フォード フォーカス・スポーツ 長期レポート 最終回|Ford
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月15日

フォード フォーカス・スポーツ 長期レポート 最終回|Ford

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

最終回 フォーカスのあるカーライフ

OPENERS編集部の長期レポート第5号車として導入された「フォード フォーカス」。近場の取材から、金沢へのロングドライブまで、これまで13,678kmを走り、いよいよ今回が最後のレポートとなった。フォーカスのシリーズ3代目で、単一車名販売記録No.1のベストセラーモデルの魅力を総括したいとおもう。

Text by SAKURAI KenichiPhotographs by MOCHIZUKI Hirohiko / TSUKAHARA Takaaki

号車
Ford Focus Sport
フォード・フォーカス・スポーツ

導入時期 2013年8月
購入価格 293万円
総走行距離 13,678 km
今回の燃費 12.6 km/ℓ
総平均燃費  12.7 km/ℓ

フォーカスのイメージをバージョンアップ

新世代のキネティックデザイン纏い、第3世代モデルとして登場した現行「フォーカス」が日本で発売されたのは、2013年の4月のことだった。それから約1年、街中でもチラホラその姿を見かけることが多くなってきた。編集部が長期テスト車両として選んだのは、キャンディレッドのボディカラーが鮮やかな個体。日本導入モデルは、125kW(170ps)を発揮する2リッター直列4気筒エンジンに6段DCTを組み合わせた「フォーカス スポーツ」のみなので、グレードで迷う心配はなかった。

フォーカスといえば、まずは欧州で人気のラリー、WRCでの勇姿が忘れられない。1999年からWRCに参戦し、かのコリン・マクレーのドライブで参戦初年度から優勝をものにしたその活躍は、いまも記憶に残っている。フォーカスと聞いて真っ先にWRCを連想するクルマ好きは、いまも少なくないはずだ。

そんなラリーマシンのベースになった1998年に登場した初代フォーカスのシャープなフォルムは、自動車史に残る秀逸なものだった。テールライトをハッチゲート上の左右に備え、タイヤを強調するフェンダーを採用した斬新なデザインはもちろんのこと、WRC仕込みの走りは、日本でも大いに人気を呼んだ。個人的には、いまなお初代フォーカスを愛用する知人もいて、馴染み深いモデルだった。

2005年に2代目にバトンタッチしたフォーカスでは、高性能バージョンの「フォーカス ST」が語りぐさとなった。最高出力165kW(225ps)を発生する直列5気筒の2.5リッターターボエンジンを搭載したSTは、Cセグメントのベストハンドリングホットハッチとして、欧州で絶大な人気を呼んだモデルである。

Cセグメントのハッチバックといえば、フォルクスワーゲン「ゴルフ」がメートル原器といわれるほどメジャーな存在だが、ことスポーティなホットハッチとなれば、それはフォーカスの方が役者は一枚上手だった。日本にも導入されたオレンジ色のボディカラーのSTは、いまでも憧れの存在として、自分自身の欲しいクルマリストの上位に位置している。

そして、満を持して日本に登場したその3代目となる現行モデルは、より洗練されたデザインと、妥協なく鍛え上げられた走りを披露。これまで誰もが持っていたフォーカスのイメージを、もれなくバージョンアップするに相応しい存在となった。

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

最終回 フォーカスのあるカーライフ (2)

直進安定性が高く、シャープなハンドリングも楽しめる

フォードは現在、「One Ford」と呼ぶ、世界共通車両の開発とそれを各マーケットにもっとも近い生産拠点から全世界にデリバリーするシステムを構築中で、現行モデルも全世界7カ国で生産されるグローバルプロダクトとして、120カ国以上で販売がおこなわれている。こうした展開も、冒頭で紹介した単一車名販売記録No.1というベストセラーモデルの原動力になっていることは想像に難くない。

OPENERS編集部に導入されたフォーカスでは、近場の取材から片道400kmを超えるロングドライブまで東奔西走の活躍を見せてくれた。はじめからエアロパーツが装備されているスポーティな出で立ち故に女性ウケが気になるところだったが、3回目となるレポートで、女性のコメントも紹介することが出来た。

彼女の意見は、「主張のあるデザインが、女性にも似合いそう」という好意的なものだった。これには、人間工学に基づきデザインされたインテリアも含まれている。さらに、ボディサイズから想像するよりずっとゆとりのある車内空間や、荷室スペースが実用的で良いとの評価もいただいた。

特に、走り出してからの車内の静粛性は高級車にも迫るものとして、彼女のお気に入りのポイントとなった。ファミリーやパートナーのいる男性ユーザーは、このあたりもクルマ選びの際の説得材料として大いに活用していただきたい。

数ヶ月間日常でのパートナーとして走ったフォーカスの美点を挙げさせてもらうなら、個人的にはまずその走りがトップになるだろう。フォーカスよりもパワーを持つライバル車も少なくはないが、アクセルへの反応や、欲しいだけダイレクトに呼び出されるエンジンパワーにおいて、フォーカスは体に良く馴染んでくれた。直進安定性が高く、それでいてシャープなハンドリングが楽しめるのも魅力である。

ナーバスなステアリングフィールをクイックだと勘違いしやすいクルマが多いなかで、ジワリとステアリングを切ったときにはそれに合わせて早すぎることなく、そしてシャープな切り返しではボディが遅れることなくついてきてくれる。ドライバーの意思に反すことなく、クルマが動き、追従することを「意のままに操れる」と称するが、フォーカスのハンドリングはまさにそれだ。

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

最終回 フォーカスのあるカーライフ (3)

フォーカスへのリクエスト

意外にも、9スピーカーを備えるソニー製のオーディオは、なかなか出来が良い。標準装備されるドライバーコネクトテクノロジー「SYNC」を用い、愛用のスマホをブルートゥースで繋ぎ、お気に入りの音楽を手軽に楽しむことができた。これは長距離ドライブの際に、実に活躍した。

「えー、こんな(音楽の)趣味があったんですか?(笑)」といわれたのは、まぁご愛敬だが、取扱説明書を読まずとも、ほとんどの操作が直感的におこなえたのは、ありがたかった。もちろん、ハンズフリー電話も簡単に操作できた。ちなみにこのハンズフリー電話は、ステアリングのスイッチを使えば、ステアリングから手を離すことなく安全に操作することも出来るので、実に便利だった。

しかし、リクエストもある。例えばパワー。過去にフォーカス STをドライブしたことがあれば当然の要求になろうが、もう少しパワーはあってもいい。2代目のフォーカス STに搭載されていた225psのターボエンジンがもたらす厚めのトルクは、日常使いを楽に、そして余裕ある加速を味わわせてくれるからだ。

そしてもうひとつ、ギアをマニュアル操作する際に、やはりパドルシフトは欲しい。フォーカスが採用する「セレクトシフトモード」で、シフトノブ上部に設けられたスイッチを作動させるギアチェンジも慣れれば問題はないのだが、やはりNAのレスポンスを楽しむのには、パドルシフトの方がより相応しいとおもう。

エンジンレスポンスが良く、6段DCTの「パワーシフト」がシャープに反応してくれるだけに、パドルシフトは採用しても無駄にはならないはずだ。

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

最終回 フォーカスのあるカーライフ (4)

ともに過ごした濃密な時間

幸いにしてレポート期間中、フォーカスに標準搭載される、渋滞時や市街地の低速走行時に前方車両への衝突をレーダーセンサーで感知・回避する自動ブレーキ「アクティブ シティ ストップ」のお世話になることはなかった。こうしたセーフティデバイスは、万が一の時になってはじめてありがたみを感じるものなので、効果をレポート出来なかったのは、編集部が安全運転をこころがけた証ということで、ご理解いただきたい。

ちなみにフォーカスが採用するアクティブ シティ ストップは、条件にもよるが15km/h未満の速度では衝突を回避でき、30km/h未満の速度では衝突のダメージを軽減してくれる。いずれにせよ、使わないで済めばそれに越したことはないが、装備されていれば実に心強い安全デバイスであることはまちがいない。

最後になったが、レポート期間中のフォーカスの平均燃費はリッター12.7kmだった。一般オーナーの使用と異なり、編集部に在籍する不特定多数が、(さほど)燃費も気にせず走りたいだけ走ってマークした数値としては、なかなかのものといえそうだ。もちろん、この中には、テストと称して箱根のワインディングロードを欲望のままに走らせた回も含まれているのは、言わずもがなである。

もしもこの一連のレポートが、少しでもクルマ選びの参考になれば幸いである。我々がフォーカスとともに過ごした時間は、濃密であった。次は皆さんが、フォーカスのあるカーライフを楽しむ番である。

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Ford Focus Sport|フォード・フォーカス・スポーツ
ボディサイズ|全長4,370×全幅1,810×全高1,480 mm
ホイールベース|2,650 mm
トレッド 前/後|1,555 / 1,545 mm
最低地上高|130 mm
重量|1,380 kg
エンジン|1,998cc 直列4気筒 直噴DOHC
ボア×ストローク|87.5×83.1 mm
最高出力| 125kW(170ps)/ 6,600 rpm
最大トルク|202Nm(20.6kgm)/ 4,450 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(デュアルクラッチ)
ギア比|1速 3.917
    2速 2.429
    3速 1.436
    4速 1.021
    5速 0.867
    6速 0.702
減速比|3.850(1,2,5,6速)/4.278(3,4速,後退)
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ|215/50R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃料タンク容量|55 ℓ
最小回転半径|6 m
価格|293万円

フォードお客様相談室
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http://www.ford.co.jp

           
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