戸田恵子×植木 豪|原点回帰する“大人ロック”
「BGブランド」新作はカジュアルなトートバッグ
戸田恵子×植木 豪、原点回帰する“大人ロック”(1)
2007年にスタートした戸田恵子さんと植木 豪さんのBGブランドが、7周年という節目を迎えて、そのコンセプトを原点回帰させている。ふたりのコンビワークもますます冴え、ブランドの方向性は一段と研ぎ澄まされているようだ。まずは、その新作に対する思いと、7周年を振り返っての感想をふたりから聞いた。
Photographs by JAMANDFIXText by TSUCHIDA Takashi
ボックスロゴで、ストリートの流行をいち早くキャッチ
──最新作は、黒を基調にしたトートバックですね。
戸田恵子(以下、戸田) ええ。ブランドの原点回帰というか、7周年を意識したものを作りたくて。これまでにもバッグを手掛けてきましたが、今回は、よりカジュアルなトートバッグを作りました。
形も大きさも、イメージ通り。このデザインならユニセックスで持つことができます。
──いつものアッシュな色遣いから一転して、カラーコントラストもハッキリとしています。
植木 豪(以下、植木) そうなんです。ボックスロゴにも挑戦したし、文字自体にもデザイン要素を盛り込みました。
──裏返しのドルマークや、ピースマークといった表現ですね。
植木 トレンドのデザインを取り入れつつ、シンプルにまとめることを重視しました。ストリートは、いま、ボックスロゴが主流なんです。
──ストライプのストラップも効いていますね。
戸田 ありがとうございます。いろいろ検討していくなかで、この2色使いに決めました。
ワンピースを着て、このバッグを持っていてもOKですし、今日みたいなラフなスタイルに合わせても大丈夫。大人のためのロックテイストというつもりで作っています。
ギラギラなロックは年不相応かもしれないけれど、気持ちだけはいつまでも尖っていてもらいたい。40代、50代、60代だって、さりげなくロックテイストを身につけていてもらいたいんです。
植木 大人でも、若いテイストを楽しんでもらえるように意識していて。今、流行っている要素を決して遠ざけることなく、逆に嫌味にならない範囲で盛り込んで……。
戸田 流行を全面的に押し出すのではなく、部分的に取り入れる。そういう感じで、センスよく行ければいいと思っています。
まもなく60歳になろうとしている私と、アラフォーの彼が作り、自ら着用して紹介している。そんなところも受け入れてもらえたらありがたいなぁ。
植木 姉さんは、大人になっても自分の好きだったものをうまく取り入れながら、あたらしいスタンダードを作っていくことに長けていますよね。
戸田 うーん、確かにドラマの衣装合わせなんかで、愕然とすることがあるんです(笑)。でも、それが普通なんでしょう。私と同年代の皆さんは、Tシャツ姿にニット帽を合わせないよなって。
ただ、もしかしたらご自分の回りにそういうアイテムが見当たらないだけかもしれない。ちょっと若い人の格好を真似てみようかなっていう気になることが、私は素敵だと思っています。ですから私と同じ年代の皆さんでも使えて、着こなせるという条件で、アイテム作りに取り組んでいます。
「BGブランド」新作はカジュアルなトートバッグ
戸田恵子×植木 豪、原点回帰する“大人ロック”(2)
──7年間を振り返って、いまどんな感想が浮かびますか?
植木 僕はデザインを担当してきましたが、こうして見ると姉さんのこだわってきたポイントが、ぜんぜんブレていないなと思いますね。いまも自信を持ってプッシュできます。
──デザインも古びていないですよね。タイムレスな感じがします。
戸田 それぞれ自分の仕事を持つなかで、時間をかけ、手間をかけ、生地や素材を選んで。そんな感じで作ってきたので、すべてのアイテムに愛着があるんです。
植木 ボディから全部作っているんですよね。生地もカタチも、ありものを使わずに。
戸田 Tシャツなんかも、コンセプトに合わせて素材を変えています。自分自身、洋服が好きなので、なるべくなら肌触りまでこだわりたい。ただ、一方で予算的にあまり高い製品にならないことにもこだわっています。
植木 姉さんの値段設定、びっくりするほど安いです(笑)。いい生地を使って、刺繍やスタッズにも力を入れて。しかも、この値段で出すんですか? って(笑)。
戸田 お金をかけていいものを作るのはカンタン。でも普段使いしてもらうことを考えると、価格は抑えないと。ですから、そのあたりも業者さんにマックス汲んでいただいて成り立っています。
植木 しかも、姉さんがダウン症の子どもたちのチャリティ企画として、このブランドを続けている思いも皆さんに浸透して。
戸田 そうなんですよね。私たちはこのブランドを通じて、ダウン症の子どもたちを支援しています。もちろん自分のポケットマネーを使う方法もあるのでしょうが、私たち自身も切磋琢磨して、作り出したアイテムから収入が生まれ、そこから支援できるほうがいいなと思ったので。
──アイテムは、おふたりでどのように作っていくのですか?
植木 はじめに姉さんがアイデアを出して。で、そういう感じだったらボディはこういうのはどうですかって僕から提案する。姉さんのアイデアを、僕が形にしていくという分担です。
戸田 プランナーは私ですが、最終的に方向性が決まるまで、ふたりで話し合って。自分たちだったらこうだけど、ユーザーの皆さんはもう少しソフトな表現の方がいいとか。ふたりで時間があるときは、市場調査もしたり。まぁ、ついつい自分のモノを買うことも多いんですけど(笑)
──そもそも、おふたりの出会いは、どういう場所だったのですか?
戸田 ある舞台で一緒になった時に、彼らが踊っていたダンスを稽古場ではじめて見て、私、度肝を抜かれたんです。私たちもミュージカルでダンスをしますが、それとは180度、異なるアクロバティックな動き。もう、ほんとに驚いたんです。
でも大勢の人が出演する舞台だったから、別段、話をする機会もなくて。
──それが、いつの間にか、こんなに親しい間柄になったんですね。
戸田 東京公演から大阪公演の間に一緒に食事をする機会があったり、たしか大阪公演中の休演日にも豪くんの知り合いのお店に行ったりと。
植木 そうです。それで、いろいろと話すようになって。
戸田 ブレイクダンスってどういうもの? ストリートダンスってどういうものなの? って、頭のなかに溜め込んでいた疑問を一気に吐き出して。
豪くんが学校でデザインの勉強もしてきたことも聞きました。それで、私の50歳の記念イベントで作りたいものがあったので、デザインをやってもらえるかな? って、お願いしたの。
──それがBGブランドのはじまりだったのですね。
戸田 そう。でもそのアイテムはコンサート会場でしか販売しなかったので、来られなかった地方の人たちから、ウェブで販売してほしいと依頼があって。
植木 そのことをきっかけに、このrumorsでの販売もスタートすることになり……。
戸田 以来、年に少なくとも2回は、新作を発表してきました。
──BGブランドは、今後どうなっていきそうですか?
戸田 まずは10年やってみるつもり。でも、あっという間に7年が過ぎてしまいました。まだあと3年、当初の目標までは行けると思います。
植木 本当にふたりだけで進めているから、ブレることがない。自分たちがカッコイイと思えることだけを追求できています。
──だから、コアであることが保てるのですね。
戸田 ちょっとこことここ、入れ替えてみて! とか、ギリギリでも私、言っちゃうんで(笑)。ほんとに申し訳ないんですけど。
植木 ぼくも結構なパターンを出すんですね。そのことで、姉さんを迷わせてしまうこともあるかもしれないですけど。
──おふたりが実際に手を動かしているんですね。
戸田 そうなんです! 星のモチーフを付けるにしても、私が紙で型を作って、どのくらいの位置に付けるかって実際に安全ピンで留めてみて。そんな作業からやってるからね。
植木 打ち合わせに行くと、すでに型紙が用意されていて。姉さんが自分で着ながら、ああでもないこうでもないって(笑)。
──かなりアナログですね(笑)。
戸田 そう私、ほんっとにアナログなんです。
戸田さんの女優としての役作りに、植木さんは「この人は明らかに違う」と感じたそうだ。だから「いつも仲いいですけれど、戸田さんの舞台を見る時は、ファンとして観に行く」という。かくいう戸田さんも、植木さんのポジティブな姿勢に励まされ、今では姉弟のように何でも言い合える間柄とか。植木さんは今年、舞台を総合演出する機会を得て、次に繋がる構想をいま、まさに練っている状況。戸田さんは変わらずドラマや声優としても大忙しで、今年の舞台はなんと一本のみ! 伊東四朗さんの77歳を祝う『吉良ですが、なにか?』(三谷幸喜脚本)が11月21日(金)~12月14日(日)の期間中、下北沢・本多劇場で上演される予定だ。