Truefitt and Hill|トゥルフィット&ヒル|モニターレポート|名畑政治(時計ライター)_Vol.1
Beauty
2015年5月11日

Truefitt and Hill|トゥルフィット&ヒル|モニターレポート|名畑政治(時計ライター)_Vol.1

トゥルフィット&ヒル モニターレポート

名畑政治(時計ライター)_Vol.1

堕落紳士、“究極の快楽”に出会う

ヒゲが濃い故に学生時代からヒゲ剃りに凝り、旧式な道具一式を揃えたが、忙しさにかまけ、最近ではすっかり自堕落な安直シェービングで済ますことが多くなってしまった。しかし本来、シェービングとは男だけに許された特権的なグルーミング。単にヒゲを剃るだけでなく、肌を清潔にして活性化させると同時に精神をリラックスさせるシェービングの喜びを再確認するため、トゥルフィット&ヒルのアイテムを試してみた。

写真と文/名畑政治

幻のヒゲ男はシェーバー・コレクター

ワタシは、何を隠そうヒゲが濃い。一週間ほども無精をすれば、ほぼ立派なヒゲ男と化し、その時点で会った人に“ナバタさんはヒゲ男”という記憶が刷り込まれる。だから、しばらくして再会し、すっかりヒゲを落としたワタシを見ると、決まってこう言われる。「アレッ? ヒゲ剃っちゃったんですか?」と。

こういう事態は年に数回、時計特集の原稿書きをしているときに現れる。つまり、家にこもって原稿書きをするため人と会う機会が極端に減り、その結果、極度の無精となってヒゲもじゃとなる。そんな時にたまたま会った人にとって、つまりワタシは“幻のヒゲ男”なのである。

無論、ヒゲも嫌いじゃなし、“似合う”と言ってくれる人もいる。だが、伸ばしっぱなしはうっとうしいため、普段はかなり頻繁にヒゲを剃っている。となれば当然、いい加減なシェーバーでは肌がボロボロとなるため、道具選びも慎重にならざるをえない。

それとどう関連しているのかよくわからないが、学生時代からヒゲ剃り自体はひとつの趣味で、アンティークのT字レザー(シェーバー)やシェービング・マグ、ブラシ、ヒゲ剃り専用粉石鹸などを購入し、往年の紳士気分でヒゲ剃りを楽しんでいた。

ところが昔の一枚刃レザーは肌にキビシイ。しかたなく二枚刃に換え、それが三枚刃に進化し、さらに電気シェーバーを試し、新製品を買ったりヴィンテージものを海外の蚤の市などで探したりしているウチに、ウェット(替え刃式)とドライ(電気式)の両方のシェーバーのコレクターとなってしまった。

結局、ヒゲ剃り自体はどうなったかといえば、のんびり時間がとれる場合はウェットシェービング、出かける前に急いで剃るときはドライシェービングで済ます、という方法に落ち着いた。

ただ、のんびり剃る場合でも、マグにお湯を入れ、石鹸をブラシで泡立てて、というクラシカル・スタイルではなく、お風呂に入ってスプレー式のシェービングフォームを顔に塗りたくってジョリジョリやるだけの実に味気ない“作業”となってしまった。

ところが、そんな堕落紳士のワタクシにシェービングの悦楽を再認識させてくれたのが、トゥルフィット&ヒルのグルーミング・グッズなのである。

我が家に届いたトゥルフィット&ヒルのグルーミンググッズ一式

“作業”が“悦楽”に変わる時

そのトゥルフィット&ヒルのシェービングだが、これには一連の儀式がある。まずはヒゲを柔らかくし、カミソリ負けを防ぐため「アルティメイトコンフォート プレシェーブオイル」を肌にすり込むことから“儀式”が始まる。

小さなボトルに入った、この黄色い液体は、手に取るとオイルでありながら意外にもサラリとした感触。香りはオレンジ・ドロップにも似た柑橘系で、まさにワタシの好み。肌にすり込めば爽やかに甘い香りが匂い立ち、しばし陶然となる。まさに“アルティメイトコンフォート(究極の快楽)”である。

次はシェービングフォームの出番だ。小振りのポットのような形をしたマグにお湯を入れ、そこにソープを泡立てるのが基本だが、ワタシはサンダルウッドの香りのする「シェービングクリーム」をチョイスした。

サンダルウッドとは日本で「白檀」と呼ばれる香木で、ストレスを和らげ精神をリラックスさせる効果があるという。黒いベークライト製のボウルに入ったクリームを、極上の天然アナグマの毛で仕立てられた「ウェリントン スーパーバジャーブラシ」でこすると、ねっとりときめ細かで濃密な泡が立つ。これをブラシで顔に塗っていくのだが、単に肌の上にのせるだけでなく、丹念にすり込むことで毛穴の汚れを取り除き、皮膚の新陳代謝を促進させる効果があるという。

ブラッシングに思わぬ効果アリ

たしかにアナグマの毛の感触は極上。まずはこれだけで肌がさっぱりとした気分だし、東洋的なサンダルウッドの香りも心地よい。うれしいのはこのシェービングクリームは、携帯用のチューブも併せて発売されていること。これなら旅先のホテルでも気軽に悦楽シェービングが楽しめる。

そしていよいよシェービング。トゥルフィット&ヒルの「ウェリントンレザー」は、ハンドルに適度な重さがありバランスが絶妙。最近の軽すぎるレザーとは段違いで、手にした瞬間に“剃れる!”と思わせる。

刃はジレットの「マッハIII(3枚刃)」。最近は4枚刃や5枚刃まで登場しているが、刃と刃の間隔が適度にあいている3枚刃がベスト、というのがトゥルフィット&ヒルの結論とか。実際、電動式の5枚刃も使っているが、剃り味に遜色はない。

ジレットの剃り味に感激

それにしても替え刃にジレットを選ぶとはあっぱれだ。ワタシはヒゲ剃りの刃は経験上、ジレットが一番良く剃れると思っていて、新製品が出れば思わず購入してしまう“ジレット・ファン”。だから当然、この剃り味にも満足だし、なにより近所のスーパーなどで手軽に替え刃が購入できるのがいい。

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学生時代に愛用した金属製T字レザーと国産マグ。
茶色いベークライトのレザーや替え刃は後年入手のコレクション

こうして極上グッズでの悦楽シェービングのあとは、肌のケアだ。トゥルフィット&ヒルのレシピによれば、肌のタイプによっていくつかのケア方法があるというが、どちらかというとノーマル肌なワタシは、「アフターシェーブバーム」で適度な潤いを与える方法を選ぶことにした。

日本では昔から、ヒゲ剃り後は皮膚を清潔に保つため殺菌効果のあるアルコールを含むアフターシェーブローションを塗るのが一般的だが、これだとアルコールが蒸発する際に水分まで奪うため、爽快感はあるが肌が乾燥しすぎてしまう場合が少なくない。もしもヒゲ剃り後に肌がカサカサするなら、しっとり感を重視したアフターシェーブバームがお勧め。

しかも、トゥルフィット&ヒルではバームとオーデコロンに共通の香りが用意されているので、ヒゲ剃り後にコロンを身にまとって出かける、なんて時にも同じ香りなので違和感がない。

その香りは数種あるが、ワタシが選んだのは「トラファルガー」。トゥルフィット&ヒルを生んだ大英帝国の歴史に由来するという、この伝統的な香りについては、次回で考察してみたいと思う。

トゥルフィット&ヒル

           
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