競合ひしめくC3のマーケット

わが国におけるシトロエンのラインナップ中、もっともコンパクトなC3。2010年5月6日に新世代に生まれ変わって日本に上陸した。4メートルを切る4ドアハッチバックボディに、1.6リッターエンジンを搭載している。

C3が属するマーケットは欧州ではもっとも大きく、かつライバルが多い。それゆえ各社とも製品力を高めるために多くの努力をする。C3は大きな車体を必要としないファミリー層を狙ったモデルで、4つのドアに使い大きく開くハッチゲートを備える。かつ特徴を出すため「ゼニス（天頂）」と名づけられた大きなウィンドウシールドをもつ。本国ではオプションだが日本では標準装備だ。

ひるがえって日本のマーケットはというと、やはり競合がひしめいている。97パーセントが国産というが、残りの3パーセントを、プジョー207、VWポロ、MINI、フィアット500、アルファロメオMiToなどで占めている。そこにあってプジョー・シトロエン・ジャポンでは「このマーケットは、実用性と取り回しのよさなどを重視するのと、エクステリアデザインを重要視するなど所有へのこだわりを強くもつのと、大きくいえばふたつに分かれる。そのためC3（と同時発売された2ドアのDS3）を投入しても勝算があると判断した」（広報部）としている。

フロントマスクはアグレッシブな印象

シトロエンC3のパワートレインは、120psの最高出力をもつ1.6リッター4気筒。BMWと共同開発されたもので、いまやシトロエンと親会社であるプジョーが作る製品では主力のガソリンエンジンだ。そしてこれに４段フルオートマチックトランスミッションが組み合わせられる。

スタイリング的にはさきに書いた「ゼニス」ウィンドウシールドにくわえ、あたらしくなったフロントマスクが、クルマのイメージを変えるほど大きい。新意匠となったシトロエンのエンブレム、ル・ドゥブル・シェブロンが輝くフロントグリルは大きく口を開けたようなアグレッシブな印象が強い。ヘッドランプもいわゆる吊り目型で、ぐっとアグレッシブさが増したかんじだ。

意外なほどきびきびと軽快な走り

走らせてみると、1.4リッターエンジンの従来型よりずっと活発になっている。160Ｎｍの最大トルクは4,250rpmで発生する設定だが、低回転域から加速性はよく、とくに3,000rpmの手前から力強さを感じさせる。なので高速での巡航性能は高いし、意外なほどきびきびと走ることができる。スポーティさでいうと、同時期にデビューした1.6リッターターボエンジン搭載のDS3に譲るが、それでもC3の走りには、車重が1.2トン前後と軽いため、クルマと一体化したような軽快な楽しさがある。

C3の魅力は快適性にもある。ひとつは足回りのセッティング。ごつごつ感がなく、巡航では揺れも少なくいわゆるフラットな乗り心地。また、段差などを通過するときも、いやなショックは乗員に伝わらない。コーナリングでは多少ロールが大きめだが、昔からのフランス車好きには、このソフトな味つけが人気と聞く。

開放感溢れる「ゼニス」ウィンドウシールド

もうひとつC3の快適性でいうと、室内の静粛性の高さが特筆に値する。かつてはエンジンルームからメカニカルノイズや吸排気音が盛大に入ってきていたが、新世代のC3ではそれがかなり抑制された。くわえて窓まわりからの風切り音の侵入も小さく、車内の快適性が大きいと感じられる。

「ゼニス」ウィンドウシールドは上下幅108度もの角度をもつ。従来からプジョーに採用されているグラスルーフとのちがいは、シトロエンではウィンドウシールド上端が目に入ってこないことだろう。フルオープンのクルマよりある意味、開放感が強い。とりわけ後席の乗員は、これまで体験したことのない、不思議な光景を楽しむことができるだろう。

まるで水のよう、というべきか。なんでもないクルマながら、そのなんでもなさゆえに光る。あえて性能で突出しようとか、デザインで奇をてらおうとか、作為的なところが感じられないクルマづくりもよい。それでいながら、ほかに類のないクルマに仕上がった。それがシトロエンの底力だと感じた。

CITROEN C3｜シトロエン C3
ボディ｜全長3,955×全幅1,730×全高1,530mm
エンジン｜1.6ℓ 直列4気筒 DOHC
最高出力｜88kW[120ps]／6,000rpm
最大トルク｜160Nm[16.3kgm]／4,250rpm
駆動方式｜FF
トランスミッション｜4段AT
価格｜209万円 ～

シトロエンコール
0120-55-4106