吉岡康子さんに教わる_3
photo by IDEGUCHI Keiko
1万本をどう売るか
吉田:吉岡さんのお話を聞いていると、やはり香水は欧米人のものだなという感を強くしますね。
吉岡:それは歴史と文化の背景が違いますからね。たとえば、「モリナール」は1849年にフランスのグラースで売り始めました。また、「ランセ」というブランドは、香水製造だけで代々6代続いています。
吉田:この対談シリーズを始めてから、和装の世界の香水、香道などにも興味が出てきたのですが、香りについて言えば、花じゃないものの匂いをスーツの時につけたいなと思うんですよ。
吉岡:それはいいと思いますよ。とにかく西欧と日本では食べ物から違うライフスタイルですからね。私も無理をして日本人に合わない香りをつけることもないと思います。
吉田:私たちは和洋折衷で暮らしていますが、日本人に合う香り、日本にこだわる香水があってもいいですよね。例えば、オリジナルで香水をつくることはできますか?
吉岡:それは可能ですね。アッセンブルで1万本まとまればつくれますよ。
吉田:1万本ですか……。その数字は今日初めて聞きますが、大きい数字なのでしょうか?
吉岡:要は本数をこなす売場がポイントですね。あとは価格ですね。残念ながら、定価で販売できるきちんとしたイメージの香水店は多くありません。大量に販売できるチャネルはディスカウントマーケットで、価格競争の結果、現在の売れ筋は1980円、2980円、3980円の世界ですから。こだわりはじめると大変(笑)ですよ。
吉田:やはりそうですか……。でもワインと同じように、年間1万本限定みたいなスタイルはどうでしょう。
吉岡:1万本は大変ですよ。オリジナル・パッケージやボトルデザインにこだわらなければ、もっと少ない数量でも可能かもしれません。
吉田:香水1本を使い切るのが3ヶ月として、年4本。2500人に行き渡ればこなせる計算ですね。ボトルもオリジナルでデザインしたいですし。
吉岡:売るチャネルが多いのは大事ですが、逆にここでしか売らないというのも方法論としては有効でしょうね。香料などもメイド・イン・ジャパンを意識するとか。
吉田:日本の調香師でも可能ですか?
吉岡:化粧品メーカーは調香師を育てていませんが、私が知る限り、曾田香料の佐野先生などは作っておられるようです。
吉田:そうですか。僕がイメージしているのは、若い人がつけると恥ずかしい匂いの香水をつくりたいんですよ。
吉岡:それはいい。今、40代以上の男性が身近に感じられるイメージの良い香りがありません。白檀や柚子の香りなどいいですね。
吉田:1万人を説得すれば(笑)いいわけですね。
吉岡:吉田さんご自身がPRキャラクターになって、本音で香りを語ればきっと大丈夫ですよ。
吉田:ありがとうございます。ところで、吉岡さんは日本フレグランス協会の事務局もされているんですね。
吉岡:はい。フレグランスのセールススペシャリストの育成を目的とするトレーニングスクールなども行っています。
吉田:そうですか。僕も受講してみようかな。でも女性が多いだろうし、迷惑(笑)ですよね。
吉岡:とんでもない。若い男性が香水の仕事に就きたいと受ける方もいらっしゃいますよ。
吉田:2月の「育成コース」申し込むかもしれません。よろしくお願いします。
吉岡:こちらこそお願いします。
吉田:今日はいろいろ興味深いお話をありがとうございました。
終わり
協力/日本フレグランス協会
(株)フォルテ内 事務局:吉岡・清水
TEL.0422-22-9111