『OriginalFake(1)』誕生秘話
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2015年4月28日

『OriginalFake(1)』誕生秘話

ACT4 『OriginalFake』(1)

突如、東京・南青山に出現したショップ「OriginalFake」。
日本でも多くの人々にリスペクトされるニューヨークのアーティスト、KAWSによるプロジェクトなのだが、じつはメディコム・トイがその根元に存在しているのだ。
本邦初の話題もこめつつ、メディコム・トイの赤司竜彦社長にそのプロジェクトの内容を語っていただきました。

文=高橋猛志

KAWSとの出会い、そしてアパレルへの志向

OriginalFakeのオープンは、2006年5月でした。
まずは、オープンにいたる経緯をお話しましょう。

2000年前後から、ニューヨークに住むKAWSというアーティストといっしょに断続的にフィギュアをつくっていました。
栄えある1000%BE@RBRICKの第一弾も、彼のデザインによるものだったんです。これが非常に良いセールスを記録しました。
そのような経緯もあって、KAWS自身、メディコム・トイとの仕事に、強い魅力を感じてくれた様子でした。

そんななかで、3年くらい前に東京・南青山の骨董通りに「コレット・ミーツ・コム デ ギャルソン」というお店がオープンしました。
そこでKAWSのグラフィックを使って、ルシアン・ペラフィネがニットをつくるというプロジェクトがあったんです。
確か10枚限定という、ものすごく少ない枚数で、30万円くらいしたんですが、即売り切れ。「うわぁ、欲しかったな~」とKAWSにいったら、「僕も1枚しか持ってないんだよ」なんていわれました。

その出来事がずっと頭のなかにあって、2005年ごろにKAWSに何気なく「そろそろフィギュアだけじゃなく、何かほかのプロジェクトをはじめる事に興味はないかな?」という話をしたところ、「僕もやりたいよ」と意気投合したんです。
最初はカシミアのニットをつくろうか、というすごくシンプルなプロジェクトだったんです。でも企画を練り込んでいくなかで、せっかくだからきちんとやってみようと。で、お店としての構想が徐々にまとまってきた……といった感じでした。

はじめに場所ありき

内装はワンダーウォールの片山正通さんにお願いすることになりました。ア・ベイシング・エイプさんやドレスキャンプさんなどの内装を手掛けられている、私から見れば超々一流のインテリアデザイナーさんなんですが、KAWSに紹介してもらうことで実現した人選です。
片山さんとは会った瞬間から意気投合して、「赤司さん、せっかくだから店(場所)探すの手伝うよ」とまでいっていただきました。
で、2005年夏真っ盛りのなか、関係者で青山を歩き回り、貸し店舗を探したんです。しかも南青山三丁目限定(笑)。
でも、一日二日歩いただけで見つかるわけもなく。それからも定期的に情報をいただいたりしてたんですが、なかなか条件に見合った場所もなく……。

そんなとき、うちの役員が美容院でお店が空く情報を入手したんです。
場所は、そう。南青山三丁目!
すぐ不動産屋に相談に行って、「貸してくれ!」といいにいきました。不動産屋さんも「え!? 出るってきのう聞いたばかりなんですけど」ってびっくりしてましたね。

つまり、OriginalFakeというプロジェクトは、最初に場所ありきだったんです(笑)。

場所が決まらないと、オープン時期も決まらない。オープン時期が決まらないと、どのシーズンの商品をつくっていいのかわからない。そんな事情もありました。KAWSはタイミングも重要視するアーティストなので、オープン時期が決まらないままグラフィックの製作をはじめるという進行は、私としてはやりたくありませんでした。
だから場所が決まるまでは、事前準備はほとんどできなかったんです。

で、場所が決まってからオープンまで、約3ヵ月という限られた時間しかありませんでした。
まぁスタッフ何人かは死にそうになってましたね(笑)。

本当にこのときはさまざまな方にお世話になりました。片山さんをはじめ、KAWSも一生懸命でしたし、当社のアパレルチームも懸命に頑張ってくれました。

3メートル超の巨大オブジェ誕生

店舗の内装と並行して店内の什器・備品周り、商品開発も進めなければなりません。
これもオープン予定日までの3ヵ月の中で仕上げました。

なかでも印象に残っているのは、全高約3メートルの、巨大なコンパニオンのオブジェでした。当時、「ハーフコンパニオン」という、40センチサイズのフィギュアの企画が進んでいたんですが、コレをモチーフにした巨大なオブジェを店内に配置したいとKAWSがいい出したんです。

大きなオブジェをつくる方法論は私たちでも持っていましたが、うちの造形セクションはほかにもたくさんの仕事を抱えているので、そっちの作業をとめるわけにもいきません。

どうしようかと悩んでいたら、片山さんからゲルチョップさんという造形チームを紹介していただいたんです。いろいろなお店のオブジェ製作をやっている皆さんです。
まずうちのパーフェクトスタジオが40センチの原型を作り、それをもとにゲルチョップさんが巨大オブジェをつくって、KAWSがファイナルチェックを行い、それを最後に組み上げて、完成! という段取りでした。
そういった作業を、10周年記念となったエキシビションなど、ほかの仕事と平行しながら、3ヵ月で済ませたんです。みなさん、ほんとにがんばってくださって。どなたにも足を向けて寝られないから、私は立って寝てるんですが(笑)。

あの3ヵ月間の、関係者の方々のコンセントレーションは、すごいものがあったと思います。私も大変な思いをしました。でも楽しかったですね。時間がなければないほど燃えますね(笑)。

[OriginalFake]
住所 | 東京都南青山5-3-25 OhビルB1F
TEL | 03-3499-3333
URL | http://www.original-fake.com

→次回の「OriginalFake(2)」では、発足から1年を経てうまれた新たなる局面を語っていただきます。お楽しみに!

           
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