると公表された。

価格は「S」が959万円、「SE」が1,064万円、「HS」Eが1,162万円。限定色のフォトン レッド ボディカラーや大径ホイール、パノラミックルーフなどを装備した「FIRST EDITION」は1,312万円となる。

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Jaguar I-PACE|ジャガー Iペイス
ボディ|全長 4,695 × 全幅 1,895 × 全高 1,565 mm
ホイールベース|2,990 mm
トレッド 前/後|1,624-1,641 / 1,647-1,661 mm
車輛重量|2,208 kg
モーター|2基(前車軸、後車軸)
最高出力| 294 kW(400 ps)
最大トルク|700 Nm
バッテリー|90kWh リチウムイオン
トランスミッション|1段AT
駆動方式|4WD
ブレーキ 前|ベンチレーテッドクディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドクディスク
最高速度|200 km/h
0-100km/h加速|4.8 秒
電費(WLTP値)|22.0-24.8kWh/100km
CO2排出量|0 g/km
航続距離(WLTP値)|415-470 km
最小回転半径|5.99メートル
トランク容量|505 - 1,163 リッター
価格(消費税込み)|(S)959万円  (SE)1,064万円  (HS E)1,162万円  (FIRST EDITION)1,312万円
*スペックの一部は本国仕様の参考値

問い合わせ先

ジャガーコール

0120-050-689(9:00-18:00、土日祝日を除く)

           
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