New BMW GRAN TURISMO|Chapter 1 New BMW GRAN TURISMOのすべて
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2015年4月9日

New BMW GRAN TURISMO|Chapter 1 New BMW GRAN TURISMOのすべて

Chapter 1 New BMW GRAN TURISMOのすべて

まったく新しいカテゴリーのGT

BMWのニューモデル「グランツーリスモ」がデビュー。BMWの理念たる「EfficientDynamics」に基づく数々の最新テクノロジーを、セダンとクーペとSAV(スポーツアクティビティビークル)を融合させたような優美なボディに搭載して登場した同車の魅力を明らかにする。

文=小川フミオ写真=五十嵐隆裕撮影協力=温室 塚田有一×グリーン・ワイズ

リムジンなみの室内空間

新世代、という言葉がふさわしいクルマが、BMWから発表された。名づけてグランツーリスモ。セダンとクーペとSAV(スポーツアクティビティビークル)の長所を併せ持ったスタイリングや利便性と、「エフィシエント・ダイナミクス」とBMWが呼ぶさまざまな環境技術が盛り込まれているのが特長。走りと環境適合性ともに満足させる1台だ。

ニューBMWグランツーリスモは、新しいコンセプトのリムジンといえるクルマ。グランツーリスモとは、いわば長距離ドライブ向きの、運転して楽しいクルマのことだ。このニューBMWグランツーリスモも全長5mという余裕あるサイズの車体をもつ。全長では、SAVのXシリーズのどのモデルより長い。具体的には、X3より415mm、X5より140mm、X6より115mmそれぞれグランツーリスモが上回っている。一方、全高は1565mmに留まり、Xシリーズより100mm以上低く乗用車に近い。ホイールベースはベースになった7シリーズとおなじ3070mmで、リムジンなみの室内空間が確保されている。

3リッター直列6気筒ターボと4.4リッターV型8気筒ツインターボ

グランツーリスモの要件として、快適さとともにスポーティな運動性能も重視される。日本に導入されるニューBMW5シリーズ・グランツーリスモは、3リッター直列6気筒ターボの535i Gran Turismo(878万円)と、4.4リッターV型8気筒ツインターボの550i Gran Turismo(1140万円)の2モデルだ。

535i Gran Turismoのストレートシックス・エンジンは新開発で、最高出力と最大トルクこそBMW335iなどに搭載されているパワーユニットと共通だが、ツインスクロール・ターボチャージャーをはじめ、バルブトロニック燃料直接噴射システムといった最先端のテクノロジーによって、高性能化と同時に高効率化がはかられているのが特徴だ。いっぽう550i Gran TurismoのV8エンジンは4.4リッターユニットにターボチャージャーを2基組み合わせたもので、こちらも燃料直接噴射システムで高性能/高効率の両立が目ざされている。

意外なほどスポーティなドライビング

スポーティなドライビングは、ニューBMWグランツーリスモの資質のひとつ。そのためにシャシー、ステアリング、エンジンといった基本的な骨格を磨き上げつつ、いくつもの先進的技術を採用している。

ひとつは「インテグレーテッド・アクティブ・ステアリング」だ。前輪の切れ角を車速に応じて可変制御するとともに、後輪にステアリング機能を与えることで、コーナリング時などは逆位相で俊敏な回頭性を発揮する。前後輪ともに同方向に切れる機能を併せ持つので、高速では走行安定性が高くなる。曲がりも真っ直ぐも楽しいクルマだ。

リアサスペンションにはエアスプリングを採用しているため、リアに乗員が乗り荷物をたっぷり搭載しても安定した走行性能が確保される。さらに550iに標準装備、535iにオプションで用意される「アダプティブ・ドライブ」は、エンジンの出力特性やサスペンション減衰力、くわえてステアリングスピードなどを快適性重視からスポーティまで段階的に組み合わせて選択可能にした「ダイナミック・ドライビング・コントロール」と、「ダイナミック・ダンピング・コントロール」というふたつのアクティブ・シャシー・コントロール・システムを統合制御するものだ。ブレーキング時やコーナリング時には、前後のアクスルのアクティブ・スタビライザーが反応し、効果的にボディのロールを最小限に抑えるなど、全長5mにおよぶ大きなボディには意外といえるほど、スポーティなドライビングを実現している。

高性能でありながら低燃費

そして、もうひとつの大きな特徴が「EfficientDynamics」。より少ないエネルギーでより高い性能を可能にすることを目指すという、BMWの理念に基づいた技術である。

ニューBMWグランツーリスモにおいては、そのひとつが、排気量を抑えたエンジンと過給器(ターボチャージャー)の組み合わせ。535iを例にとれば、一般的に2トンを超える車重に3リッターエンジンでは、とくに日本のようにストップ&ゴーの多い交通状況下においては発進時などにかったるさをおぼえがちだが、トルクを低回転域でたっぷりと出し、いっぽう中高回転域はターボを効かせるという設定で、BMWならではの俊敏な走りを実現している。じつに40.8kgmもの大きなトルクを1200rpmという驚くほど低い回転域から発生させているのだ。

先述したように、この直列6気筒エンジンと、550iのV8エンジンには燃料直接噴射システムも採用され、適切な量の燃料で、効率のよい燃焼をおこなう。それによって高出力化とともに、燃費の最適化を実現している。この両立こそ、「EfficientDynamics」の考え方。8速オートマチックトランスミッションも、きめ細かい変速制御によってエンジンのトルクバンドのもっとも「おいしい」ところをつねに使えると同時に、好燃費をもたらす低回転化にも貢献する。このトランスミッション自体、小型軽量化技術によって低燃費化に一役買っている。

未来への持続性を重視するスマートなドライバーに

もうひとつ、ニューBMWグランツーリスモで注目に値するのが、ブレーキエネルギー回生システムの採用だ。BMWでは「マイクロハイブリッド」と呼ぶこのシステムは、ブレーキング時と惰性走行時に、運動エネルギーを電力に変換してバッテリーに貯めるというもの。これによって、機械エネルギーを電気エネルギーに変える働きをするオルタネーターとレギュレーターの負荷を減らすことができる。それがエンジンの負荷低減にもなり、つまり燃費にもいい影響をもたらす。

BMWによると、数々の技術の採用によって、おなじ排気量の5シリーズと比較した場合、燃費が20%以上改善されているという。エンジンはより効率よくパワーを出せるし、同時に燃料消費量は少なめと、ここでも「EfficientDynamics」の目的は達成されている。

大きくて快適、速くて快楽的、そして見た目に美しい。これらが従来のBMWの大型サルーンの価値だとすると、ニューBMWグランツーリスモは環境適合性という、もうひとつ、あらたな価値を併せ持ったことになる。ちまたで話題のハイブリッドカーには、施設や素材への大きな投資が必要になるが、ニューBMWグランツーリスモのように、そういった投資を抑制しつつ、いまできるなかで最大限のことをやるというのも、大きな視野でCO2排出量を考えた時には重要なことだ。その意味で、大きくて快適、かつスポーティなサルーンには惹かれるが、サステナビリティ、つまり環境保護などによる未来への持続性を重視するスマートなドライバーにとって、ニューBMWグランツーリスモは食指が動く1台になるだろう。

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BMW 535i Gran Turismo
ボディ|全長5000×全幅1900×全高1565mm
エンジン|3ℓ 直列6気筒DOHC+ターボチャージャー
最高出力|225kW[306ps〕/5800rpm
最大トルク|400Nm[40.8kgm〕/1200~5000rpm
駆動方式|後輪駆動
トランスミッション|電子制御8速AT
価格|878万円

BMW 550i Gran Turismo
ボディ|全長5000×全幅1900×全高1565mm
エンジン|4.4ℓ V型8気筒DOHC+ターボチャージャー
最高出力|300kW[407ps〕/5500rpm
最大トルク|600Nm[61.2kgm〕/1750~4500rpm
駆動方式|後輪駆動
トランスミッション|電子制御8速AT
価格|1140万円

問い合わせ先|BMWカスタマー・サポート 0120-55-3578 (年中無休 9:00-20:00)

           
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