パリ モーターショーの現場から Vol.2|Mondial de l’Automobile 2014
Mondial de l'Automobile 2014
パリ モーターショーの現場から Vol.2
世界的なモーターショーのひとつであり、現在フランスで開催中のパリ モーターショーの現場から、モータージャーナリストの小川フミオ氏がレポート。その第2段は、フランスのビッグスリーといわれる、プジョー、シトロエン、ルノーをはじめ、多くのブランドが開発にしのぎを削る、いまもっとも競争の激しいカテゴリーのひとつ“小型車”について。
Text by OGAWA Fumio
パリの路上から
自動車の都はどこだろう。ひとつは、パリかもしれない。街中の狭い道には小さなハッチバックがひしめくいっぽう、バカンスには家族でクルマで出かけ(週末に地方まで美食を楽しむなんてドライブもある)、社交界では大型高級車がよく売れる。
フェラーリもかつては、ニューモデルの発表の場は、パリの自動車ショーで、と決めていた。いまはそうでもなくなったが、原則は尊重され、2014年秋のショーでも、華やかな「458スペチアーレ」をベースにしたスパイダー「458 スペチアーレ A」をお披露目した。
2014年のショーも、そんなパリの路上の雰囲気を反映していたように感じられた。地元フランスのプジョー、シトロエン、ルノーは、小さなクルマを発表するいっぽう、いろいろ室内の仕掛けに凝った(これがフランス車の魅力)ミニバンもアピール。
いっぽう、ドイツ、イギリス、イタリアのメーカーからは、高性能・高級なクーペやセダンが数多く並べられたのだった。たとえばフォルクスワーゲンは、燃費とCO2の排出を抑えたプラグインハイブリッド車に力を入れながらも、ランボルギーニにはこの世のものとはおもわれないスーパースポーツカーを、ベントレーには小山のような車体をスポーツカーのように走らせる高性能セダンを作らせている。
スマートを持つメルセデス・ベンツや、MINIのBMWも負けてはいない。
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パリ モーターショーの現場から Vol.2(2)
パリ、ファッション、クルマ
「ファッションとちがって──」
メルセデスベンツでは、いわゆるファッションの都でのショーという事実を意識して、このように述べる。
「──自動車の命は長い。先の先まで時代の流れを読まなくてはなりません」
そこで彼らが今回力を入れていたのが、VWと同様、軽量化やエンジンの効率化で、燃費とCO2低減に寄与するモデルの数かずだ。
なかでも、来場者の注目を集めていたのが、新型「スマート」。ルノーとの共同開発で話題を呼んだモデルである。2人乗りのフォーツーと、リアシートも備えた4ドアのフォーフォー、ともに、リアエンジン/後輪駆動のプラットフォームを使い、レジャーでの使用を強調した展示が目を惹いた。
「継続可能性のある移動手段、これが現実の課題になっています」
BMW監査役会会長のドクター・ノルベルト・ライトホーファー氏は、記者会見の席上でそう述べた。その課題に対するBMWの解は「i」である。会場には、試乗用にも「i3」がたくさん用意され、CO2排出ゼロのコンパクトカーの有効性をさかんにアピールするのだった。
ショーでもっとも広い展示スペースを確保しているのは、フランスのビッグスリーといわれる、プジョー、シトロエン、そしてルノーだ。ここでも、魅力的なスタイリングをもったコンパクトカーがフロアを埋め尽くしていた。
「ファッションにおけるフランスの名声をクルマの世界でも」
2014年にPSAプジョーシトロエングループを統括することになったカルロス・タバレスCEOは、シトロエンと分離したDSブランドを前に、意気込みを語った。
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パリ モーターショーの現場から Vol.2(3)
エスパスの可能性
ライフスタイルの分野で地元のジャーナリズムの注目を集めていたのが、ルノーが発表した新型「エスパス」だ。
「エスパスの運転からは、これまで以上のエモーションが体験できます」
ルノーのカルロス・ゴーンCEOはそう語った。
大型ボディに、使い勝手のいいシートが3列に並び、シートを倒せば部屋まるごとの引っ越しだって出来そうだ。今回は「マルティセンス」と名付けられた、走行モード切替え機能がつき、スポーツから、エンジン回転数を抑制するエコまで、“ドライバーの望むようにクルマが変わってくれる“ことが強調された。
エスパスが注目を集めるのは、移動交通としてのクルマにまだ可能性を見出しているひとたちが少なからずいることの証明といえる。それはクルマ好きとしては、なんとなく頼もしくおもえる。